リリア (列車)
TGV Lyria(リリア)は、フランスとスイスを結ぶTGVで使われているブランド名である。リリアはサービスを運営する会社名(Lyria SAS)でもある。
概要
編集会社たるリリアの前身は、1993年にフランス国鉄(SNCF)とスイス連邦鉄道(スイス国鉄)が、パリ・リヨン駅とローザンヌ、ベルン中央駅との間のTGVを共同運行することを目的に設立したGIE TGV France Suisseである。2012年現在、Lyria SASはフランス法律によるSAS(簡易株式制会社)として、SNCFが74%、スイス国鉄が26%を所有している。
沿革
編集- 1981年9月27日 パリ - ジュネーヴ間TGVの運行開始。
- 1984年1月22日 TEEシザルパン(パリ - ミラノ)に代えてパリ - ローザンヌ間のTGV4往復を運行開始。列車名はそれまでのTEEの精神を受け継ぎ、シザルパン、ルテチア(Lutetia)、レマノ(Lemano)、シャンゼリゼ(Champs-Elysées)とされ、うちシザルパン、ルテチア、レマノの3列車はローザンヌでジュネーヴ - ミラノ間を運転する同じ愛称名のインターシティにそれぞれ接続した。
- 1987年5月31日 パリ - ベルン間の運行を開始。同時にユーロシティ(EC)の設定に伴い、列車種別をECに変更。
- 1993年5月23日 パリ - ローザンヌ間の列車およびパリ - ベルン間の列車の運行を管理するため、GIE TGV France Suisseを設立。
- 1995年/1996年 冬ダイヤにおいて、ローヌ峡谷のスキーリゾートへのアクセスのため、ローザンヌからブリークまで1日1往復延長し、TGV des Neiges(雪)のブランド名で運行開始。
- 1996年 パリ - ベルン間の列車の運行区間をチューリッヒ中央駅まで延長。
- 1997年9月28日 ローザンヌ系統およびベルン系統の列車にLigne de Cœur(ハートの路線)のブランド名が付けられ、乗務員の新しい制服や列車の編成にも表記される。
- 1999年 GIE TGV France Suisseに代えRail France Suisse SASを設立。
- 2002年 Rail France Suisse SASに代えLyria SASを設立。
- 2005年1月 パリ - ジュネーヴ間の列車でもLyriaのブランド名を使用開始。
- 2007年
- 6月10日 LGV東ヨーロッパ線開業に伴い、チューリッヒ系統をベルン系統から分離し、パリ東駅からLGV東ヨーロッパ線、ストラスブール、ミュールーズ、バーゼル経由で運行開始。車両もLGV東ヨーロッパ線での最高速度320km/h走行に対応したTGV POS編成が導入される。
- 12月 冬ダイヤにおいて、スキーリゾートへのアクセスのため、チューリッヒからクール (グラウビュンデン州)まで土曜日など週末1往復延長運転開始(2009年春で終了)。
- 2009年12月 パリ - ベルン間の列車を2往復から1往復に削減。削減分はパリ - ローザンヌ間TGVの途中駅フラーヌで接続するベルンまでのRE(快速列車)に置き換え。
- 2010年12月12日 パリ - ジュネーヴ間の列車は、オー=ビュジェ線の大幅な改良工事完成に伴い従来のキュロズ経由から同線経由に変更。これにより、所要時間が約20分短縮され、列車本数も7往復から9往復に増発される。
- 2010年12月12日 パリ - ジュネーヴ間、パリ - ローザンヌ間およびパリ - ベルン間の各列車において、一等車の乗客に対して座席で食事(時間帯により、朝食、昼食、軽食又は夕食)をサービスする「Lyriapremière(リリア プルミエール)」を開始(食事代は乗車券に含まれ、別途の予約は不要)。
- 2011年7月 パリ - ジュネーヴ間、パリ - ローザンヌ間およびパリ - ベルン間の各列車において、フランス・スイス両者の車掌が全区間を乗務するdouble accompagnementを開始。
- 2011年12月11日 パリ - チューリッヒ間の列車は、LGVライン-ローヌ線の開業に伴い、パリ側の始発・終着駅をパリ東駅から再度リヨン駅に戻し、従来のLGV東ヨーロッパ線、ストラスブール経由からLGV南東線、ディジョン、LGVライン-ローヌ線経由に変更。これにより、パリ - チューリッヒ間の所要時間は33分短縮され、列車本数も5往復(パリ→チューリッヒ5本、チューリッヒ→パリ4本、バーゼル→パリ1本)から6往復に増発される。同時に「Lyriapremière」を開始。
路線区間・頻度・所要時間
編集2012年7月8日改正(2012年夏ダイヤ)では以下の通り[1] 。
- ジュネーヴ - パリ 月曜日 - 木曜日9往復、金曜日9.5往復、土曜日・日曜日6.5往復/3時間5分
- ローザンヌ - フラーヌ - ディジョン - パリ 月曜日 - 木曜日・土曜日4往復、金曜日4.5往復。日曜日5往復/3時間50分
- 7月8日から8月26日まで、TGV Lyria d'Etéとしてブリークに延長[2]。
- ベルン - ヌーシャテル - フラーヌ - ディジョン - パリ(フラーヌ - ディジョン - パリ間、上記ローザンヌ系統に併結) 1往復/4時間45分
- このほか上記ローザンヌ系統にフラーヌで接続し、同等の停車駅・所要時間で結ぶRE(快速列車)がベルン - ヌーシャテル - フラーヌ間1往復、ヌーシャテル - フラーヌ間1往復それぞれ設定されている。
- チューリッヒ - バーゼル - パリ 平日6往復、土曜日・日曜日5.5往復/4時間3分
- 2011年現在、年間利用客は約432万人、うち国境を越える旅客は約260万人である。
使用車両
編集パリ - ローザンヌ(- ブリーク)間およびパリ - ベルン間の列車はSNCFの交流25,000V 50Hz、直流1,500V、スイス国鉄の交流15,000V 16.7Hzの3電源に対応したTGV Sud-Est編成9本(編成番号110 - 118)が使用されている。このうち第112・114編成がスイス国鉄保有であるほかはSNCFの保有である。2006年夏より5編成(第110・111・113・114・118編成)を改修し旅客サービスの向上を図っている。LGV南東線(ディジョン西方のAisy-sous-Thilからパリ近郊のヴァレントンまで)の最高速度は270km/hである。
パリ - チューリヒ間の列車は2011年12月の経路変更後も引き続きTGV POS編成(編成番号4401 - 4419)が使用されるほか、2012年1月からは中間客車をダブルデッカーとしたTGV 2N2 (Euroduplex) 編成も使用されるようになった[3]。POS編成のうち第4406編成はスイス国鉄の所有である。いずれの編成もSNCFの2種類の電化方式とスイス国鉄の電化方式に対応し、LGVライン-ローヌ線では最高速度320km/hで運行されている。スイス国内での最高速度は160km/hである。
パリ - ジュネーヴ間の列車はSNCFの交流25,000V 50Hzと直流1,500Vのみ対応のTGV Sud-Est編成とTGV Duplex編成が使用されている。
2012年9月には両端動力車の前位を白基調、後位と中間客車をメタリック基調とし中間、客車の窓周りをグレー、その上に赤線を入れ、さらに動力車には「TGV Lyria」の新しいロゴ(参考)を配した新塗装のPOS編成が登場した[4]。今後パリ - ローザンヌ間、パリ - ベルン間およびパリ - ジュネーヴ間で運行されているSud-Est編成を置き換える予定である。
将来
編集2012年12月9日ダイヤ改正より、従来SNCFが運行してきたジュネーヴ - リヨン - モンペリエ間およびジュネーヴ - リヨン - マルセイユ - ニース間のTGVがLyriaに移管される。また、新たにパリ発ベルン行がインターラーケン・オストまで通年毎日延長、ベルン発パリ行が土曜・日曜のみインターラーケン・オスト始発となる。さらに、冬季の土曜日のみブリーク→ ヴァロルブ→リール・ウロップ間、リール・ウロップ→ジュネーヴ→ブリーク間の列車が設定される予定。
POS編成の塗装変更は2013年4月までに全19本に対して施工する予定である[5]。
脚注
編集- ^ トーマスクック ヨーロッパ鉄道時刻表 2012年夏・秋号 地球の歩き方編集室 ダイヤモンド社 ISBN 978-4-478-04294-6
- ^ “Profitez de l'été pour découvrir Paris et ses mille facettes” (PDF). Lyria SAS. 2012年11月14日閲覧。
- ^ “スイスの鉄道ネットワーク2012年度ダイヤ改正”. スイス政府観光局. 2012年11月14日閲覧。
- ^ “Les trains franco-suisses déclarent la guerre à l'aérien” (フランス語). Le Point.fr (Le Point). (2012年9月25日) 2012年11月28日閲覧。
- ^ “Avec un an d’avance, TGV Lyria prend livraison de sa première rame "new look"” (フランス語). Le Quotidien du Tourisme (Éditions Larivière). (2012年9月25日) 2012年11月28日閲覧。
参考文献
編集“About Lyria”. Lyria SAS. 2012年11月14日閲覧。