口之島牛
口之島牛(くちのしまうし)は、日本で唯一の野生(化)牛の品種[1]。西洋種の影響を受けていない日本の在来牛は、口之島牛と見島牛の2種類しか残っていない。
血統
編集大正7 - 8年(1918年 - 1919年)に同列島の諏訪之瀬島から導入された数頭の牛の子孫である。急峻な島の地形のために放牧地へ管理が行きとどかず、島南部に逃げ込んだものが、横岳・燃岳を中心とする原生林内で再野生化したものである[2]。 東京都恩賜上野動物園や宇都宮動物園など各地の動物園や大学に貸与されている。[3] 一方、富田 (1980)は、当時口之島小・中学校の教員であった郷土歴史家・川嵜兼高氏から得た次の情報を紹介した。①享保2年(1727年)の名寄帳に口之島にはウシが1頭いたとの記述がある。②「拾島状況録」(笹森1895)の口之島記には、口之島で放飼されていた7頭のウシのうち6頭を諏訪之瀬島に贈与したと記述がある。これらは、野生化牛の起源が1910年代より古い可能性があることを示唆したものである[4]。
島内の推定生息数は約60頭(2023年現在)[5]。島外の研究機関では、鹿児島大学農学部入来牧場にて約20頭が繁殖飼育される。これに各地の動物園などでの飼育数が加わる。
また、かつて20年間にわたり名古屋大学で繁殖飼育が続けられていたが、予算上の都合で施設が2013年に閉鎖された。各施設や農家に譲渡されたものの子孫も若干数現存している。
体格
編集体格は非常に小さく、雄の成牛でも300から400Kgである。増体能力に劣るため、肥育しても約500Kg程度にしかならない[6]。前駆に優る、改良のための交配を経ていない体型が目立つ。
毛色は黒毛だけではなく、褐色のほか、白斑など多様である[2]。これは江戸時代以前の絵画で描かれた姿でも、在来牛の形質として確認できる。
脚注
編集- ^ “トカラの森のウシ ホーム”. 五百部裕. 2019年10月2日閲覧。
- ^ a b “トカラの森のウシ 野生化ウシ1”. 五百部裕. 2019年10月2日閲覧。
- ^ 安藤洋、築地原延枝、吉村文孝、「口之島牛とその飼育を振り返って (PDF) 」 名古屋大学
- ^ 印牧美佐生「口之島野生化牛」『動物遺伝育種研究』第42巻第1号、日本動物遺伝育種学会、2014年、39-47頁、CRID 1390001205214558080、doi:10.5924/abgri.42.39、ISSN 13459961。
- ^ 『日本在来の野生牛に共生を学ぶ 口之島(鹿児島県十島村)』産経新聞、2023年6月23日
- ^ 長島孝行 (2013). “<お探しのページが見つかりませんでした> 日本在来牛 見島牛と口之島牛”. 新・実学ジャーナル 2013年10月号: 4 .[リンク切れ]