経緯度は基本的にその地表点の垂直ベクトルに基づき、そのベクトルの方向を球面座標 で角度 表現したものである。
{経度
λ
{\displaystyle \lambda }
、緯度
ϕ
{\displaystyle \phi }
}⇔{局所垂直ベクトル
(
cos
ϕ
cos
λ
,
cos
ϕ
sin
λ
,
sin
ϕ
)
{\displaystyle (\cos \phi \cos \lambda ,\,\cos \phi \sin \lambda ,\,\sin \phi )}
}。
地理座標系で用いられる地理経緯度(geographic longitude and latitude)[ 2] は、地球を回転楕円体 と見なし、その面の法線 ベクトル方向に基づく[ 3] 。
歴史的には、地表の鉛直線 に基づく垂直方向(天頂 )が天球 のどこを指すかによって決めた天文経緯度(astronomical longitude and latitude)が使われてきた。これは地球の重力の鉛直線偏差の影響(加えて地球の極運動 の影響)を被っている。従って、距離・面積との関係も簡素にならない。
地理学・測地学の発展とともに、経緯度原点を国内に設け、その地点の天文経緯度を原点として位置づけ、接する準拠楕円体 に基づく地理経緯度を用いる方式が行われた(地域的測地系 )。
さらに近年は全地球的な準拠楕円体 に基づく方式の採用が増えている(全地球的測地系 )。
地理座標(経度
λ
{\displaystyle \lambda }
、緯度
ϕ
{\displaystyle \phi }
、高度(楕円体高 )
h
{\displaystyle h}
)とECEF直交座標系
(
x
,
y
,
z
)
{\displaystyle (x,y,z)}
との変換、および微小量の式は下記となる(地球楕円体 の長半径
a
{\displaystyle a}
、離心率
e
=
f
(
2
−
f
)
{\displaystyle e={\sqrt {f(2-f)}}}
)。
{
x
=
(
N
(
ϕ
)
+
h
)
cos
ϕ
cos
λ
,
y
=
(
N
(
ϕ
)
+
h
)
cos
ϕ
sin
λ
,
z
=
(
N
(
ϕ
)
(
1
−
e
2
)
+
h
)
sin
ϕ
,
{\displaystyle {\begin{cases}x=\left(N(\phi )+h\right)\cos {\phi }\cos {\lambda },\\y=\left(N(\phi )+h\right)\cos {\phi }\sin {\lambda },\\z=\left(N(\phi )(1-e^{2})+h\right)\sin {\phi },\end{cases}}}
(
d
x
d
y
d
z
)
=
(
−
sin
λ
−
sin
ϕ
cos
λ
cos
ϕ
cos
λ
cos
λ
−
sin
ϕ
sin
λ
cos
ϕ
sin
λ
0
cos
ϕ
sin
ϕ
)
(
d
E
d
N
d
U
)
,
(
d
E
d
N
d
U
)
=
(
(
N
(
ϕ
)
+
h
)
cos
ϕ
0
0
0
M
(
ϕ
)
+
h
0
0
0
1
)
(
d
λ
d
ϕ
d
h
)
,
N
(
ϕ
)
≜
a
1
−
e
2
sin
2
ϕ
,
M
(
ϕ
)
≜
a
(
1
−
e
2
)
(
1
−
e
2
sin
2
ϕ
)
3
/
2
=
{
N
(
ϕ
)
}
3
(
1
−
e
2
)
a
2
.
{\displaystyle {\begin{aligned}{\begin{pmatrix}dx\\dy\\dz\\\end{pmatrix}}&={\begin{pmatrix}-\sin \lambda &-\sin \phi \cos \lambda &\cos \phi \cos \lambda \\\cos \lambda &-\sin \phi \sin \lambda &\cos \phi \sin \lambda \\0&\cos \phi &\sin \phi \\\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}dE\\dN\\dU\\\end{pmatrix}},\\{\begin{pmatrix}dE\\dN\\dU\\\end{pmatrix}}&={\begin{pmatrix}\left(N(\phi )+h\right)\cos \phi &0&0\\0&M(\phi )+h&0\\0&0&1\\\end{pmatrix}}{\begin{pmatrix}d\lambda \\d\phi \\dh\\\end{pmatrix}},\\N(\phi )&\triangleq {\frac {a}{\sqrt {1-e^{2}\sin ^{2}\phi }}},\\M(\phi )&\triangleq {\frac {a(1-e^{2})}{\left(1-e^{2}\sin ^{2}\phi \right)^{3/2}}}={\frac {\{N(\phi )\}^{3}(1-e^{2})}{a^{2}}}.\end{aligned}}}
微小量三成分はどれも互いに直交方向となる。
h
=
0
{\displaystyle h=0}
では回転楕円体となり、また子午線弧 (経線 弧)の曲率半径 は
M
(
ϕ
)
{\displaystyle M(\phi )}
、卯酉線 弧は
N
(
ϕ
)
{\displaystyle N(\phi )}
(緯線 弧は
N
(
ϕ
)
cos
ϕ
{\displaystyle N(\phi )\cos \phi }
)となる[ 4] [ 5] 。
(
x
,
y
,
z
)
{\displaystyle (x,y,z)}
から
(
λ
,
ϕ
,
h
)
{\displaystyle (\lambda ,\,\phi ,\,h)}
を求める変換計算については上記から導かれる
ϕ
{\displaystyle \phi }
の方程式を解く必要がある[ 6] 。
回転楕円体面に沿う最短距離(測地線 距離)
s
{\displaystyle s}
の微小量は上記から得られる(微分幾何学 )。
h
=
0
{\displaystyle h=0}
(
U
=
0
{\displaystyle U=0}
) の下で、
d
s
=
d
E
2
+
d
N
2
=
(
N
(
ϕ
)
cos
ϕ
d
λ
)
2
+
(
M
(
ϕ
)
d
ϕ
)
2
.
{\displaystyle ds={\sqrt {dE^{2}+dN^{2}}}={\sqrt {\left(N\left(\phi \right)\cos \phi \,d\lambda \right)^{2}+\left(M\left(\phi \right)d\phi \right)^{2}}}.}
ただし、両極が特異点となる。
二点間測地線 距離
Δ
s
{\displaystyle \Delta s}
は、短距離の場合には、簡素な近似形を導出できる。
Δ
λ
=
λ
1
−
λ
2
,
Δ
ϕ
=
ϕ
1
−
ϕ
2
,
{\displaystyle \Delta \lambda =\lambda _{1}-\lambda _{2},\ \Delta \phi =\phi _{1}-\phi _{2},}
ϕ
m
=
ϕ
1
+
ϕ
2
2
{\displaystyle \phi _{\textrm {m}}={\frac {\phi _{1}+\phi _{2}}{2}}}
とおいて、短距離条件は、
|
Δ
ϕ
|
≪
1
{\displaystyle |\Delta \phi |\ll 1}
かつ
|
cos
ϕ
m
Δ
λ
|
≪
1
{\displaystyle |\cos \phi _{\textrm {m}}\Delta \lambda |\ll 1}
と表される。
これに従うと
Δ
s
{\displaystyle \Delta s}
の近似式が導出される(誤差は
|
Δ
s
approx
−
Δ
s
true
|
⪅
Δ
s
3
24
a
2
{\displaystyle |\Delta s_{\text{approx}}-\Delta s_{\text{true}}|\lessapprox {\frac {\Delta s^{3}}{24a^{2}}}}
; 30kmでは1ppmの精度)。
Δ
s
=
(
2
N
(
ϕ
m
)
cos
ϕ
m
sin
Δ
λ
2
)
2
+
(
M
(
ϕ
m
)
Δ
ϕ
cos
Δ
λ
2
)
2
{\displaystyle \Delta s={\sqrt {\left(2N\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\cos \phi _{\textrm {m}}\sin {\frac {\Delta \lambda }{2}}\right)^{2}+\left(M\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\Delta \phi \,\cos {\frac {\Delta \lambda }{2}}\right)^{2}}}}
.
他の計算式としては、
|
Δ
ϕ
|
≪
1
{\displaystyle |\Delta \phi |\ll 1}
かつ
|
Δ
λ
|
≪
1
{\displaystyle |\Delta \lambda |\ll 1}
と仮定すると(上記の微小量式を率直に一次式(
d
{\displaystyle d}
→
Δ
{\displaystyle \Delta }
)と見なすことに相当)、より簡素な下記の近似計算式が導出される
[ 7] (平面法などと呼ばれることがある[ 8] )。
Δ
s
=
(
N
(
ϕ
m
)
cos
ϕ
m
Δ
λ
)
2
+
(
M
(
ϕ
m
)
Δ
ϕ
)
2
.
{\displaystyle \Delta s={\sqrt {\left(N\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\cos \phi _{\textrm {m}}\Delta \lambda \right)^{2}+\left(M\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\Delta \phi \right)^{2}}}.}
しかしながら、この
|
Δ
λ
|
≪
1
{\displaystyle |\Delta \lambda |\ll 1}
は高緯度(および極近傍)では必ずしも適切な短距離条件とは言えず、それによる三角関数の近似を行ったことから両極に特異性を生じさせるなど難点を持つが[ 9] 、高緯度(および極近傍)を除けば短距離近似として妥当であり多用される。
さらに中長距離へ近似精度を改善した計算法も歴史的に多くの研究者によって開発されている。それらは高次の級数計算もしくは反復を含んでいることが多い[ 10] 。
二点間測地線計算の球面近似の一種で[ 11]
、近似精度が改善される
(
Rapp (1991)[ 12] §6.4
)(誤差は
|
Δ
s
approx
−
Δ
s
true
|
⪅
Δ
s
3
400
a
2
{\displaystyle |\Delta s_{\text{approx}}-\Delta s_{\text{true}}|\lessapprox {\frac {\Delta s^{3}}{400a^{2}}}}
; 100kmでは1ppmの精度)。
Δ
s
=
2
N
(
ϕ
m
)
arcsin
(
sin
Δ
λ
2
cos
ϕ
m
)
2
+
(
cos
Δ
λ
2
sin
M
(
ϕ
m
)
Δ
ϕ
2
N
(
ϕ
m
)
)
2
.
{\displaystyle \Delta s=2N\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\arcsin {\sqrt {\left(\sin {\frac {\Delta \lambda }{2}}\cos \phi _{\textrm {m}}\right)^{2}+\left(\cos {\frac {\Delta \lambda }{2}}\sin {\frac {M\left(\phi _{\textrm {m}}\right)\Delta \phi }{2N\left(\phi _{\textrm {m}}\right)}}\right)^{2}}}.}
方位角 は上記と対応した関係が存在する:
方位角を
θ
{\displaystyle \theta }
として、局所座標系(地平面)の単位円は
(
x
,
y
,
z
)
=
(
cos
θ
,
sin
θ
,
0
)
{\displaystyle (x,y,z)=(\cos \theta ,\sin \theta ,0)}
となる。
下記では右手系経緯度が採用されている。
右手系経緯度を採用しているもののうち、polygon の頂点配列順については時計周り 順(左手系)を採用しているものがある:
下記では左手系経緯度(緯度、経度の順)が採用されている。
下記では左手系の地図投影法を採用し、平面座標の
x
{\displaystyle x}
軸は右横方向が正、
y
{\displaystyle y}
軸は下縦方向が正としている[ 20] 。
^ 天体 が球体であれば、球面上の垂直ベクトルは中心を通るので、地理経緯度は地心経緯度 に等しい。
^ 地理経緯度は測地経緯度、測地学的経緯度(geodetic longitude and latitude)とも呼ばれる。
^ 扁長もしくは扁平楕円体座標系 とは異なる。
^ ムーニエの定理 も参照。
^ 微分関係式は、
d
[
N
(
ϕ
)
cos
ϕ
]
d
ϕ
=
−
M
(
ϕ
)
sin
ϕ
{\displaystyle {\frac {d[N(\phi )\cos \phi ]}{d\phi }}=-M(\phi )\sin \phi }
^ 解くべき
ϕ
{\displaystyle \phi }
の方程式は
p
cos
ϕ
−
z
sin
ϕ
−
e
2
N
(
ϕ
)
=
0
,
p
=
x
2
+
y
2
{\displaystyle {\begin{aligned}&{\frac {p}{\cos \phi }}-{\frac {z}{\sin \phi }}-e^{2}N(\phi )=0,\\&p={\sqrt {x^{2}+y^{2}}}\end{aligned}}}
で、またこれは変数
κ
=
p
z
tan
ϕ
{\displaystyle \kappa ={\frac {p}{z}}\tan \phi }
についての方程式 に帰着できる:
κ
−
1
−
e
2
a
κ
p
2
+
(
1
−
e
2
)
z
2
κ
2
=
0
{\displaystyle \kappa -1-{\frac {e^{2}a\kappa }{\sqrt {p^{2}+(1-e^{2})z^{2}\kappa ^{2}}}}=0}
解き方はGeographic_coordinate_conversion#From_ECEF_to_geodetic_coordinates 等を参照のこと。また
h
=
e
−
2
(
κ
−
1
−
(
1
−
e
2
)
)
p
2
+
z
2
κ
2
{\displaystyle h=e^{-2}(\kappa ^{-1}-(1-e^{2})){\sqrt {p^{2}+z^{2}\kappa ^{2}}}}
^ Williams, E. (2013年). “Aviation Formulary. ”. 2024年6月23日 閲覧。
^ 日本では「Hubeny の(簡易)式」などと呼ばれることもある(ただしその名称は適切ではない)。
^ 180度経線に対しても特異性を持つが、対処は容易である。
^ 例えば「ガウスの平均(中間)緯度法」の式を級数展開したものとして、 Hubeny, K. (1954). Entwicklung der Gauss'schen Mittelbreitenformeln, Österreichische Zeitschrift für Vermessungswesen, Hubeny, K. (1959). Weiterentwicklung der Gauss'schen Mittelbreitenformeln. Zeitschrift für Vermessungswesen.
^ したがって「haversine関数 を用いる大円距離計算 」(円の弦長に基づき弧長を求める)を回転楕円体 (
e
≠
0
{\displaystyle e\neq 0}
)へ拡張した形となっている。
^
Rapp, R, H (1991). Geometric Geodesy, Part I (Report). Ohio Start Univ. hdl :1811/24333 。
^ 和漢 の用例でも、この(経度 ・緯度 )の順である「経緯度」である(例えば「日本経緯度原点 」、「経緯線 」)。
^ 右手系 の別慣行の変数及び順序は:(余緯度 、経度 、及び高度 )。数学・物理学における球面座標系 の標準はこれに当たる。
^ a b この左手系 の使用は一般的には非推奨とされている。ただし測量 、航海術 や地理学 などの分野はこの左手系の使用は極めて標準的である。
^ 左手系の別慣行では、
x
{\displaystyle x}
方向を右横方向、
y
{\displaystyle y}
方向を下縦方向にとる。
^ 平面直角座標系 (日本の規格)では左手系である。
^ 右手系 の別慣行では:(南 →東→北→西)
^ OGCによるSRS/CRS の定義では大多数の測地系は axis order を左手系経緯度と定義する。
^ 他にSVG フォーマットでは左手系座標が採用されている。