尾高賞(おたかしょう)は、日本の作曲家の管弦楽作品に与えられる作曲賞である。日本交響楽団(NHK交響楽団の前身)の常任指揮者であり、作曲家であった尾高尚忠の死後、彼の功績を記念し、同楽団によって死の翌年である1952年に創設された。

尾高賞
受賞対象
過去1年以内に発表済みの管弦楽作品
日本
主催NHK交響楽団
初回1952年
最新回2024年

概要

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「過去1年間に公開あるいは放送によって初演された交響管弦楽曲(独奏あるいは声楽をともなうものも含む)のうち、民族文化に根ざし、演奏者及び聴衆の共感が期待できる創造的内容を有する邦人作品」に与えることを目的とする。

歴史

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日本で最も長い歴史を持つ作曲賞であり、国内外で著名な作曲家は複数回受賞していることが多い[注釈 1]。創設直後から1983年までは3月の定期演奏会で、1984年以降は特別演奏会で受賞作品が披露されていたが、現在では東京オペラシティコンサートホールで行われる演奏会シリーズ「Music Tomorrow」で披露されている。国内のオーケストラや音楽大学から推薦を受けた、過去1年間に初演された作品を、N響正指揮者(外山雄三若杉弘)を含めた選考委員会で選考し、2月下旬に発表される。年によって該当作品が2作品に及ぶ時もあれば、「該当作なし」の時もある。1990年には尾高賞の選考そのものが行われていない。一般から作品を募集した第1回(1952年・交響曲のみを対象)・第2回(1953年)には該当作品の全てが佳作入選となっているが、その後現在まで佳作としての入選はない。

受賞作品一覧

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作曲家 (回数) 受賞作品 出典
1 1953 戸田邦雄 ト調の交響曲
清水脩 交響曲
2 1954 箕作秋吉 ピアノ協奏曲
原田稔 交響的狂詩曲
3 1955 三善晃 ピアノと管弦楽のための協奏的交響曲
4 1956 林光 オーケストラのための変奏曲
5 1957 別宮貞雄 管弦楽のための二つの祈り
6 1958 入野義朗 2つの弦楽器群と管、打楽器のための合奏協奏曲
7 1959 黛敏郎 涅槃交響曲
8 1960 入野義朗 (2) シンフォニア
9 1961 矢代秋雄 チェロ協奏曲
10 1962 (該当作品なし)
11 1963 三善晃 (2) ピアノ協奏曲
12 1964 外山雄三 ヴァイオリン協奏曲
諸井誠 ヴァイオリンとオーケストラのための協奏組曲
13 1965 三善晃 (3) 管弦楽のための協奏曲
14 1966 間宮芳生 オーケストラのための2つのタブロー'65
15 1967 黛敏郎 (2) BUGAKU(舞楽)
16 1968 矢代秋雄 (2) ピアノ協奏曲
17 1969 松村禎三 管弦楽のための前奏曲
18 1970 平吉毅州 交響変奏曲
19 1971 間宮芳生 (2) ピアノ協奏曲第2番
20 1972 別宮貞雄 (2) ヴィオラ協奏曲
21 1973 湯浅譲二 オーケストラのための「クロノプラスティック [1]
22 1974 柴田南雄 コンソート・オブ・オーケストラ
23 1975 三善晃 (4) チェロ協奏曲
24 1976 武満徹 カトレーン
25 1977 廣瀬量平 尺八と管弦楽のための協奏曲
石井眞木 日本太鼓とオーケストラのためのモノプリズム
26 1978 野田暉行 ピアノ協奏曲
27 1979 松村禎三 (2) ピアノ協奏曲第2番
28 1980 松平頼暁 マリンバとオーケストラのための「オシレーション」
29 1981 武満徹 (2) ヴァイオリンとオーケストラのための「遠い呼び声の彼方へ!
30 1982 一柳慧 ピアノとオーケストラのための「空間の記憶」
尾高惇忠 オーケストラのための「イマージュ」
31 1983 (該当作品なし)
32 1984 一柳慧 (2) ヴァイオリン協奏曲「循環する風景」
33 1985 三善晃 (5) オーケストラと童声合唱のための「響紋 [2]
34 1986 (該当作品なし)
35 1987 (該当作品なし)
36 1988 西村朗 2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー [1][2]
湯浅譲二 (2) ヴィオラとオーケストラのための「啓かれた時」
37 1989 細川俊夫 オーケストラのための「遠景」I [3]
一柳慧 (3) ピアノ協奏曲第2番「冬の肖像」
38 1990 一柳慧 (4) 交響曲「ベルリン連詩」 [4]
39 1991 近藤譲 林にて [2]
池辺晋一郎 シンフォニーIV
40 1992 西村朗 (2) ヴァイオリン、ピアノとオーケストラのための二重協奏曲「光の環」
41 1993 西村朗 (3) 永遠なる渾沌の光の中へ
42 1994 北爪道夫 管弦楽のための「映照」 [5]
43 1995 藤家渓子 思いだす ひとびとのしぐさを
猿谷紀郎 ゆらら おりみだり Fractal Vision
44 1996 野平一郎 室内協奏曲第1番 [5]
林光 (2) ヴィオラ協奏曲「悲歌」
45 1997 湯浅譲二 (3) ヴァイオリン協奏曲「イン・メモリー・オブ 武満 徹」 [1]
46 1998 (該当作品なし)
47 1999 三善晃 (6) 焉歌・波摘み [5][6]
池辺晋一郎 (2) 悲しみの森〜オーケストラのために
48 2000 外山雄三 (2) 交響曲第2番 [5][7]
藤家渓子 (2) ギター協奏曲第2番「恋すてふ」
49 2001 北爪道夫 (2) 「地の風景」オーケストラのための [8]
50 2002 細川俊夫 (2) ハープ協奏曲「回帰」〜辻邦生の追憶に [3]
51 2003 湯浅譲二 (4) 内触覚的宇宙 第5番 [1]
52 2004 (該当作品なし)
53 2005 望月京 クラウド・ナイン [9]
54 2006 猿谷紀郎 (2) ゴットフリート・ベンのテキストによる「ここに慰めはない」 [10]
55 2007 新実徳英 協奏的交響曲「エラン ヴィタール」 [11]
56 2008 西村朗 (4) 幻影とマントラ [12]
57 2009 藤倉大 secret forest for ensemble [13]
原田敬子 エコー・モンタージュ
58 2010 (該当作品なし)
59 2011 西村朗 (5) オーケストラのための「蘇莫者」 [14]
60 2012 尾高惇忠 (2) 交響曲「時の彼方へ」 [15]
61 2013 野平一郎 (2) 彼方、そして傍らに ─ハープと室内オーケストラのための─ [16]
62 2014 猿谷紀郎 (3) 第62回神宮式年遷宮奉祝曲 交響詩「浄闇の祈り2673」 [17]
細川俊夫 (3) トランペット協奏曲「霧の中で」
63 2015 藤倉大 (2) Rare Gravity for orchestra [18]
64 2016 権代敦彦 オーケストラのための Vice Versa ─逆も真なり─ [19]
65 2017 池辺晋一郎 (3) シンフォニーX「次の時代のために」 [20]
一柳慧 (5) 交響曲 第10番 ─さまざまな想い出の中に─岩城宏之の追憶に
66 2018 坂田直樹 組み合わされた風景 [21]
67 2019 藤倉大 (3) グローリアス・クラウズ [22]
68 2020 細川俊夫 (4) オーケストラのための「渦」 [3]
69 2022 西村朗 (6) オーケストラのための「華開世界」 [23]
岸野末利加 チェロとオーケストラのための「What theThunder Said/雷神の言葉」
70 2023 一柳慧 (6) ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲 [24]
藤倉大 (4) 尺八協奏曲
71 2024 湯浅譲二(5) 哀歌(エレジィ)

脚注

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注釈

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  1. ^ 最多は三善晃西村朗の6回。尚忠の長男で作曲家の尾高惇忠も「イマージュ」で第30回尾高賞(1981年度)、「交響曲〜時の彼方へ〜」で第60回尾高賞(2012年度)の2回受賞している

出典

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  1. ^ a b c d 湯浅譲二”. TOKYO CONCERTS. 2021年5月27日閲覧。
  2. ^ a b c 『尾高賞受賞作品5』キングレコード、2001年10月30日。 
  3. ^ a b c 細川俊夫《渦》第68回尾高賞受賞”. ショット社. 2021年5月27日閲覧。
  4. ^ 「Toshi伝説」 一柳慧芸術総監督就任20周年記念 共鳴空間(レゾナントスペース)”. 神奈川芸術プレスWeb版. 2022年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月27日閲覧。
  5. ^ a b c d 『尾高賞受賞作品6』キングレコード、2001年10月30日。 
  6. ^ オーケストラ・スコア 三善晃 焉歌・波摘み 全音楽譜出版社”. chuya-online.com. 2021年5月27日閲覧。
  7. ^ 外山雄三”. バンド維新. 2021年5月27日閲覧。
  8. ^ 北爪道夫”. バンド維新. 2021年5月27日閲覧。
  9. ^ 尾高賞に望月京さん/作曲「クラウド・ナイン」”. 四国新聞社. 2021年5月27日閲覧。
  10. ^ 猿谷紀郎”. TOKYO CONCERTS. 2021年5月27日閲覧。
  11. ^ 新実徳英”. TOKYO CONCERTS. 2021年5月27日閲覧。
  12. ^ 西村 朗「幻影とマントラ」が尾高賞を受賞!”. カメラータ・トウキョウ・ニュース. 2021年5月27日閲覧。
  13. ^ 藤倉大と原田敬子の作品が第57回尾高賞を受賞”. ぶらあぼ. 2021年5月27日閲覧。
  14. ^ NHK交響楽団第59回「尾高賞」が決定”. ぶらあぼ. 2021年5月27日閲覧。
  15. ^ 【新譜情報&インタビュー】「良いものは良い、それが尾高先生の音楽です」-2/16に逝去した作曲家・尾高惇忠の管弦楽作品集リリース”. e-onkyo music. 2021年5月27日閲覧。
  16. ^ NHK交響楽団 第61回「尾高賞」授賞作品決定”. ぶらあぼ. 2021年5月27日閲覧。
  17. ^ NHK交響楽団 第62回「尾高賞」授賞作品決定”. ぶらあぼ. 2021年5月27日閲覧。
  18. ^ ◆藤倉大の最新オーケストラ作品”Rare Gravity for orchestra” が第63回尾高賞受賞!”. KAJIMOTO. 2021年5月27日閲覧。
  19. ^ 権代敦彦さん「第64回尾高賞」受賞”. 一般社団法人 演奏家権利処理合同機構. 2021年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月27日閲覧。
  20. ^ 一柳慧《交響曲第10番》第65回尾高賞受賞”. ショット社. 2021年5月27日閲覧。
  21. ^ (短信)尾高賞に坂田氏”. 日本経済新聞. 2021年5月27日閲覧。
  22. ^ 第67回「尾高賞」が決定”. ぶらあぼ. 2021年5月27日閲覧。
  23. ^ オーケストラ「尾高賞」に西村朗さんと岸野末利加さんの2作品”. NHK. 2022年7月2日閲覧。
  24. ^ NHK交響楽団 第70回「尾高賞」について | NHK交響楽団”. www.nhkso.or.jp. 2023年2月17日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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