三沙市
三沙市(さんさ-し)は、中華人民共和国海南省の南東部に位置する地級市。東南アジア各国との領有権問題を有す西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島を管轄しており、南沙諸島の多くは中華民国(台湾)、ベトナム、フィリピンとマレーシアの実効支配下に置かれている。三沙市は多くの島嶼を管轄しているが、中国人のほとんどは南海諸島最大の島であるウッディー島(永興島)に居住している。
中華人民共和国 海南省 三沙市 | |
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永興島の岸壁付近 | |
海南省における三沙市の位置 | |
中心座標 北緯16度50分03秒 東経112度20分15秒 / 北緯16.83417度 東経112.33750度 | |
簡体字 | 三沙 |
繁体字 | 三沙 |
拼音 | Sānshā |
カタカナ転写 | サンシャー |
国家 | 中華人民共和国 |
省 | 海南 |
行政級別 | 地級市 |
成立 | 2012年7月24日 |
市党委書記 | 張軍 |
市長 | 鄧忠 |
市人民代表大会 常務委員会主任 |
徐学健 |
面積 | |
総面積 | 788(陸地面積) km² |
市区 | 13(陸地面積) km² |
人口 | |
総人口(2020) | 0.2333 万人 |
経済 | |
電話番号 | 898 |
郵便番号 | 573100 |
公式ウェブサイト: http://www.sansha.gov.cn/ |
概要
編集2012年、海南省西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島弁事処から改編され中国二番目の島嶼部の地級市として成立した。中国最南端の地級市であるとともに、海洋面積を含めると中国の地級市として最大の管轄面積であるが、人口は極めて限定的である。
歴史
編集1959年に海南特別行政区の下に組織された西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島弁事処を前身とする。1988年の海南省設置に伴い移管されている[1]。
2007年11月19日、海南省文昌市市委宣伝部が香港の『明報』の電話取材を受けた際、「中華人民共和国国務院はすでに海南省人民政府の建議を受け取っており、海南省西沙諸島・中沙諸島・南沙諸島弁事処の代わりに正式な県級市・三沙市を設置することを決定、三沙市への物流・供給は西沙諸島に一番近い文昌市が担当し、物流基地として文昌市清瀾港が整備される」と回答した。また『明報』の報道によれば、文昌市市委書記である謝明中は10月26日に開催された市委全体会議で「国務院が県級市成立を批准」を公表したが、市名に関しては「X市」とし、同時に永興島での観光産業を育成するとのことも報道された[2][3]。このニュースが発表されると、ベトナムでは抗議活動が行われている。この年、中国政府は三沙市の成立を正式発表しないが、否認することもない立場を採用している。
2012年7月17日、国務院は三沙市の成立を正式に発表した。
Googleは、Google マップ英語版でスカボロー礁について三沙市中沙諸島に属すること示す"Zhongsha Island, Sansha"の表示を行っていたが、フィリピン市民からの抗議を受け、2015年7月14日にこの表示を削除している[4][5]。
気候
編集熱帯モンスーン気候に属する。
行政区画
編集2つの行政区を管轄する。
年表
編集経済
編集水産資源と石油、天然ガスなどのエネルギー資源が豊富に存在しているが、領有権問題もあり、ほとんどが未開発である。天然資源以外にも豊富な漁場として各国の漁船が活動している[10]。
人口
編集2010年時点での三沙市の住民登録は444人である[11]。
交通
編集空港
編集1991年、西沙諸島に軍用の永興島空港が開港された。全長3,000mの滑走路が1本設置され、ボーイング737とエアバスA320の離着陸に対応している[12]。
港湾
編集観光
編集これまで政府により禁じられていた西沙諸島への観光旅行は、1997年に許可されるようになった。
南シナ海諸島領有権を巡る紛争
編集2007年12月3日、ベトナム外務省 (Bộ Ngoại giao Việt Nam) のスポークスマンである黎勇 (Lê Dũng) は、ベトナム通信社記者の質問に回答する形で南シナ海の三沙市の成立に抗議をした[15]。ベトナムは西沙諸島と南沙諸島とを領有するに十分な歴史的証拠と法的根拠を持っているという見解を示し、中華人民共和国の三沙市設置は、ベトナム社会主義共和国の主権を侵害することであり、両国間合意に違反するとともに、中越両国が海洋領有問題解決を目指し開始した交渉を妨害するものであると抗議した。関係諸国は海洋法に関する国際連合条約と、2002年に締結された南シナ海に関する行動宣言(The Declaration on the Conduct of Parties in the South China Sea)に依拠し、平和な話し合いによって問題解決を図るべきとの見解を示した[16]。
2012年6月21日、ベトナム国会は南シナ海の南沙諸島と西沙諸島の領有権を定めた「ベトナム海洋法」を可決、これに対し中華人民共和国外交部は強く抗議し[17][18]、ベトナム社会主義共和国もまた中華人民共和国の抗議を非難する声明を発表した[19]。
脚注
編集- ^ “民政部发言人就国务院批准设立地级三沙市答问”. 中国政府网 (2012年6月21日). 2012年6月21日閲覧。
- ^ 海南籌建三沙市 爭議海域設轄區面積約全國1/4 Archived 2008年6月16日, at the Wayback Machine.,『明報』新聞網加東版,2007年11月20日
- ^ 海南筹建南海三沙市 面积接近全国陆地四分一,中国评论新闻网,2007年11月20日
- ^ Google heeds calls to drop Chinese reference to Panatag Shoal ABS-CBN News、2015年7月14日
- ^ 【南シナ海問題】グーグルマップから中国名「中沙諸島」「三沙市」消える フィリピンで削除運動 産経ニュース、2015年7月15日
- ^ 境界研究、No.1、2010年、中国と「辺疆」:海洋国境― 南シナ海の地図上のU字線をめぐる問題 ―
- ^ 县级以上行政区划变更情况 - 中華人民共和国民政部
- ^ 海南省 - 区划地名网
- ^ “中国 南シナ海の島に新たな行政区設置を発表”. NHKNEWSWEB. (2020年4月18日). オリジナルの2020年4月19日時点におけるアーカイブ。 2020年4月19日閲覧。
- ^ “三沙市設立理順南海資源版図:経済価値は数十万元に達する”. 新浪网 (2012年6月22日). 06 22, 2012閲覧。
- ^ “海南省2010年第六次人口調査”. 海南省人民政府 (2011年5月10日). 2012年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月21日閲覧。
- ^ “西沙群島将建大批保障房 旅游有望今年開放”. 广州日报. 腾讯网 (2012年5月9日). 2012年6月21日閲覧。
- ^ “三沙市の設立 南シナ海に突然現れたその戦略意図は?”. 财讯网 (2012年6月22日). 2012年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月22日閲覧。
- ^ “国务院批准设立海南省三沙市”. 北京晚报. 京报网 (2012年6月22日). 2014年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月22日閲覧。
- ^ 中国による三沙市にベトナムが主権侵害と抗議、BBCワールドニュース中国語版ホームページ 2007年12月4日
- ^ 中国による三沙市設置に対するベトナム政府の抗議、ベトナム外交部ホームページ、2007年12月4日
- ^ 中華人民共和国外交部によるベトナム国会で通過した『ベトナム海洋法』に対する声明発表
- ^ 中国全人代外事委員会、『ベトナム海洋法』に抗議
- ^ ベトナム、中国の批判に抗議 南沙などめぐり非難合戦