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以上のようにSOHCは必ずしもDOHCに劣るわけではなく実用上は有利な面も多くあるが、一部メーカー(トラック・バス専業メーカーを除く国内メーカーでは |
以上のようにSOHCは必ずしもDOHCに劣るわけではなく実用上は有利な面も多くあるが、一部メーカー(トラック・バス専業メーカーを除く国内メーカーでは2019年3月現在、[[本田技研工業|ホンダ]]と[[三菱自動車工業|三菱自工]]がこれに該当する)を除くとSOHCへの回帰はあまり行われていない。これはマーケット面での要求もさることながら、近年一般的となった位相変化型[[可変バルブ機構]]はSOHCでは効果が得られにくい事からメリットが小さいという点が理由にあげられる。SOHCは単一のカムシャフトで吸気バルブと排気バルブを作動させる構造上、カムの位相を変化させると吸気のタイミングが変化するのと同時に排気のタイミングも同時に変化してしまうためオーバーラップ領域の変化が得られない。ただし、SOHCにおいても負荷や回転数に対し最適なバルブタイミング制御を行うことで、オーバーラップの変化はなくとも一定の効果は得られるため、大排気量SOHCエンジン(例:[[:en:Ford Modular engine]])などでは採用されている。 |
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国内においては、吸気バルブのリフト量変化と位相変化が連動する連続可変リフト機構を採用した、三菱自工の新[[MIVEC]]エンジン([[三菱・4J1型エンジン|4J10型、および4J11型、4J12型エンジン]])が、連続可変リフト機構と協調作動させる形でSOHCでありながらカムシャフトの位相変化を行なっている<ref>[http://www.mitsubishi-motors.com/jp/spirit/technology/library/mivec.html 連続可変バルブリフトMIVEC - MITSUBISHI MOTORS]</ref>。 |
国内においては、吸気バルブのリフト量変化と位相変化が連動する連続可変リフト機構を採用した、三菱自工の新[[MIVEC]]エンジン([[三菱・4J1型エンジン|4J10型、および4J11型、4J12型エンジン]])が、連続可変リフト機構と協調作動させる形でSOHCでありながらカムシャフトの位相変化を行なっている<ref>[http://www.mitsubishi-motors.com/jp/spirit/technology/library/mivec.html 連続可変バルブリフトMIVEC - MITSUBISHI MOTORS]</ref>。 |
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単一のカムシャフトで吸排気の位相を独立で変化させ、オーバーラップ量を変化させる手法としては、吸気と排気のカムローブが独立して動く二重構造のカムシャフトを用いる手法がある。これは既に一部のアメリカの大排気量V型OHVエンジンで採用されており、機構上はSOHCでも利用できる。 |
単一のカムシャフトで吸排気の位相を独立で変化させ、オーバーラップ量を変化させる手法としては、吸気と排気のカムローブが独立して動く二重構造のカムシャフトを用いる手法がある。これは既に一部のアメリカの大排気量V型OHVエンジンで採用されており、機構上はSOHCでも利用できる。 |
2019年3月12日 (火) 05:57時点における版
SOHC(エスオーエイチシー、Single OverHead Camshaft)とは、レシプロエンジンのうち給排気弁を持つようなタイプにおける弁駆動メカニズムの配置形態の一種で、1本のカムシャフトがピストンの頭上にあるような形態(シリンダーヘッドを通っている形態)のことである。DOHCが増える以前には単にOHCとも呼ばれることもあったが、DOHCと明確に区別するために使われるレトロニム的な由来もある[注釈 1]。
構造
バルブの位置はOHVやDOHCなどと同じく、燃焼室の上である。カムシャフトはシリンダーヘッドに1本置かれている。カムシャフトは、タイミングチェーン、ギアトレーン、タイミングベルトなどでクランクシャフトとつながれており、回転する。楔形燃焼室(ウェッジシェイプ)やバスタブ形燃焼室を持つターンフロー(カウンターフロー)のエンジンでは、カムが直接バルブを押し下げる直動式か、シーソー式ロッカーアームによる駆動となる[注釈 2]。半球形燃焼室や多球形燃焼室、ペントルーフ形燃焼室を持つクロスフローのエンジンでは、バルブの配置の関係からシーソー式ロッカーアームを介しての駆動となる。OHVでは、カムシャフト→プッシュロッド→ロッカーアームの順にバルブを開閉する動きが伝えられるが、SOHCではプッシュロッドが不要になりカウンターフローとS字型クロスフローではそれぞれロッカーアームも不要にできる。DOHCとの違いはカムシャフトの本数で、DOHCでは吸気バルブおよび排気バルブをそれぞれ独立したカムシャフトで駆動するが、SOHCでは1本のカムシャフトを共用する。
歴史
広く使われるようになる以前の事例としては、1897年にルドルフ・ディーゼルが開発したディーゼルエンジンはOHCであった。
20世紀初頭以後、高性能自動車エンジンや航空機用エンジンには使われるようになった。一般乗用車用など、一般的なエンジンがサイドバルブ(以下SV)からOHVを経て、OHC(さらにはDOHC)が普及するのは、1960年代から1970年代にかけてである。
特徴
OHVと比較した場合、動弁系の慣性質量を減らしやすくなるため、結果としてバルブの開閉タイミングの管理が容易になり、DOHCほどではないが、それなりに高回転・高出力を得やすい。かつてはシリンダーヘッド上のカムシャフトを駆動するためにはベベルギアやカムギアトレーンが用いられていたために、OHVよりもコストのかかるシステムであった。現在は安価なタイミングベルトやチェーンによる駆動が一般的となり、量産されている。部品点数がOHVやDOHCより少なくなるので、小型軽量で安価になり、整備性もよくなる。
DOHCと比較した場合、カムシャフトが1本少ない分摺動抵抗が減るため燃費のいいエンジンにしやすく、SVやOHV程ではないがエンジンの重心を低くすることができる。
逆に、DOHCに比べ、1本のカムシャフトでロッカーアームを介してバルブを駆動させるという構造から、給排気バルブの数を増やしにくいため、高回転型のエンジンを作りにくい。同様の理由により、大出力化の一環でビッグバルブなどを組んだ際のバルブ一本当たりの慣性重量がDOHCよりも大きくなりがちになる。また、1本のカムシャフトで給排気両方のバルブを開閉するため、バルブ挟み角などのバルブのレイアウトの許容範囲が狭い。調整式カムスプロケットでバルブタイミングを調整する場合において、DOHCのように吸気・排気を別々に微調整することが不可能であり、この条件を同時に満足するためにはそのつどカムシャフトの新造が必須となる。
また、ロッカーアームがバルブを開閉する力によって弾性変形するため、高回転になるほどバルブ開閉の精度が落ち、バルブジャンプやバルブサージングが発生する。
プライベートチューンにおいてはロッカーアームの長さ(ロッカーアームレシオ)を変更するだけで、カムシャフトを変更することなくバルブリフト量の増大が図れる場合もあるが、クロスフロー燃焼室でカムシャフトを挟んで左右にロッカーアームが振り分けられている場合には、レシオの変更により吸気側と排気側のバルブタイミングが逆方向にずれる(つまりバルブオーバーラップが直接変化する)ため、カムシャフトも同時に変更しなければ性能が低下する場合もある。
一般的に、SOHCはDOHCより性能が劣っていると見られがちだが、必ずしもそうではない。歴史的にはOHV V8のフォード・FEエンジンをSOHC化して高出力化を図り、結局はNASCARからレギュレーション規制で締め出しを受けてしまったフォード・427 SOHC "Cammer"エンジンのような例も存在した。カムシャフトの数よりも燃焼室の形状やカムの形・大きさ(カムプロフィール)と言ったものの方が性能を決める際のウェイトは高く、SOHCではなくDOHCにする意義は、その自由度を高めるための手段であって、必ずしも高回転・高出力なエンジンを狙うものではない。
また、ターボ装着時の給排気特性を改善するためのDOHC化も多く見られたが、日本の軽自動車においてターボチャージャーによる出力競争が熾烈だった頃、スーパーチャージャーを採用していた富士重工業(現・SUBARU)のスバル・レックスだけは、モデル消滅までSOHCのままであった[注釈 3]。
変わったところではスズキが20年以上にわたって使用し続けたF型では、燃焼室形状をハート型に近づける事で燃焼効率を向上させていた。F型には4バルブDOHCや4バルブSOHC、3バルブSOHC[注釈 4]も存在するが、バルブ配置の関係のためこの設計は崩れている。
シリンダーあたりのバルブ数は吸気×1、排気×1の2バルブが基本であったが、吸排気効率を高めるために、吸気×2、排気×1の3バルブや、吸気×2、排気×2の4バルブのマルチバルブエンジンも登場した。また、カムシャフトの干渉のため理想的なセンタープラグ配置が難しいという弱点を補い燃料の完全燃焼を促すために、ツインプラグ方式をSOHCエンジンで実現するものもある[注釈 5]。
上記のようにカムシャフト干渉によりセンタープラグ配置を行いにくいが、マルチバルブ・ペントルーフ型燃焼室・センタープラグが要求される現代においてはプラグを傾けカムシャフトを回避する形でセンターに配置するのが一般的である。ただしこの場合、プラグホールが斜めにヘッドを貫通する関係からポート形状や冷却流路の設計などで制限を受けやすい。 これに対しカムシャフトをオフセットすることでプラグの傾度を抑えつつセンターに配置することでコンパクトなレイアウトとする例[1]などがある。さらに高効率が要求される現代では狭いバルブ挟み角も要求されるが、ロッカーアーム(シーソー式)の構造上バルブ挟み角はあまり小さくしにくい。この点もホンダのユニカム[2]のように吸気バルブを直動、排気バルブをロッカーアームで駆動することでセンタープラグおよびバルブ挟み角の狭角化を行っている例が存在する。
カムシャフトをセンターからオフセットする場合の手法としては吸排気バルブのロッカーアームを不等長とする例(ホンダD型エンジンSOHC4バルブ)や吸気バルブをスイングアーム式、排気バルブをシーソー式ロッカーアームとする例(スズキG型の一部を除くSOHC)、吸気バルブを直動、排気バルブをロッカーアームとする例(トライアンフのSlant-Four Engine、および前述のユニカム)などがある。変わった所ではen:Alfa Romeo V6 engineのように吸気バルブを直動、排気バルブをプッシュロッドとロッカーアームを介して駆動させDOHCと同様のセンタープラグ配置とする例がある。またフィアット・アルファロメオの可変バルブ機構であるマルチエア(ツインエア)では排気バルブをカムシャフトで直接もしくはスイングアームにて駆動、吸気バルブは油圧を介した可変バルブ機構で駆動させており、センタープラグ配置とバルブ挟み角の狭角化を実現している。
以上のようにSOHCは必ずしもDOHCに劣るわけではなく実用上は有利な面も多くあるが、一部メーカー(トラック・バス専業メーカーを除く国内メーカーでは2019年3月現在、ホンダと三菱自工がこれに該当する)を除くとSOHCへの回帰はあまり行われていない。これはマーケット面での要求もさることながら、近年一般的となった位相変化型可変バルブ機構はSOHCでは効果が得られにくい事からメリットが小さいという点が理由にあげられる。SOHCは単一のカムシャフトで吸気バルブと排気バルブを作動させる構造上、カムの位相を変化させると吸気のタイミングが変化するのと同時に排気のタイミングも同時に変化してしまうためオーバーラップ領域の変化が得られない。ただし、SOHCにおいても負荷や回転数に対し最適なバルブタイミング制御を行うことで、オーバーラップの変化はなくとも一定の効果は得られるため、大排気量SOHCエンジン(例:en:Ford Modular engine)などでは採用されている。 国内においては、吸気バルブのリフト量変化と位相変化が連動する連続可変リフト機構を採用した、三菱自工の新MIVECエンジン(4J10型、および4J11型、4J12型エンジン)が、連続可変リフト機構と協調作動させる形でSOHCでありながらカムシャフトの位相変化を行なっている[3]。 単一のカムシャフトで吸排気の位相を独立で変化させ、オーバーラップ量を変化させる手法としては、吸気と排気のカムローブが独立して動く二重構造のカムシャフトを用いる手法がある。これは既に一部のアメリカの大排気量V型OHVエンジンで採用されており、機構上はSOHCでも利用できる。
脚注
注釈
- ^ ガソリン機関ないしディーゼル機関の発達の過程において、サイドバルブ→OHV→(S)OHC→DOHC といったように、弁およびその駆動メカニズムが主に性能向上を目的としてピストンの頭上に移動していった、という経緯が背景にある。
- ^ 楔形燃焼室やバスタブ型燃焼室を持ったターンフローのエンジンでロッカーアームが用いられたものとしては日産のL型エンジン、トヨタの1G-E、A型エンジン(DOHCを除く)、E型エンジン(DOHCを除く)などがある。
- ^ 後継車のスバル・ヴィヴィオではホットモデルの「RX」シリーズに限り、トヨタのハイメカツインカムエンジンに類似した機構を用いたDOHCを採用しているが、これは主にマーケット面での要求によるものである。
- ^ 同社の9代目キャリイ専用
- ^ 日産・Z型(Z18、Z20など)およびCA型、ホンダ・i-DSI(L型およびP型など)。