ハドラマウト語
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ハドラマウト語 | |
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紀元前4世紀のハドラマウト王国(緑) | |
話される国 | イエメン |
消滅時期 | 4世紀 |
言語系統 | |
言語コード | |
ISO 639-3 |
xhd |
Linguist List |
xhd Hadramitic |
Glottolog |
hadr1235 Hadrami[1] |
ハドラマウト語[2](ハドラマウトご、英語: Hadramitic, Hadrami)は、古代南アラビア語のひとつ。南西アラビア東部、現在のイエメンからオマーンにかけて、西暦4世紀ごろまであったハドラマウト王国で使われていた言語である。
現在のアラビア語ハドラマウト方言とは別の言語である。
概要
[編集]紀元前1千年紀後半にサバ王国の支配が衰えると、各地の地方語(ミナ語、カタバン語、ハドラマウト語)による碑文が増加した。ハドラマウト語の碑文は主にワーディー・ハドラマウトに沿った地域、および王国の都であるシャブワに残っている。シャブワは古代の香料貿易路の起点として重要だった。紀元前1世紀にはシャブワから数百キロメートル離れたズファール地方に勢力を伸ばし、サマールム(S1mhrm、今のオマーンの、サラーラ近郊のホール・ローリー。インド洋に望む)に植民した。ここにも碑文が残されている。ズファールは乳香の主要な産地だった。4世紀になるとハドラマウトはヒムヤル王国に支配され、ハドラマウト語にかわってサバ語で碑文が書かれるようになった[3][4]。
特徴
[編集]音声の上では、s3 と ṯ がしばしば混同される。たとえば「3」を意味する s2lṯ が s2ls3 と書かれたり、逆に「碑文」を意味する ms3nd が mṯnd と書かれる[5][6]。
サバ語の三人称代名詞や動詞使役語幹で h が現れる場所に、ハドラマウト語では s1 が現れる(ミナ語、カタバン語も同じ)[7][6]。
単数の三人称接尾辞には、短い -s1 のほかに -s1ww のような長い形が見られる(カタバン語も同じ)[8]。
サバ語の前置詞 l-「……に」にあたるのはハドラマウト語では h- になる[9][10]。
脚注
[編集]- ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Hadrami”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ^ 柘植洋一「古代南アラビア語」『言語学大辞典』 1巻、三省堂、1988年、1714-1720頁。
- ^ Nebes & Stein (2004) p.455
- ^ Kogan & Korotayev (1997) p.221
- ^ Nebes & Stein (2004) p.459
- ^ a b Kogan & Korotayev (1997) p.223
- ^ Nebes & Stein (2004) p.470
- ^ Nebes & Stein (2004) pp.470-471
- ^ Nebes & Stein (2004) p.472
- ^ Kogan & Korotayev (1997) p.237
参考文献
[編集]- Kogan, Leonid E.; Korotayev, Andrey V. (1997). “Sayhadic (Epigraphic South Arabian)”. In Robert Hetzron. The Semitic Languages. Routledge. pp. 220-241. ISBN 9780415412667
- Nebes, Norbert; Stein, Peter (2004). “Ancient South Arabian”. In Roger D. Woodard. The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages. Cambridge University Press. pp. 454-487. ISBN 9780521562560