外資規制
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
外資規制(がいしきせい)とは、国内企業への外国資本に対する規制。
日本
[編集]日本の場合、国家の安全や主権維持に関わる産業分野等において、外国人による投資が制限されている。
外為法に基づく外資規制
[編集]外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、以下のような外資規制が設けられている。
- 対内直接投資に関する条約等がない国(アフリカ・中央アジアの一部)からの投資
- 上記以外の国からの場合は、航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、上水道、通信、放送、鉄道、路線バス、内航海運、石油、皮革、履物、農業、林業、水産業、警備業等の産業に対する投資
上記に該当する投資については財務大臣及び主務大臣への事前届出が必要となる(外国為替及び外国貿易法第27条第1項)。審査の結果、投資内容の変更又は中止の勧告を実施する場合があり(同法第27条第5項)、仮に従わなかった場合には変更又は中止の命令を実施する場合がある(同法第27条第10項)。
上記に該当しない投資についても、45日以内に財務大臣及び主務大臣に報告しなければならない[1]。
特定取得(外国人投資家が国内の非上場企業の株式やその持ち分を、他の外国人投資家からの譲渡により取得すること)も同法第28条で同様の規制を受ける。
個別業法における外資規制
[編集]上記の他に、個別の業法の中で、外資に対する出資規制が設けられている例もある。
- 日本電信電話株式会社等に関する法律(NTT法) - NTTの持株会社である日本電信電話の議決権の3分の1以上を外国人が保有する事を禁止(間接出資も含む)。外国人が日本電信電話と地域会社の東日本電信電話・西日本電信電話の役員に就くことも禁止。
- 電波法 - 外国人、外国人が代表を務める法人、外国人が役員の3分の1以上を占める法人、外国人が議決権の3分の1以上を占める法人には、無線局免許状を与えない[2]。基幹放送用の無線局には5分の1を適用。アマチュア無線局・電気通信事業者の無線局などには適用されない。
- 放送法 - 基幹放送#外資規制の項を参照のこと
- 航空法 - 外国人、外国人が代表を務める法人、外国人が役員の3分の1以上を占める法人、外国人が議決権の3分の1以上を占める法人に該当する者が所有する航空機は、登録することができない。また、航空運送事業の許可を受けることは出来ない。
- 貨物利用運送事業法 - 外国人、外国人が代表を務める法人、外国人が役員の3分の1以上を占める法人、外国人が議決権の3分の1以上を占める法人は、第一種貨物利用運送事業の登録、第二種貨物利用運送事業の許可を受けることは出来ない(国際貨物運送に係る貨物利用運送事業については外資も可)。
外資規制を受ける上場会社
[編集]- 金融商品取引法(株主の1/5)
- 航空法(株主の1/3)
- ANAホールディングス:持株会社も同法による規制の対象
- 日本航空(JAL)
- スターフライヤー
- スカイマーク
- 貨物利用運送事業法(株主の1/3)
- NTT法(株主の1/3)
- 日本電信電話(NTT)
- 電波法、放送法(株主の1/5)
- TBSホールディングス(TBSHD:TBSテレビ・TBSラジオ・BS-TBS)
- 中部日本放送(CBC:CBCテレビ・CBCラジオ)
- RKB毎日ホールディングス(RKB:RKB毎日放送<RKBテレビ・RKBラジオ>)
- BSNメディアホールディングス(BSN:新潟放送)
- テレビ東京ホールディングス(テレビ東京・BSテレビ東京)
- フジ・メディア・ホールディングス(F・M・HD:フジテレビジョン・ニッポン放送・BSフジ・仙台放送)
- 日本テレビホールディングス(日テレHD:日本テレビ放送網・アール・エフ・ラジオ日本・BS日本)
- スカパーJSATホールディングス(SJHD)
- WOWOW
- 日本BS放送(BS11)
- 朝日放送グループホールディングス(ABC:朝日放送テレビ・朝日放送ラジオ)
- テレビ朝日ホールディングス(テレビ朝日・BS朝日)
- 東北新社
※2023年6月現在[3]
過去に外資規制を受けていた上場会社
[編集]- 電波法、放送法(株主の1/5)
各国の外資規制
[編集]米国
[編集]米国ではエクソン・フロリオ条項(en:Exon–Florio Amendment)により、外国企業による米国企業買収について「国家の安全保障を脅かす」と政府に判断されれば、どのような業種でも外国資本の買収を止めさせることができる。
脚注
[編集]- ^ 対内直接投資等に関する命令第6条の2
- ^ 一例として、文化放送は1948年に「(仮称)財団法人セントポール放送協会」として無線局免許状を申請したが、計画時の発案者が聖パウロ修道会日本管区長でイタリア人司祭のパウロ・マルセリーノ(パオロ・マルチェリーノ)であったため、そのままでは外資規制と電波法第5条の国籍条項に抵触してしまう上に外国宗教であるキリスト教を前面に出す申請内容も電波監理委員会から懸念する意見があった。そのため、マルセリーノは日本国籍を取得し日本名を「丸瀬利能(まるせ としたか)」に改名することで国籍要件を回避(ただし、申請一本化の過程でマルセリーノは申請者としては手を引いている)、他の競願者と申請を一本化し宗教色を薄くしたことで申請が受理されている。→「文化放送 § 沿革」も参照
- ^ “外国人保有制限銘柄 期中公表”. 証券保管振替機構 -ほふり-. 2022年1月30日閲覧。
- ^ “BSデータ放送910ch「ウェザーニュース」放送終了のお知らせ”. 株式会社ウェザーニューズ (2016年8月24日). 2022年12月14日閲覧。
- ^ “第31期定時株主総会招集ご通知”. 株式会社ウェザーニューズ. p. 5 (2017年7月27日). 2022年12月14日閲覧。
- ^ 2016年9月30日にBSデジタル放送の放送を終了したため、適用外となった[4][5]。
- ^ 事業の根拠法を放送法から電気通信役務利用放送法へ移行したため、適用外となった。
参考文献
[編集]- 本郷隆「外資規制法の構造分析--安全保障を理由とする投資規制の比較法的分析と事例研究」『東京大学法科大学院ローレビュー』第6巻、2011年、127-162頁、NAID 40019036709。