日本写真印刷の業績回復のテンポが早まる可能性が出てきた。主力商品のタッチパネルの需要が携帯電話向けなどに回復をみせているのをはじめ、今秋から発売予定のマイクロソフトの新基本ソフト「Windows 7」にタッチパネル機能が標準装備されることから、ノートパソコンを中心にタッチパネルの需要が大幅に拡大する可能性が浮上している。
同社は、小型タッチパネルで世界トップクラスのシェアを占め、携帯電話や、ノートパソコンなどの情報端末機向けに、立体的なプラスチックへの印刷を行うIMD(成形同時加飾転写システム)では、圧倒的に高い世界シェアを誇っている。同社の今後の業績と株価の動向について探った。
同社が5月12日に発表した2010年3月期の連結業績予想は、売上高1300億円(前期比1.7%増)、営業利益128億円(同21.5%減)、経常利益132億円(同14.8%減)、純利益78億円(同10.2%減)としている。これは、昨年秋以降の世界的な金融危機に伴う深刻な不況により、携帯電話などの販売が大きく落ち込むと予想したためだ。
ところが、第1四半期(2009年4〜6月)の業績は、ノキアの携帯電話スマートフォン向けのタッチパネルのスタートなどが下支え要因となり、5月を底に6月から生産稼働率が回復の兆しを示している。また、ソフトバンクの孫正義社長は「(携帯電話向け基本ソフトの)アンドロイドを搭載した携帯電話端末の登場は時間の問題で、我々も出す」と話しているのに加え、「iPhone」につても販売の好調さをアピールした。
日本写真印刷は、アップルをはじめ、フィンランドのノキア、韓国のサムスンなど世界的な携帯電話大手に製品を供給しており、今後タッチパネル採用比率が高まるにしたがって、同社のビジネスチャンスが拡大することになる。同社は、需要拡大が予想されるタッチパネル増産のため、主力工場である加賀工場に第5工場を新設する方針を打ち出している。着工は今年7月初旬、竣工稼働は同年12月中旬を予定している。第5工場の生産能力はタッチパネル275万個(3インチサイズのパネル換算)で、同社の総生産能力は1375万個となる。
さらに、中期的な視野で注目されるのは、ノートパソコンでのタッチパネル標準装備による需要拡大への期待感だ。マイクロソフトが新たに提供する基本ソフトウエアの「Windows 7」に、タッチパネル機能が標準装備されるため、ノートタイプを中心にパソコンにもタッチパネルの採用が一気に加速する可能性も期待できる。
「Windows 7」の日本国内での一般発売日は2009年10月22日だ。これまでの携帯電話や携帯ゲーム機向けが主力だったタッチパネルが、より大型のパソコンに採用されることは、同社にとって飛躍的な収益の向上につながる可能性もある。
同社の株価は、今年2月2日に年初来安値の2100円を付けて以降順調に下値を切り上げる展開で、6月29日には年初来高値の4840円をつけた。その後は小幅調整となり、先週末7月10日の終値は4350円となっている。直近7月3日申込現在の東証信用倍率は0.94倍と売り長と取組妙味もあり、中期的には株価5000円台での推移も十分期待できそうだ。
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