今年20周年を迎えていた「ブシドーブレード」に今こそ迫る
「ブシドーブレード」とは一撃必殺とみつけたり
ある種のゲームが出るたびに「ブシドーブレード」の名を耳にする。例えばそれは「フォーオナー」であったり、「Overgrowth」であったりするし、なかには「斬!斬!斬!(原題:Slice Dice & Rice)」のように影響を明言しているものもある。
ブシドーブレードに影響受けたというスマホ格ゲー、SWORD MASTER 格ゲーというより間合いとタイミングとスタミナのあるダークソウルみたいな感じでした。シンプルだけど、思った以上に奥深い。 #BICFest pic.twitter.com/N9DQNqHd4e
— IGN Japan (@IGNJapan) 2016年9月10日
そこで当時「ブシドー」を連呼していたおかげで、数年後に会った「ブシドーブレード」を知らない同級生から「今でも『ブシドー』好きなの?」と聞かれてしまった私が、20年の節目に本作をあらためて振り返ってみたい。
根幹を成す、システム上の三種の神器
思うに「ブシドーブレード」を「ブシドーブレード」たらしめている要素は3つある。
- 一撃必殺がある
- 刀剣を使って対戦する
- 自由に走り回れる
もっとも重要、かつ本作のトレードマークとも言えるのは、特殊な技でもないのに相手を一撃で倒せる点だろう。「ライフゲージは無用」という思い切りとともに真剣勝負を演出し、攻撃が深く入ればそれだけで勝負が決まる。
浅く攻撃を受けると動作が鈍くなっていくほか、腕や足に斬撃が決まれば振りが遅くなり、移動が制限されたりといった要素もある。勘違いしやすいが「防御」はある(□ボタン)。ただし、これは構えて受けるものではなく、得物を当てて攻撃をいなすものだ。
「刀剣を使う」のは言うまでもないだろう。タイトルにもなっているとおり、本作の重要なフレーバーでもある。
本作では3Dフィールド内を自由に走り回れるシステムがある。これは「フリーランニング」と名付けられており、壁際(武器が壁に当たると弾かれる)だとか有利な場所での戦いをするためのものだ。スタミナのような概念はなく、いくらでも走り回れるのが特徴。このため、武士道を捨てて走り回ればそれだけで勝負の決着が遠ざかるという危うさを抱えている。
「ブシドーブレード」の武士道とは
「じゃあ、その武士道ってなんだよ」
とこれを読んでいるあなたは思っただろう。「本作における武士道」とは一部の卑劣な行いを避けることにある。
- 段差を登っている最中に斬りつける
- 戦闘開始時の名乗り口上中に斬りつける
これらが該当する卑劣な行為だったと記憶している(死体を斬りつけるのは問題ない)。1人用の「ストーリー・モード」でこれらの行為をしてしまうと、詩句が表示されるだけのバッドエンドとなり、ラスボスまでたどり着けない。
さてストーリー・モードは、500年を超える歴史を持つ道場「鳴鏡館(めいきょうかん)」に所属する6人のキャラクターが主人公だ(1名を選択してプレイする)。鳴鏡館は「陰(かげ)」という名の暗殺集団を持っており、陰に所属していた主人公が脱走を試みるというとストーリーになっている。脱走者を始末すべく、陰のメンバーが追っ手として次々と現れるなか、主人公はどう立ち向かうかの選択を迫られる。
「ブシドーブレード」の重要な要素としてフリーランニングを挙げたのは、このストーリー・モードの存在が大きい。対戦要素としてはあまりうまく機能していたとは言いがたいフリーランニングだが、ストーリー・モードでは重要な要素となる。
ストーリー・モードでは相手を倒すと次の刺客が現れ、順に倒していけばボス戦に到達できるのだが、実はこれでは真のエンディングには到達できない。ストーリー・モードの舞台はいくつかのフィールドをつないだ広大な3Dフィールドとなっており(各フィールド間ではロードが発生する)、設定同様に走って逃げ、さらに諸条件を満たすことで真のエンディングに到達できるのだ。
個人的に「フリーランニング」を重要な要素として位置づけるのはこれが主な理由だ。換言すれば「フリーランニング」がないと「ブシドーブレード」らしさが減じる、ということでもある。
「ブシドーブレード」を彩る諸要素
システムが独特な本作だが、このほかにも語りきれないほど特徴的な部分があるので、いくつか列挙しておく。
- 切腹エンディングがある(「This is Bushido.」の台詞あり)
- サブウエポンを投げつけたり、砂や雪を使った目つぶしもできる
- 血は出ないが、攻撃が決まると赤と黄色の飛沫が出る
- 武器は刀以外にもハンマーや薙刀が存在する
- 銃を使う中ボスがおり、しかも一定条件で対戦でも使えるようになる
- 百人斬りを目指すモードがある
- 足を斬られて立てなくなったらSELECTボタンで降参できる(介錯を求めて正座する)
- ストーリー・モードのフィールドに音楽がない
- 上段・中段・下段の構えがある
- フリーランニングを用いずとも、同時期の「バーチャファイター3」や「鉄拳3」同様に画面奥や手前への移動が可能
- パブリッシャーは同年にFF7をリリースしたスクウェア(開発はライトウェイト)
本作は基本的に三人称視点でプレイするが、一人称視点モードも存在している。これは「オウンビュー・モード」と呼ばれるモードでCPUと対戦ができる。2台のPSをケーブルでつなげば「通信対戦モード」でも同様に一人称視点での戦いを楽しめる。私は通信対戦モードをプレイしたことがないが、こちらは専用ステージ「武家屋敷」が用意されているのも特徴だ。
舞台設定の都合で勘違いされやすいが、本作の舞台は現代である。工事現場に置いてある虎模様の柵、コンクリート製の橋脚、学生服を着ているキャラクター辰巳などが特徴的だろう。
なお、本作発売の翌年にあたる1998年には続編「ブシドーブレード弐」が発売された。防御システムの変更や2つの派閥が争うストーリー、二刀流や居合抜きといった戦闘スタイルの追加が主だった特徴だが、キャラクターのイロモノ色が強くなったのも特徴である。また、即死効果を持つサブウエポンが加わったのも大きい。
そして現在の「ブシドーブレード」
本作の魅力は、現在から見ても突出したそのコンセプトにあるだろう。「ブシドーブレード」は今なお独自の魅力を放っているからこそ、その名を耳にするのだ。ただ「今こそ続編を」という声もある一方で、それはまだ叶っていない。
つい最近、「ブシドーブレード」のメインプログラムをつとめた林陽一氏(小森陽一はハンドルネームだそうだ)が、当時の資料をTwitterで公開していた。20年の時を経てこうした資料を見られるのはうれしく、まだ見ていない方もぜひ見てほしいと思う。
ブシドーブレードの記憶がかなり薄くなってたんで押入れから開発資料を発掘してきた。懐かし~ pic.twitter.com/SF9MxJ9RHR — 足痛いキャプテン (@YO1KOMORI) 2017年12月26日
手書きの資料も結構あってなかなか時代を感じる。#ブシドーブレード pic.twitter.com/spBHopF5kw — 足痛いキャプテン (@YO1KOMORI) 2017年12月26日
今回の記事作成にあたり、ゲームアーカイブス版「ブシドーブレード」をPS Vitaでプレイしたが、フリーランニングの操作を続けると手が痛くなるのでボタン配置をカスタムしたほうがいいだろう。そもそも対戦のことも考えるならPS3のほうが向いているはずだ。なお、ゲームアーカイブス版はスクリーンショット撮影に対応していない。
奇しくも「ブシドーブレード」は雪の降る季節が舞台。寒さが厳しくなるこの時期に、あらためて「ブシドーブレード」「ブシドーブレード弐」で熱くなってみてはいかがだろうか。