第21話 白百合の大安売り(Girl's Love Ballad)
「ウオニャアアアアアアアアッ!」
ステージに乱入したシャム。
全裸ではあるが、その右手には担当楽器のリコーダーをしっかりと握っている。
『な、なんだいキミは……?』
思わず質問する黒幸田。
動揺しながらも、その右手には担当楽器のマイクをしっかりと握っている。
「シャムだにゃあ!! 文句あんのかにゃあ?」
シャム、興奮する。
股の締まりが収まらない。
『とりあえず、服を着たまえ! 可憐なキミにも、この水色ブラウスの購入をオススメするよ!』
自らの
そのまま一回転して歌い出す。
『♪オ・ネ・ダ・ン・ナ・ン・ト~』
――ダララララララ~ダンッ!
唐突にドラムロールを決める有間(65)。
わずかな空白、その次の瞬間、ギターのエリィがシャウトを挟む。
「タッタノ8万円デース!!」
「いらねーにゃああああああああっ!!」
シャム、恫喝する。
大口を開け、リコーダーにかじりつく。
「フウウウッ!」
と息をやると、
『
『うわああああっ!?』
鋭角的に吹きつける風が、黒幸田のブラウスを切り裂いた。
まだらに切り裂かれたその隙間からは、純白のスポーツブラがお目見えしている。
『ボ、ボクのお洋服が……!?』
『キャアアアアアアアアアアアアアア黒幸田さまああああああああああああっ!』『ルイたああああああああああああんっ!』『麗しいよおおおおおおおおおおおおおおおっーーーー!』『ルイさまあああああああああああああああっーーーー!』
予期せぬサービスショットに騒ぐ観客。悲鳴にも似た黄色い声援が飛び交う。
「ニャア!? てめーも『ボクっ
シャム、相手の一人称にすかさず反応する。
黒幸田答える。
『あ、ああ……ボクはみんなの王子様だからね。まさかキミも『ボクっ娘』なのかい?』
「そうだにゃあ!! 文句あんのかにゃあ?」
シャム、怒りぎみ。
キャラ被りには厳しい性格である。
『フフ……文句なんかあるわけないさ。ボクは今とってもうれしいよ』
一方、涼しげな
そのマイクにはエコーがかかり始めた。
『なんだか運命的な出会いを感じるよ……もしかするとボクたち、恋人に向いているのかもしれないね』
――タラララン、タラララン……
おもむろにギターを
――ダララララララ~ダンッ!
唐突にドラムロールを決める有間(65)。
わずかな空白、その次の瞬間、黒幸田が髪をかき上げる。
『ねぇ、恋人にならないか?』
『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア黒幸田あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!』『ルイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッーーーーーーーーーー!』『イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
観客、暴れる。
「…………………」
シャム、失禁した。
ステージ上で気を失い、大の字で倒れ込んでいる。
黒幸田たちの作り出したムードに、どっぷり浸かってしまったらしい。
『とってもかわいい寝顔だね……来世の秋までゆっくりお休み』
囁く黒幸田。
エコー、強まる。
人差し指と中指の、二本指でキッスを流す。
「…………………」
無表情で失禁を繰り返すシャム。
それはすなわち、敗北の合図であった。
「あんたら何やってんの!?」
奈緒、一喝する。
ようやくステージへとたどり着いた。
「はあ~疲れた……やっとライブが始められるわね」
舞台に上がるなり、早速腰を下ろすレイ。
ベースを抱きしめて演奏の準備に入る。
「オラオラアアアアッ!!」
舞台のわきで試着室を蹴り倒すグレンG。
幸い、中に人はいなかった。
『おやおや……君たちも恋人になってくれるのかい?』
黒幸田、誘惑する。
三人のほうを向き、妖艶な笑顔で出迎えた。
「は?」
奈緒、反発する。
「間に合ってるんだけど」
レイ、呆れ顔。
「ごめんな。おれたちには、他に好きな人がいるんだ」
グレンG、丁重にことわりを入れる。
――ダララララララ~ダンッ!
唐突にドラムロールを決める有間(65)。
わずかな空白、その次の瞬間、奈緒がギターを振り上げた。
「
ライブ、始まる。
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