第22話 残されていた大きな宿題

「あとは私に任せて下され」

「うん、頼んだ、リーフ様!!」


 ついに、とうとう出会ってしまったハゲ僧侶!

 さあ皆さんご一緒に、せーーーのっ!!


『はーげ! ハーゲ! はーげ! ハーゲ!』


 そう、このゲーム最序盤(スタートマップ除く)でテイク以外に仲間になる、

 孤児院を経営するハゲ僧侶、配信主『おったん』にそっくりなリーフ様だ。

 あっ、ちゃんと『おったん』に許可は取ってます←本当、『僧侶おったん』出していいって。


(いや死んだ俺の異世界で許可も何も無いが)


「私も、ここに居ていいの……?」

「構いませぬ、出来れば孤児院の手伝いをして下されば」

「マリーヌ姉ちゃん……」「うん、クリネのために、頑張るわ」


 やっぱりこの姉弟の声、イイ!

 姉は昔の、初代の声優さんが引退しちゃって、

 いや声優事務所のマネージャーはやってるんだっけ。


(完全に裏方に回ったってやつだ)


 で、配信版の最新声優はあの『あざと系声優』さん、

 んあ~~とか叫ばせたいタイプだ、あと戦車運転しそう。

 悪女の少女役も声からしてバッチリだったなあ、まさに小悪魔女って感じ。


(小悪魔といいながらゲームだと罪の無い人を殺戮しまくりだったなあ、弟のための命令とはいえ)


 まあ、小悪魔教師とかいってどこが小悪魔だ

 本悪魔じゃねえかって漫画も前世にあったし。


「でも、魔法の研究は早く再開したいわ」

「その時はマリーヌ姉ちゃんについていくよ……」


 弟の声は『少年役の声優になりたい』と言っておきながら

 アイドルゲームの人気女性アイドル役でライブでも歌って踊る声優さん、

 ってこれだけだと該当者が五人は居るな、あえて特定は、しない。


(ヒント:楽屋片付け魔)


「さあテイク、一応はテイクの分も寄付はしておいた」

「うん、ありがとう、おいら、おいら……」

「急に戻ったな、さあ、次はどうすれば良い、悪の親玉を倒すんじゃなかったのか」


 ドミニク姐さんに促されるものの、

 俺はテイクのキャラクターで喚き散らす。


「盗賊! おいらの仲間! 倒す! 助ける! 倒して助ける!」


 そう、この孤児院、俺こと元山賊テイクが住んでいたアジトの近くだ、

 飛び出して随分経ったけど、エバレイ姐さんはまだ生きているのだろうか?

 俺の中の少年テイクがやたら心配して俺の中で騒がしい、衝動が抑えきれない。


(だから、やたらテイクのキャラクターが前面に出ているのか)


 これに関してはもちつもたれつ、

 ゲームの世界で悪女ハーレムに溺れて死にたい『土間幸一』と、

 育ての母親を救い出したいゲームキャラ『テイク』が同居している弊害だ。


(いわば俺に課された、最大かつ最重要な宿題みたいなものだ)


 うーん、これが配信だとして、

 リスナーのみんなは夏休みの宿題をいつ終わらせた?

 えっ8月31日だって? 甘い、甘いなあ、みんな甘すぎるよ。


(えっ、7月に終わらせてるのかって? 逆だよ逆!)


 9月1日の始業式直前に教室で終らせるんだよ!!

 だからエバレイ姐さん救出はもっと後、悪女四人が揃ってからで良い、

 土間幸一ならそう思うんだけれども……俺の中のテイク少年が必死に泣き縋っている、気がする。


「助けて! 助けたからこんどは助けて! 助けるって誓ったんだから助けてよ!」「テイク少年、落ち着け」


 ここに来てからアジトが近いせいで落ち着かないでいる。


(うん、俺も言うよ、わかったから落ち着いてくれ)


「テイクちゃん、本当に、本当の山賊アジトの場所を、教えてくれるのね?」

「教えるから! だから助けて! でないと、おいら、おいら……ううっ、ううううう」


 泣くな泣くな! 正月に実家へ帰った時、

 にじ●んじおせちを台所で『二十四時間常温解凍』して寝ている間に、

 両親に見つかって全部喰われても泣かなかった俺だぞ!


(喰った理由が『箸がふたつ付いていたから』って、なんだそりゃ)


 そもそも知らないおせちを勝手に食うか?!

 という、そんな前世の実話はさておき。

 ここはやはりドミニク姐さんが僕を抱きしめながら言う。


「改めて詳しく説明して欲しい、そして、どうなればテイクは嬉しいんだ?」

「エバレイの姐さんを、助け出して、まっとうなお仕事に……旦那のカソン親分は車輪刑で良いから!」

「……随分と珍しい処刑法を知っているのだな」「国でやり方も違うよ!」


 おっ、少し自我が、

 土間幸一の思考が出せた!

 今ならそれなりの作戦を提案できそうだ。


「テイク、ではそのエバレイという女性を助け出せば良いのだな?」

「そうは言っても盗賊側だからね、ボスのカソンとうまく分離させたい、そこでだ」

「……急におっさんが入ってきたな」「おいらに、おまかせー! てへぺろー! ねんごろー! さぶいぼー!」


 さあ、とにかく作戦の立案と決行だ。


「リーフ様!」「何ですかな」「てーつだってーー!!」


 手駒は多ければ多い程、良いからね!


「マリーヌちゃんもー!」

「……いいけど、ひょっとしてキミ、霊に憑依されてるの?」

「こまかいことは、きにしなーい!」


 確かに『土間幸一』という生霊に、

 いや死霊か、憑依されているな、むしろこっちが本体だ。


(そういえば『メイドが本体!』っていうカクヨム小説、途中までしか読んでなかったな……)


 続きが気になるけど、

 今はそれどころじゃないや。


「エバレイ姐さん、待ってて、助けに行くよ!」


 問題は、助けた後にどうするかなんだよなぁ……

 分断の方法を失敗して、後追いとかされたら、たまったもんじゃない。

 テイクくんが。


(……ただ、助けたからって俺の中から完全に消えて貰っては困るぞ)


 それはそれで、後味が悪い。


「おいら、わかったー!」

「テイクくん、何がわかったの……?」


 いっけね、今のは俺の中のテイクの返事だ、多分。


「僧侶リーフ様にも、春が来る!」

「ほう」


 エルフかお婆さん魔法使いだけれどもね!!


(そんな事より、宿題を、片付けましょ)

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なろうの公募用に慌てて五万文字達成させたための更新ですので、

急に当作品が毎日更新になった訳ではありません、あしからず。

でもカクヨムコン用に2月頭くらいまでには10万文字は行きたいかも?

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