第20話 人化はナチュラルに
適当に変幻自在スキルで鱗をポロポロと落とし、自身の爪も抜き取る。
本来はかなりの痛みがある行動だろう……でも俺には怠惰による再生と痛覚遮断があるわけだから特に問題は無い。
そしてある程度集まった俺自身の素材を元に錬成してみる。
まず手持ちを作って、その先に刃を。装飾は……今は要らないな。
所要時間は約数秒。かなり短い時間ではあるが出来上がったのはちょっと粗末なナイフ。
……それも人間が扱うサイズの。なんで俺は龍サイズで武器を作らなかった……?
甚だ疑問ではあるが、とりあえず試すために変幻自在を使って人化をしてみる。
視点がグンッと下がり、なんとも懐かしい視点の高さになったのを確認してから、地面に落ちている先程作ったナイフを手に持ってみる。
……ん? なんか手に鱗が生えてる。うーん、完全な人の姿になるは無理って事だろうか? まぁ、今はいいや。とりあえずナイフの使用感を試してみたい。
近くに生えてた木に向かってナイフで水平に切ってみる。
『ザスッ!』と言う如何にも切りましたと言うような音と共に木に深く切り込みが入り、その切り込みのせいでこちら側に木が倒れてきて──っ!
「……あっぶな」
この世界で初の声を出してしまった。
ちなみに倒れて来た木は咄嗟に出した回し蹴りによって蹴り飛ばしている。んー、やっぱり人間の身体は前世が人間だったお陰で動きやすい。
「うーん、こりゃ酷い……作りが甘いからか?」
木を切り付けたナイフを見てみると、さっきの一撃だけでとんでもない刃こぼれを起こしていた。
切れ味が悪いのもあるが、やっぱり錬成で作った即席の武器なのもあるし、素材が俺の素材オンリーなのも原因だろうか。
やっぱり武器には鉱石も必要か?
「でも武器を作れるのは分かったし、次は収納だな。ほいっと」
適当にナイフを空中に投げ、武器収納スキルを使ってみる。
外皮から約一メートル以内なら収納できるらしいが……うん、問題なく収納する事が出来た。
取り出す事も問題なく出来ており、手元にポンッとナイフを出現させることが出来た。勿論酷い刃こぼれをした状態で……
ナイフの刃こぼれ部分に指を当て、錬成を発動する事で武器の刃の部分を作り直してみると、新品同様の刃こぼれ無しのナイフに戻すことも出来た。メンテナンスはこんな感じですればいいか。
「さてさて、錬成とかも知れたわけだしこの龍武芸百般ってスキルは一体何なんだ? 明らかに俺は知らないスキルだけど」
龍と付いてるから多分龍技と関係があるスキルだとは思うのだが……武芸百般は何処から来たのだろうか。多分元は斧術なんだろうけども、色々統合強化され過ぎじゃないだろうか。
【龍武芸百般】
龍技スキルと武芸百般(武器術+戦闘技)が統合されたスキル。
龍技による爪牙や重鱗を使った戦闘だけでなく、武器や体術を使う戦闘すら行う事が出来る万能なスキル。
「いや……龍技と武器術は分かるけど戦闘技は何処から来たんだよ」
龍技は習得を目指してたし持ってるのは分かる。武器術に関してはまぁ、斧術が派生でもしたのかな~とか、アームズドラゴンって色んな武器使うだろうしなぁって事でまだ理解できる。
ただ戦闘技。お前はマジで何処から来た?
ステータスを見ても明らかに元となるスキルなんて無かった筈だが……気にしても仕方がないという事だろうか。
「まぁでも、なんで俺がナイフを使えるのかはこれで分かったな」
こんなスキルがあるなら、そりゃどんな武器でも使えるだろう。斧術しか持ってなかった俺がナイフだけで木を切り倒せた訳だしな。
倒れて来た木を蹴り飛ばせたのもこのスキルが関係してそうだ。多分格闘術とかもこのスキルには入ってる気がする。
「……ん? ゴブリンか。俺が人間に見えるから近寄ってきたか?」
最近だと龍という事もあってゴブリンは俺を見かけたら逃げるようになってた。
にも関わらず今は俺を見つけたゴブリンがにやけ面をしながら近づいてきていた。
「まっ、丁度いいな」
実は人化するついでに変幻自在スキルで作っておいた俺の鱗製洋服を手斧に錬成し、ゴブリンに向かってぶん投げる。
結果はクリーンヒット。首に突き刺さった手斧によってゴブリンは息途絶え、力なく地面に倒れ伏せることになった。
ゴブリンに近づいて手斧を抜き取り、刃部分を見てみる……うん、そこまで刃こぼれはしてない。さっきのナイフの刃こぼれは硬い木を思いっきり切ったせいかな。
「服を武器に出来るのは良いな……上着も作っておくか」
服の素材は鱗再生とか怠惰の権能による再生で幾らでも生成する事が出来る。変幻自在スキルもあるお陰でシンプルな服なら生成できるのも良い……もし無かったら素っ裸にならないといけない所だった。
作る上着は……コートで良いか。膝位まで丈があるコートなら身体のほぼ全身を守れるしな。
「……シンプルな見た目にしか出来ないな。あと凄い中二病っぽい」
作れたコートはオールブラック。一部嫉妬の力の影響か赤い線も入ってはいるけど、そのせいで余計に中二病っぽい。
……まぁ、今の俺は龍だしな。中二病が想像する存在そのものな訳だし大丈夫だろう。何が大丈夫なのかは知らないが。
「よし、準備も出来た訳だしもうそろそろこの森を出るとしようか。」
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