オレサマ上司・同僚がいる会社に行くのがつらい。オレサマ相手に「負けない!」と頑張るより大切なこと|オレサマのトリセツ #4
「もう限界……」と感じているのに、たった1人のオレサマのために職場やグループ付き合いから離れるというのは悔しいと感じる方も少なくないでしょう。
「オレサマ」=特定の相手や周囲に対して、つねに威圧的で優越的な態度を取る人たち。
職場や家、街中にも……世間に増殖している「オレサマ」に振り回されないためにはどうしたらよいのでしょうか? 精神科医・和田秀樹先生の著書『オレサマのトリセツ』(東京新聞)より一部抜粋してご紹介します。
今回は、“オレサマ”相手に「頑張るよりも大切なこと」について、和田先生の解説をお届けします。
「負けない」と頑張るより「抜けちゃえ」と逃げるが勝ち
どうしても我慢できない、耐えられないというときには、それが可能なら職場に異動を願い出ることも考えてみましょう。あなたが離れてしまえばもう、オレサマは追いかけてきません。じつは過去にも辞めたり休職を願い出た人がいる可能性があります。人手不足の時代ですから、会社も何らかの対策を考えていることがあります。
それが難しい場合は、抜け出すというのも正しい判断になります。たった一人のオレサマのために自分がやってみたいことを諦めるとか、せっかく頑張ろうと思った仕事から離れるというのは悔しいし、「ここで負けちゃダメだ」という気持ちにもなるかもしれませんが、目の前にオレサマがいる限り、みじめな気持ちは続きます。「この人なんかに自分の夢をつぶされたくない」という気持ちになるのもわかりますが、立ち塞がり、大きく見えたオレサマも、もともと被害者意識の膨らんだ弱者の一人でしかないのです。
しかも自分の領分や権利に固執するからあなたを攻撃しているだけです。
ということは、たまたまオレサマの守りたい領地に近づいただけのことで、狭い世界での出来事でしかありません。自分がやってみたいことや力を発揮できる仕事は、オレサマが住む狭い世界の中にしか存在しないわけではありません。
むしろそこから抜け出したときに、本当にやりたいことや自分が試してみたいことを実現できる可能性が広がります。何もたった一人のオレサマのために、自分の大切な人生を犠牲にする必要はないし、可能性を潰す必要もないのです。
もしあなたがオレサマに従順になり、オレサマに合わせて仲良くなれば(そんなことがもしできるなら、ですが)、取りあえず職場は辞めないで済むかもしれません。
でもオレサマはどんなに自分に従順な人間ができても、威圧し続けます。つねに勝つことにこだわり続けるのですから当然のことです。だからあなたがオレサマ以外の人間と少しでも親しくなると「私を裏切った」と思い込みます。たとえば他の部署に尊敬できる人や教えてくれる人ができたような場合です。エンビー型の嫉妬(相手に自分よりいいものがあると、それを潰つぶそうとするタイプの嫉妬)というのは、被害者意識が根本に潜んでいることが多いので、「敵の仲間は敵」と思い込むことが多いのです。
たった一人のオレサマのために、せっかく入った職場やグループを諦めるのは悔しいことです。でも自分の人生の可能性までオレサマに潰されてしまうほうが、もっと悔しいことではないでしょうか。
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※本記事は、『オレサマのトリセツ』著:和田秀樹/東京新聞 より抜粋・再編集して作成しました。