性教育に取り組んできた元東京都立特別支援学校教諭の日暮かをるさんは、都立七生養護学校(現・特別支援学校)に在籍中の2003年に、一部の都議と都教委による激しい攻撃を受けました。
なぜこんなことが起きたのか。日暮さんと考えました。【聞き手・須藤孝】
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とりあげられた教育目標
――激しいバッシングでした。
◆バッシングでは「性教育」だけでなく奪われたものがあります。「都立七生養護学校教育目標」です。2年間話し合って作ったものですが、掲げられたのは03年だけで、翌年からはなくなりました。
「なかまとともに からだをつくる こころをひらく たのしくまなぶ」というものです。
私はバッシングで異動させられましたから、なぜそうなったのか分かりませんが、教育の考え方そのものを奪われたと思っています。
バッシングでは授業の始まりで歌っていた「からだうた」に性器の名前が入っていると攻撃されました。学校のなかでも最初は「歌えない」と言う先生もいました。
何度も議論をして「でも、ないものにはできない」ということになり、取り組み始めると子どもたちが喜んで受け入れ、むしろ求める様子から、先生たちにとっても大事な歌になっていきました。
いろいろな意見があって議論をしながらやっていました。今、そんな学校があるでしょうか。そうした学校のあり方そのものも潰されたと思っています。
――突然のことでした。
◆それまでは七生の性教育は大事な取り組みとして研修会に呼ばれるなど評価されていたのです。
03年7月2日の都議会で突然民主党都議(当時)が取り上げ、その2日後の4日に都議と都教育委員会の職員が学校に来ました。教材や授業記録も勝手に持ち去りました。
「共産主義者か」
――異常なことがいろいろとありました。
◆都議や都教委職員は保健室にも入り込みました。指をけがした子どもが「うっちゃん(保健室の先生)がいじめられている、助けに行かないと」と訴えてきました。
一緒に保健室に行くと、授業に使う人形が下半身途中まで脱がされて並べられていました。
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