YOASOBIインタビュー|WOWOW放送に向け2人で振り返る5年間を詰め込んだドーム公演

YOASOBIが結成5周年を記念して、10月に大阪・京セラドーム大阪、11月に東京・東京ドームで単独公演「YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”」を開催した(参照:YOASOBI東京ドーム単独公演ライブレポート)。WOWOWではこのうち、11月10日の東京ドーム公演2日目の模様が12月28日20:00よりWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信される。

これを記念して音楽ナタリーでは、東京ドーム公演が終わって間もない11月中旬、YOASOBIの2人にインタビューを実施。まだまだ余韻から抜けきらないという2人にドーム公演を終えた感想、衣装や演出に込めたこだわり、今後の活動の意気込みなどを聞いた。

取材・文 / 岸野恵加撮影 / 竹中圭樹

【前編】「YOASOBIの5年間=異変」を表現した演出の数々

私たちの超現実的な体験は続いていく

──東京ドームでの公演を拝見しましたが、演奏や歌唱はもちろん、考え抜かれた演出にも圧倒されました。幕が下りてから約1週間が過ぎましたが、率直に今、どんなお気持ちですか?

Ayase 寂しくてたまらないですね。すごく時間をかけて、魂を込めて作ってきたから。ドーム公演で行った「超現実」の演出をやることはもうないし、作り上げたセットも使われることはない。本当に夢のような時間を過ごさせてもらいました。

──ikuraさんは公演を終えて1週間経ってから、Instagramに思いをじっくりとつづっていましたね。それまでは完全燃焼したあとの余韻の中だったんでしょうか。

ikura 投稿しちゃうと、本当に終わってしまう気がして……いや、終わっているんだけど(笑)、終わったことを認める気がして寂しかったんです。しばらくドーム公演に全集中していたので、「終わっちゃったな……」という感覚が1週間続いていました。今はようやく、次の目標に向けて動き出したところです。

ikura

ikura

──ドーム公演のタイトルは「超現実」でした。この言葉に込めた思いを、改めて教えていただけますか?

Ayase いろんな意味を込めているのですが、1つは言葉そのままに、「現実を超越した刺激的な体験を皆さんにお届けしたい」という思い。そして、YOASOBIの5年間は僕らにとって、現実でありながらもすごく非現実的な日々で。結成して早い段階からこれほどたくさんの方に知ってもらえるとは想像もできなかったし、大変なことはもちろんありながらも、夢のような景色を何度も見させてもらったことも、「超現実」という言葉に重ねています。もともと「超現実」とはシュールレアリスムというアートの概念ですけど、そこに僕らの表現したいこと、YOASOBIの5年間がぴったり合って、タイトルに冠しました。

ikura 実際に公演が終わって、まさに今Ayaseさんが言ってくれたことを表現できたなと感じています。これからもきっと私たちの超現実的な体験は続いていくんですけど、すごくしっくりくるタイトルでした。

1年前に始まったライブの構想、ikuraリクエストの気球も実現

──ライブの演出にはAyaseさんがゼロから関わったそうですね。

Ayase はい。そもそもは「血の通ったライブを作りたい」という思いがあったんです。これまでのYOASOBIのライブは、もちろん僕たちの中に「ライブをしたい」という意欲はありながらも、「今ライブをすることで活動の幅が広がるから」「ライブを求めてくれている方々に応えるために」というように、自分たちの外にある要因を軸に作っていくことが多くて。でも今回の「超現実」は、5周年を記念したものなので、YOASOBIの軌跡をしっかり見せつつ、自分たちの内側から出てくるものを表現する必要が絶対にあると思いました。これまでも演出面に少し関わることはあったけど、今回は自分が最初の段階からしっかり入っていくことに意味があるなと。最初に打ち合わせをしたのは、1年くらい前ですね。

Ayase

Ayase

──そんなにも前から準備を重ねてきたんですね。何を起点に演出を作り上げていったのでしょうか?

Ayase まずはクリエイティブチームをしっかり作るところから動き出しました。僕がクリエイティブディレクターを務めるといっても、演者としての仕事もたくさんあるので、僕が考えたことをよりよいアウトプットに落とし込んでくれる人たちでチームを組む必要があるなと。これまでYOASOBIのミュージックビデオなど、クリエイティブを手がけてくれているNina(Instagram)、ギャラリー「CON_」のディレクターを務める加藤久智(Instagram)さん、アーティストのGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(Instagram)さんに声をかけて、まずは4人で打ち合わせをしましたね。ドームの図面を広げて、やりたいことと現実的に難しいことを検証しつつ、ディスカッションしながら進めていきました。「超現実」に至る前にも仮タイトルがたくさんあったし、YOASOBIにとって5年間がどういうものだったかをチーム内で共有することに、たくさん時間を使いました。

──ikuraさんは演出が決まっていく過程をどう見ていましたか。

ikura これまでと違って、すべてが新しかったですね。すさまじい量のやり取りが交わされて、みんなの熱量があったからこそ「超現実」ができていく過程を横で見ていて、本当に心強かったし、ありがたかったです。Ayaseさんが主体ではあったけど、具体的な演出について話し合う会議からは私も参加させてもらって。「気球に乗ってみたいです!」と無邪気にアイデアを出して、実現してもらいました(笑)。みんなで一緒に作っていく感覚がすごく新鮮でした。

──セットリストはどのように決めていきましたか?

Ayase セトリが決まらないともちろん演出も決められないですが、最初に決めた曲順から何度も変わりましたね。僕らの移動がめちゃめちゃ多いし、これまでやったことがなかった衣装チェンジも含め、物理的にクリアしなきゃいけないことがたくさんあって。実際に通しリハーサルをやってみるともちろん予期せぬことが発生するので、その都度変えていきました。

──よりよいものを目指し続けていたんですね。数曲を連続で歌うパートも多かったですが、ikuraさんは喉や声のコンディションを普段以上に気にかけていたのでは?

ikura そうですね。「これは物理的に不可能」というレベルの曲順だったら私も伝えますが、YOASOBIのクリエイティブのいいところは、とにかくベストなものを1回作ってみることなんです。そこに果敢に挑戦していくikuraであることを心がけているし、自分の技術不足を足枷にしたくない。私の喉への負担などは一旦考えず、“できないことはない”という前提で作り上げてもらうようにしています。今までもそうして、たくさんのライブで素敵な景色を見させてもらいましたから。

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YOASOBIの5年間=異変

2024年12月20日更新