22 後始末の話
衛兵さんにドナドナされた俺たちだったが、結果的にはお説教と厳重注意で無罪、……とはいかないが放免となった。
詰所で事情聴取を受けている最中に、道具屋のおばあさんが「この子たちに依頼をしたのはあたしだよ!」と怒鳴りこんできたのだ。そしたら何故か衛兵たちが顔面蒼白になって大慌て。
詰所の責任者の偉い人が、おばあさんに平身低頭していたんですけど……。
何もんだよ、あのおばあさん。
助かったけど、俺がおばあさんから受けたのは子供たちを危険な場所から追い払う、だったような……。
クエストに踏み込み過ぎたのかね?
あと役人がスケルトン宅跡地から押収した書類で、未曾有の大災害を未然に防いだということになった。
で、お手柄だが、地震被害とか住民の苦情とかが相殺されて、罪が帳消しになったということだ。
後日、無料奉仕というボランティアなクエストをやらされるというのを承諾させられたが。
ただ俺だけはホクマーという神様の神殿へ連れていかれた。
巨大ロボットが翼を生やして天秤を持った白亜の像の前で、城落としのスキルに制約を課せられてしまったのである。
それは『街の中での使用を禁ずる』だ。
うん、まさかあんなもんが降ってくると思わなかったんだ。緊急事態だったからといって街中に落っことすもんじゃねーよな。
やはり、よくわからないものは確認のために、事前に実行することが大事だよな。
はい、反省していますごめんなさい。
「すまん! 無理難題なクエストに巻き込んで悪かった」
釈放されたらアルヘナたちに即陳謝タイムである。
踏み込み過ぎたクエストに失敗してたかと思うとぞっとする。
「いいえ。私たちも得るものがありましたし、ナナシさんが謝ることはありませんわ」
エニフさんが聖母の慈愛のような笑みでもって、俺の頭を上げさせてくれた。
「レベル上がった。アイテムも凄いの取れた」
「スキルも大幅にアップしましたわ! むしろ序盤でこの出来事に出逢えたことは幸運と言えます!」
デネボラさんとアニエラさんも笑顔でフレンド登録をしてくれた。また手伝いに呼んでくれとも。
「色々貴重な体験をさせて頂きましたし、うちのメンバーで兄さんを恨むような人は誰もいませんよ?」
「すまない。ありがとう」
「「「で、あのスキルは何ですか?」」」
あ、やっぱりそこは突っ込まれるのか……。
とは言え母親からペラペラ詳細を喋るのは禁止されている。どうしたものかなぁ?
「見たまんま、としか言えん」
「「えええ~!」」
「駄目ですよ皆。うちの母親、このゲームの運営のお偉いさんですけど。そちらから口止めをされてますので、兄さんがこの件に関して喋ることはありません」
アルヘナの注釈でしぶしぶ詳細を聞くのは諦めてくれた。
それだけではなんなので、キャラメイク時に出現した状況と持ってる奴が俺も含めて3名しかいない、ということだけは伝えておいた。
ちなみに【城落とし】は2レベルになってはいたが、次に使用できるようになるには22時間ほど掛かるようだ。さすがユニークスキル、使い勝手が悪い。
そして釈放された時点でゲーム内では真夜中となっていたので、パーティは解散である。
アルヘナたちはヘーロンとイビスを行ったり来たりしてるんだそうな。
「兄さんはどーするんですか?」
「集めないといけない物があるんで平原に出てくる」
「夜だし危ないわよ!」
「大丈夫だ。レベルアップとスキルアップで【暗視】が取れる。人がいない方が【死霊術】も使えるしな」
スケルトンを倒して3レベルアップに【投擲】と【格闘】が10を越えたことでSPが計6である。
ギリギリ足りる。
よっしゃ! これで夜でも行動可の……
━━━【忍び足】【気配察知】【暗視】【死霊術】を取得したことで、称号【闇を歩む者】を手に入れました。
「グフッ!?」
その場に崩れ落ちた。
「ちょっ!? どうしたんですか兄さん!」
アルヘナが駆け寄ってくるが「大丈夫大丈夫」と言って安心させるんだ。
「ちょっとショッキングなことがあったんだよ」
「その割には目が死んでる」
「やっぱりお休みになられた方がよろしいのでは?」
心配してくれる人がいるというのは嬉しいが、男がそうそう弱みを見せてはならん!
毅然とした態度で振る舞うんだ!
【忍び足】と【気配察知】は昼間に住宅地を歩き回っている時に取れたもの。
あと【観察】というのも取れていた。
なんかビギナーってその手の取得方法が緩くないですかねえ。
【闇を歩む者】は夜間の行動に30%の補正が付くというものだった。
もしかして【闇魔法】だったら夜を~、になって1段階下がってたんじゃないのかね。
ついでにオロシから『毒草多目に頼む』ってメール来てたんだけど、砂漠のせいでついに需要が来たのかな?