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52 義妹の成長が怖い話


 いやあカマキリ人さんは強敵でしたね。


 頭を狙ったんだが、腕に当たったのは偶然ですぜ。

 なのに周囲の皆に「すげーよビギナーさん!」と褒め称えられました。心が痛いいぃっ。


 カマキリ人をインフィニティハートが討伐したことにより強襲イベントは終わりを告げた。10数匹残っていた狼や熊は散り散りに逃げていった。


 直後に起きたプレイヤーや住人入り交じっての大歓声。

 誰も彼もが健闘を称える抱き合い大会に。俺も周囲の兵士やプレイヤーにもみくちゃにされましたとも。街壁の上でやったもんだから、危うく下に落ちるところだったぜ。


 運営からは参加賞として各自に報酬が出た。

 額は1万Gだそうだ。あと討伐数ランキングというのがあって、1位はSP(スキルポイント)5、2位はSP4、3位はSP3、4位~50位はSP1が貰えるんだそうな。


 もちろん俺のところに届いた通知には燦然(さんぜん)と輝く1位の文字。助かったのはランキング表が出ず、個別にそれぞれの順位だけ届いたところだろう。あっぶねー!


 ナイロンに新しい防具とか発注したいところだけど、アルヘナに捕まったのでまた今度だなあ。



「さあ兄さん行きましょう!」

「はあっ?」


 勝利の余韻漂う街中をズリズリと引きずられていってるが何なんだ?


「男なんだからぐだぐだ言うのはみっともないわよ!」


 アニエラさんが呆れた視線を飛ばしてくるが、一緒に歩いているデネボラさんは止めてもくれん。

 俺、何で怒られてんの?


「何処へ行くのかまったく聞いてないんだが?」

「あれ?」


 と呟いたアルヘナの視線はデネボラさんへ。彼女はゆっくりと首を横に振った。

 俺が無言でアルヘナを睨み付ければ、苦笑いのアルヘナとアニエラさんが勢いよく頭を下げて「「ごめんなさい!」」と謝った。視線で会話しねーで理由を言え、理由を!


「いや、今回の分の貸しでリングベアを退治して、ヘーロンまで行かないかなあ、と」

「イベント後で行って大丈夫か? 行ったらリングベアが大挙してお出迎えとかしてやしねえか?」

「イベントはイベントのみよ。ボス戦はまた別だから平気!」


 それはそれ、これはこれ理論か?

 アニエラさんが胸を叩いて「私に任せなさい!」と豪語する。女性に任せてボス戦を眺めているのもどーかと思うんで、俺もやるけどな。


「あー、ちょっとアルヘナ。頼みたいことがあるんだが?」

「うん、なに?」

「リンルフの毛皮が飽和状態でな。冒険者ギルドで売っぱらって来てくんねえ?」


 【城落とし】のドロップ品がインベントリの2枠を圧迫してるんで、ギルド登録をしてるアルヘナに頼んだ。しかし、それまで機嫌の良さそうだった表情が(しお)れた花のようになる。


「いまはダメだと思うわ」

「へ?」


「イベントのせいで換金しようとするプレイヤーが押し掛けてるもの。ギルドの中は大混雑よ! それに同じ依頼に集中してるから取り引きが止まってるかもしれないわ!」

「そっちも飽和状態なんかい!」


 うまく行かないもんだなこういうのは。

 自分でどうにかする(すべ)を学んだ方が早いかもしれんな。また今度図書館通いでもするか。



 アルヘナたちではリンルフとかなどは雑魚のごとく蹴散らしていく。

 うむ、3人だけでも手が余るような有り様だ。


 アニエラさんは盾で防御と攻撃を巧みに使い分ける戦闘法を確立しているようだ。剣と盾で二刀流みたいに見えるんだが……。


 アルヘナは影渡りみたいに死角を突き、暗殺者のような立ち回りで喉笛をかき斬っている。あれでまだ転職(暗殺者)に至ってねえというのだから末恐ろしい。


 デネボラさんはまともかもしれないと思っていたが、その認識は間違いだった。溶岩魔法使ってるよこの人っ!? 火と地魔法の複合2次スキルだと聞いたのに、スキルレベル上がらせるの早っ!

 (ずいぶん後になってからこの情報は間違いだったと分かった。正確には火と地を10レベルに上げてから、クエストを受ければ溶岩魔法を得られるらしい)


「兄さんは最近何してるんですか?」

「掲示板で色々噂されてるらしいが、聞いた話だとあんまり間違ってないな」

「掲示板より実態の方が気になるじゃない!」


 実態ってなんだよ。野性動物の観察か何かと思ってんじゃないのか?


 東の森林街道を歩きながらの会話だけど、緊張感もなにもねえ。

 襲ってくるリンルフやらノジシやらが、俺がろくに手を出すまでもなく瞬殺されていく。


「ええと、まず、人伝(ひとづて)に情報を得ないと行けない隠れ里に行って牛乳を手に入れてー」

「「「隠れ里っ!?」」」


「ダンジョンにいったら地下2階でスライム10数匹になつかれて、何もしないでカエルを駆逐しててなあ」

「「「はああ!?」」」


 改めて指折り数えるとヘンテコなことをやってるよな、俺は。

 いつになったらサバイバルに旅立てるのだろうか。 


 呟きつつ考えていたら、デネボラさんにぐいと引っ張られた。


「興味深い。今度一緒に、ダンジョンに行こう」

「そりゃ構わんが……」


「あああああ! デネボラさん抜け駆けは酷いです! 兄さんは私のものですよ!」

「早い者勝ち」


 おい、俺を挟んで掴み合いをしないでくれ。あと勝手に自分のものにすんな。俺は俺のものだ。

 アニエラさんはニヤニヤしながら「モテるわねえ」とか言わんでくれ。

 どっと疲れるから。


 ようやっと第2の町へ行くことになったよ!

 おかしい、初期プロットではもう行ってるはずだったのに……。

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