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94 異様なメンバーの話


 MP譲渡に関しては1日で終わらないようなので、とりあえずその場はアナイスさん宅を辞して、イビスに向かうことにした。


「孵ったら見せて頂戴ね」

「はい、必ず」


 どうやら前回アナイスさんの所で出た「話し相手」になるクエストの報酬が、孵す時の協力になったようだ。

 1回目のクエストがそのままの形で2回目に引き継がれたみたいだけど。


 さすがに魔女だけあってMPの総量が段違いすぎる。

 俺の3倍をポンと出して揺るぎもしないとは……。


 止まってじっと休息していればじわじわとMPは回復するのだが、もっとゆっくり出来る場所を探そう。

 しかし自分のPTを客観的に見ると、異様なメンバーだなあ。


 まずはアレキサンダー。直径1メートルの赤い玉だ。

 キラキラしているつぶらな瞳が2つある方が正面である。

 攻撃方法は突撃して弾き飛ばすか、取り込んで体内でじわじわと溶かすか、火を吹く。

 火炎放射するスライムとか笑えないぞ。


 そしてシラヒメ。全長は俺の身長くらいに育った白い蜘蛛である。

 攻撃方法は糸を吐く。どうやら口から出るのが攻撃用らしい。

 物凄く鋭利だったり、粘着質だったりと用途は様々である。

 お尻から出る糸が巣を作るのに使うようだ。小さな網を作って投げたり罠にしたりと、とにかく器用な一面をもつ。


 そんでもってグリース。頭頂部までが俺の腰くらいまである灰色のヒヨコである。

 ニシキヘビみたいな蛇の尾がついている。どっちからも食べることが出来るようだ。

 攻撃方法は睨み付けて発動する【腐蝕の視線】と、鋭い蹴爪と尻尾蛇の噛み付きだ。


 現に街道沿いを歩いてたら、襲ってきたフォレストスネークはあっという間に3等分され、3匹のお腹の中である。

 こうなるとドロップ品は落ちないが、今のところ大規模襲撃の時の物が余ってるので別に構わないな。


 ペットが強くなったせいで俺が手を出す暇がなくなってしまった。

 リンルフなんか足元を糸で絡め取られ、飛び上がったアレキサンダーに潰されて、尻尾蛇に噛まれて絶命するコンボである。


 そして3匹に囲まれてくっちゃくっちゃされたら死骸が消える有り様だ。

 どこのホラーだよ! 怖いわ!


 てくてくと歩いてると、ヘーロン行きらしいすれ違うお仲間(プレイヤー)にびっくりされるんだけど、なんでだ?


 「うわ、ビギナーさんだ!?」とか

 「なんちゅーPTか……」とか

 「ひぃっ!?」と目を合わせた瞬間脱兎の如く逃げるのは、何かした覚えはない見知らぬ人なんだけども。


 中にはちっさいアラクネ連れてて、すれ違う時にお辞儀をしてくる人がいる。

 だからといってビギナー教とは決め付けられないんだよな。


 イビスの東門前の平原まで来ると、オンドゥリ待ちをしてるPTが少しはいるようだ。


 タマラビは手を出す者がいないようで、かなりの数が縦横無尽に跳ね回っているけれども。

 久しぶりに道具屋のお婆さんに卸すか。


「アレキサンダー、シラヒメ、グリース。兎の毛玉を集めてくれないかな」


 集め、と言い掛けたところで激スタートダッシュして、3匹が飛び出して行った。

 めっさ早っ!?


 アレキサンダーはぽよんぽよんと跳ねながら進む。

 着地地点にはタマラビがいて、アレキサンダーが通り過ぎるとタマラビは消えているというホラー。


 シラヒメはしゃかしゃかと進みながら、糸をぴゅっぴゅっと吐いていく。

 粘着糸で捕獲したら戻して腹の下に溜め込んでいくというやり方だ。形が残ってるところをみるにまだ生きてはいるようだ。

 あとでアレキサンダーが捕食するパターン?


 グリースに至っては尻尾蛇が片っ端から呑み込んでいってる。

 あれが一番無難なやり方かと思いきや、アレキサンダーやシラヒメが届かない、プレイヤーの影に隠れていたタマラビが突然死してる。

 草原にたむろしているプレイヤーがどよめいてる罠。

 【腐蝕の視線】をあちこちに飛ばすとか器用なことを。


 あっという間に草原からは白いぽわぽわが消え失せて、俺の手元には兎の毛玉が50個以上あるというね。


 ひきつった顔のプレイヤーの視線があちこちから飛んで来る。

 俺の仕業ともいえなくもないが、号令出したから俺のせいだよな、うん。


 イビスに入って道具屋のお婆さんに持って行ったら「久しぶりに来たと思ったらこんなに持ってきて!」と怒られてしまった。


「15は引き取るけど後は自分でなんとかおし!」

 買い取りの代わりに裁縫道具もろもろと幾つかのレシピを貰ってしまった。


 あと「卵持ってるんだろ、ちょいとお寄越し!」といってMPを4分の1を込めてくれた。残りは2分の1だな。

 きちんと頭を下げてお礼を言ったんだけど、「ふん!」といって不機嫌そうな顔で店を追い出された。


 ちょっとゲームに居すぎている。さっさとログアウトして、帰ろう。

 あんまり暗くなると、補導されちまうからな。



 主人公の本日までのステータス。


 名前:ナナシ

 種族:人間

 職業:ビギナーLv.17

 SP:17


 所有スキル:

 【鉄拳Lv.1】(【格闘Lv.50】)【投擲Lv.34】

 【蹴りLv.21】【剣Lv.1】

 【急所攻撃Lv.30】【カウンターLv.32】

 【闘気】

 【死霊術Lv.12】【水魔法Lv.3】【土魔法Lv.1】

 【生活魔法】

 【観察Lv.40】【気配察知Lv.28】

 【忍び足Lv.12】【軽業Lv.25】【隠れるLv.3】

 【水泳】【潜水】【登攀】

 【料理Lv.35】【調合Lv.18】【大工Lv.3】

 【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】

 【毒耐性】【暗視】

 【解体】


 ユニークスキル:【城落としLv.5】


 称号:

 【後先考えぬ者】【スライムの友】【アラクネの友】

 【草を食む者】【闇を歩む者】【強奪者】

 【料理人】【半魚人】

 【ネッツアーの加護】【マルクトの興味】【ゲヴラーの関心】

 【スフィンクスに認められし者】


 ペット

 名前:アレキサンダー

 種族:エルダーレッドスライムLv.4


 名前:シラヒメ

 種族:アラクネ(幼体)Lv.19


 名前:グリース

 種族:コカトリス(雛)Lv.16



 格闘の上位スキル名には無刃様の案を使わせて頂きます。

 ご提案ありがとうございました。



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