25.第二試験でも、目立ってしまう
魔力測定用の、水晶が壊れてしまった。
「ど、どうなってるのだ……? わたしは、まだ魔力を込めてないのに……」
困惑するアメリアさんをよそに……。
「うぉおおお! す、すげえええええええええ!」
わっ! と周りが歓声を上げる。
ああ、しまった。目立ちすぎてしまう。これでは、私が聖女だってバレてしまう……。
「アメリア様すげえええええ!」
………………あれ?
「見たか!? 魔力測定水晶が割れたぞ!?」
「ああ、アメリア様が魔力を込めた瞬間に、ぶっ壊れたな!」
「絶対壊れないで有名な魔力測定水晶を、壊してしまうなんて! さすがは最優の騎士さまだ!」
沸き立つギャラリー達。
『ど、どうやらアメリアさんが水晶を壊したって思ってるみたいですね』
「ふにゃー!」
『【壊したのヤスコじゃないのよっ!】い、いやこっちのほうが都合いいですよぉ』
確かに。
アメリアさんは、最優の騎士として、皆からすでに凄い人と認知されてる。
だから、そこまで目立たない(やったことは凄いことだけど)。
一方、推定五歳児の幼女が、測定水晶を破壊したとなれば、絶対にこいつは何者だとなってしまう。
だから、愛美さんの言うとおり、アメリアさんが水晶を割った、というほうがいい。
「……すまない、コネコちゃん」
アメリアさん、すっごく真面目な人だから、手柄を横取りしたと思って、心を痛めてるようだ。
「……大丈夫でしゅっ。気にしないでくだしゃい」
ということで、水晶を割ったのはアメリアさんって扱いになった。
「にゃうん?」
『【時間差でどうして割れたの?】ですって。た、多分、やすこにゃんが魔力を、測定できる限界ギリギリまで込めたんだと思います』
水晶は、アメリアさんの番になる前に、すでに割れる寸前だった。
そんな状態で、アメリアさんが触れたので、水晶が粉々に砕け散ったという理屈のようだ。
『いずれにしろ、やすこにゃんすごいですぅ。測定用の絶対壊れない水晶を、壊しちゃうなんて』
「しゃー!」
『【やすこはすごいんだから評価しなさいよ!】ですって? だ、だから目立つから……あっ、あっ、猫パンチやめてくださいっ!』
騒ぎが収まり、受付嬢さんが私たちに言う。
「では、アメリアさんの魔力量は測定不能。一方、コネコさんの魔力量は、ゼロ、という結果になりました」
『本当はアメちゃんが測定未実施、やすこにゃんが測定不能って結果だけど、これで良かったとわたしも思います』
私も愛美さんと同意見だ。
「では、次の試験です。会場を移動しましょう」
私とアメリアさん(とギャラリーの人たちwith世紀末さん)がやってきたのは……。
ギルド会館の裏手にある、大きめの訓練場だ。
何体ものカカシが立っている。
『続いておなじみ! 的当て! 絶対に壊れないカカシを壊してしまって、驚かれる! テンプレキタコレですよぉ!』
「ふな!」
『【今度こそヤスコが評価されるターンね!】や、だからそれやると不味いって……あっ、あっ、パンチやめてっ』
受付嬢さんが、第二試験のルールを説明してくれた。
あの離れたところにあるカカシに、魔法や、投石、スキルを使って攻撃するというもの。
「遠くの敵に攻撃を当てられるか、そして威力。その二つをテストさせていただきます」
カカシには魔法が掛かっており、攻撃を当てると、その威力が数値化して、受付嬢さんの持っているタブレット(魔道具)に表示されるようだ。
「カカシは複数本ありますので、アメリアさんとコネコさん、同時試験を実施します」
……さて、どうしよう。
私の遠隔攻撃手段と言えば……。
・ましろの飛爪→強すぎて目立つから×
・能力・金剛力+猪突猛進で投石→山に穴を開ける威力だから×
……駄目だ。どうやっても、目立ってしまう。
かといって、能力不使用で、純粋な五歳児の腕力で石を投げて、あの離れたところに石が当たるだろうか……。
すでに第一試験では、魔力ゼロという最低の結果をたたき出してる。
第二試験まで失敗したら、もうあとがない。冒険者になれない。
『最悪、アメリアさんだけ冒険者になって、や、やすこにゃんは宿でお留守番とかでもよいのでは……?』
友達であるアメリアさんを、そんな奴隷みたいな扱いはできない。
私も冒険者になるんだ。
『で、でもどうします……? ましろ様のお力を使うと強すぎてバレるし、山に穴開けたコンボでやっても強すぎる。他に、遠距離で攻撃する手段ってありましたっけ?』
……ある。そうだ。
大鬼王を倒して、ネコババした能力、【火遁】があるではないか。
『や、やすこにゃん? なんかヤバそうじゃあないですか? 火遁ですよ? 文字からやばさが伝わってこないですかっ?』
~~~~~~
火遁
→口から火を噴き、相手の目をくらませ、そのすきに姿を隠す能力
~~~~~~
大丈夫。ほら、目くらましの能力だから。
相手を倒したり、殺したりする力じゃあないから。
「だから、大丈夫でしゅ!」
『その理屈まずいと思いますよぉ!』
私はアメリアさんを見やる。
こくん、とアメリアさんもうなずく。
「では……いくぞ。はぁ……! 紅蓮刃!」
アメリアさんは剣を上段に構えて、振り下ろす。
私は能力を発動。
頭に、能力の使い方が直接流れ込んでくる。
大きく体をのけぞらし……そして……。
「【火遁】!」
ゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
『うぎゃぁああああああ! かえんほうしゃぁあああああああ!』
……目くらまし、なんてレベルじゃあない。
トンデモナイ量の炎が、噴出されたのだ!
なにが目くらましだっ。
『ややや、やすこにゃん! 急いで火を消して! でないと大火事ですよぉ!』
ど、どうしよう……こんなことなるとは思ってなかったから……。
アメリアさんも呆然としてるし……愛美さんは物理干渉できないし……ああどうすれば……。
そ、そうだ結界で……ああでも、訓練場を結界で包んだら、内側に居る私たちが窒息しちゃうし!
どうすれば……!
「みゃーうっ」
『【どうやらあたしの出番のようねっ】ですってぇ。ましろ様、いったいなにを……』
ましろが魔神の鞄から降りる。
そして……。
くし、くし。
前足で、ましろが自分の顔を……かく。
『え、な、なにのんきに顔なんて洗ってるんですかぁ! そんな状況じゃあない……って、え?【大雨注意】ですって……?』
「雨……?」
一瞬で、空が暗雲に包まれる。
そして……。
ザァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
……大量の雨が、天から降り注いだのだ。
燃え上がった火の手は、今の大雨で、一瞬で鎮火した。
「い、今の……いったい……?」
「みゃ!」
『【猫が顔を洗うと雨、よ!】』
~~~~~~
猫が顔を洗うと雨
→猫神の所持する神スキルの一つ。雨雲を創造し、大雨を降らす
~~~~~~
『こ、天候操作の魔法まで持ってるんですか!? あ、あいたっ』
「ふにゃ!」
『【あんなちゃちな力と比べないで!】そ、そっか。天候を操作するんじゃあなくて、雨雲をゼロから創造し、雨を降らす……より上位のスキルってことですね?』
「にゃう」
……ど、どうやらましろが、神の力で雨を降らしてくれたようだ。
よ、よかったぁ……大火事にならなくて……
『二人とも、すごいですぅ……。で、でも……どうごまかすんですか……?』
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