30.薬草拾いクエスト
『す、すす、すみません! 魔物に等級付けなんて存在したの、し、知りませんでしたっ』
愛美さんが謝ってくる。
彼女が居た時代には、ランク付けってものが無かったのかな……?
「す、すげえ! 単眼悪魔だ!」
「迷宮深部のような、危険な場所に生息する魔物がどうして!?」
ざわつくギャラリー達。
一方で、アメリアさんは言う。
「騎士の任務で、危険な場所へ行ったことがあってな。そのときに、わたしが倒した死骸を、この子に持っていてもらったんだ」
全員が「「「なるほど……」」」と納得したようにうなずく。
「そりゃそうだ」
「Fランカーが、Sランクの魔物なんて倒せるわけねーもんな」
「アメリア様が倒したんだったら、何も不思議なことないな」
「ああ、アメリア様は登録して即Sランカーになったすげえお人だものな」
……ほっ。
良かった。私が怪しまれることはなかった。
『あ、アメたん、まじ優秀な隠れ蓑ですねぇ。あっ、あっ、い、痛いですぅ!』
「ふしゃー!」
『【ヤスコ困らせてんじゃあないわよ!】って、そ、そうですね。す、すみません……あっ、猫パンチやめてっ』
ましろを私がなだめる。
愛美さんとは、生きていた時代が違うんだから、しょうがない。
それにしても、本当にアメリアさんがいて良かったな。
「それで、買い取りをお願いしたいのだが」
アメリアさんがそう言うも、受付嬢さんは申し訳なさそうに頭を下げる。
「申し訳ございません! 買い取れません!」
「「え……!?」」
ど、どういうことだろう……。
「こんな状態のいい、Sランク魔物の死骸、初めて見ました。これを売るとなると、かなりの大金となります」
「状態が良い……? どーゆーことでしゅか?」
受付嬢さんが説明してくれる。
「ランクの高い魔物は強いので、倒すのに時間がかかります。戦闘が長引けば長引くほど、魔物の体にはダメージが入り、素材の状態が悪くなってしまうんです」
なるほど……。
レベルの高い魔物は強いから、魔法一発、剣の一撃で死なない。
何回も攻撃すると、肉や毛皮、爪と言った素材部位がボロボロになってしまい、素材アイテムとしての価値が下がってしまうんだ。
「この単眼悪魔の死骸は、とても状態が良いです。なにせ、首を一発で切断されておりますし。さすがです、アメリアさん」
『ど、どうやらアメリアさんが、首をちょんぱしたって思われてるようですね』
本当はましろがやったことだけども。
当の本人(本猫?)は気にしてない様子。
アメリアさんのことはお気に入りだから、別に手柄をとられても、怒ってないのだろう。
「ランクの高い魔物、しかもこれだけ状態が良いとなると、買い取り金は相当なものになります。辺境の1ギルドでは、支払える額を超えてしまいます……申し訳ありません!」
頭を下げる受付嬢さんに、アメリアさんは「気にしないでおくれ。むしろ、迷惑をかけてしまい申し訳ない」と謝っていた。
……でも、困ったな。
単眼悪魔以外の死骸も、持ってる。
でもそれらも軒並みハイレベルモンスター達だ。しかもましろが倒したので状態が良い。
……全部、買い取ってもらえないだろう。
『ですねぇ……わたしも同じ意見ですぅ。人の多い、王都とかのギルドにいって買い取ってもらいましょう』
いや、できればゲータ・ニィガからは、これで出て行きたい。
『と、なると……マデューカス帝国の帝都カーターですかねえ』
マデューカス帝国とは、ゲータ・ニィガ王国の隣国だ。
そこまで、素材を売るのはお預け。
クエストをこなし、お金を貯めるしかない。
「我々【白猫】は、装備は新調せず、予定通り、この薬草拾いのクエストを受けることにする」
「はい、承知しました。では、薬草の見本はこちらです」
受付嬢さんから薬草一束を貰う。これが薬草。
『ぱっと見じゃ、ただの草にしか見えませんねえ……。しかーし! やすこにゃんなら、余裕のよっちゃんですぅ!』
私にはスキル【鑑定】があるからね。
「では、さっそく出発だ」
「あいっ」「くああ……」
ましろは大きくあくびをする。どうにも興味なさそうだ。
「いってきましゅ!」
世紀末さんに挨拶をしておく。
彼は「がんばれよぉ! ひゃっはー!」と挨拶を返してくれた。
この街の大人冒険者さん達、みんな自分の利益のことしか考えてないし、子供の私を馬鹿にしてくるしで、あんまり好きになれない。
でも……世紀末さんは別だ。いい人だ。
アメリアさんが居なかったら、この人とパーティを組んでいたかもしれない。
『よ、幼女とヒャッハーの組み合わせなんて、事案でしかないですよぉ』
ややあって。
私たちはノォーエツの街の外へとやってきた。
そこから少し歩いた場所に、小規模な森があった。
そこら辺が、薬草の群生地帯らしい(ギルドで聞いた)。
「どれもただの草にしか見えないな」
草原に生える草も、見本で貰った薬草も、ぱっと見で同じにしか見えない。
この中から見分けるのはかなり難しそう……だけど。
「【鑑定】」
鑑定スキルを使うことで、それが普通の草なのか、薬草なのか、直ぐに見分けが付く。
鑑定をすることしばし。
「これが薬草でしゅ!」
薬草を発見して、それを引っこ抜く。そしてアイテムボックスに入れる。
「ありがとう、コネコちゃん。わたしは戦いはできるが、鑑別はさっぱりでな」
『鑑定&アイテムボックス持ちの転生者にとって、薬草クエストなんて子供のお遣いよりもらくな仕事ですよぉう!』
しかし……。
薬草拾い、かなり重労働だ。
しゃがみ込んで、引っこ抜いて、しまう。それをひたすら繰り返す。
鑑定スキルがあるから、必要の無い雑草を引き抜くという手間をスキップできはする。
けど、鑑定スキルを、拾う都度使わないといけない。そこは手間だなって思った。
『なんか上手い手ないですかねぇ』
「上手い手……うーん……」
ん? 待てよ……。
私には、鑑定スキルの他にもアイテムボックスがある。
アイテムボックスには、収納したものを表示する機能があった。
……なるほど。
「ましろたん」
「み?」
なぁに、とましろがこちらに顔を向けてくる。
「飛爪使ってくれましぇんか?」
「ふにゃ!」
ましろが飛ぶ斬撃を放つ。
ズバンッ……! と辺り一面の雑草が、今の一撃で、切断される。
『これじゃ草が、風にふかれて飛んでいってしまいますよぉ』
「大丈夫! 【結界】!」
私たちが立っている場所を中心として、ドーム状の結界を構築。
「このまま、結界の範囲を狭くして……」
ずずず……と結界が狭まっていく。
どんどんと狭まり……最終的には、バスケットボールくらいの大きさになった。
「結界の中には、草がたくさん入っているな」
私たちは結界の外に出てる。
中には、アメリアさんが言うとおり、薬草を含めた草が大量に入っていた。
「あとはこの、草の入った結界ボールを、アイテムボックスにいれましゅ」
アイテムボックスを発動すると、目の前に空間の穴が空く。
アメリアさんがボールを持ち上げて、ぽいっと中に入れる。
「で、あとはアイテムボックスのアイテム一覧を見る」
すると……。
~~~~~~
アイテム一覧
・雑草(×2000)
・薬草(×100)
・
・
・
~~~~~~
と、このとおり、アイテムが雑草と、薬草とで、わけられてるのだ。
で、要らなくなった雑草をアイテムボックスから取りだして捨てる。
『なるほど! これなら、薬草だけを選別して、一気に大量ゲットできるんですね! すごいですぅ!』
「さすがだなコネコちゃん。結界にこんな使い方ができるだなんて」
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