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午前中はずっと狩りを楽しんだ。
うん。
楽しんでましたとも。
こう言っては語弊があるかもしれないが、ラムダくんがいる分、戦闘は楽になるのだ。
オレにしても都合がいい。
負担は目に見えて減っていた。
そうなると今まで使ってこなかった呪文も使ってみたくなる。
魔法も交えて戦闘を重ねていった。
無論、最後にスノーエイプを残してラムダくんに裸絞めのトレーニングもさせながら、である。
いくつもの群れを狩っていくうちにいくつかの技能もレベルアップしていった。
《只今の戦闘勝利で【灼魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【溶魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【光魔法】がレベルアップしました!》
《【光魔法】呪文のイリュージョンを取得しました!》
《【光魔法】呪文のライト・エクスプロージョンを取得しました!》
《只今の戦闘勝利で【身体強化】がレベルアップしました!》
《これまでの行動経験で【耐寒】がレベルアップしました!》
《これまでの行動経験で【識別】がレベルアップしました!》
単に並べるとこうなる。
各種魔法技能の攻撃呪文は出来るだけ均等に使うようにしてみたのだ。
スノーエイプの場合、氷魔法のフリーズ・バレットの効きが悪いようである。
それ以外に色々と傾向も掴めてきている。
フォース・バレット(共通)
グラビティ・バレット(時空魔法)
コンフューズ・ブラスト(光魔法)
ダークネス・ステア(闇魔法)
ファイア・シュート(火魔法)
ウィンド・カッター(風魔法)
ストーン・バレット(土魔法)
ウォーター・ニードル(水魔法)
サーマル・エクスパンション(塵魔法)
ヴォルカニック・シュート(溶魔法)
スチーム・ショット(灼魔法)
サンダー・アロー(雷魔法)
フリーズ・バレット(氷魔法)
ブランチ・アロー(木魔法)
単体攻撃呪文だけでこれだ。
順番に使ってみたんですが、まあ多いよねえ。
正に自業自得なんですがね。
使ってみてようやく実感できた。
使い勝手の良さ、射程の長さ、ダメージの大きさ、一定確率で発生する状態異常。
色々と差別化が図られている。
使い勝手の良さならサーマル・エクスパンション。
射程の長さならウィンド・カッター。
ダメージの大きさでファイア・シュート。
与える状態異常は様々だが、敢えて選ぶならグラビティ・バレット。
そんな感じだ。
だがフォース・バレットは呪文詠唱が非常に短くて済むというメリットもあったりする。
どれが最も優れているのか?
そうなると1つに絞れない。
問題はオレにこれだけの呪文を使い分けることが出来るのか、という事になる。
実際にグラビティ・バレットはオレのお気に入りで結構使いまくってた気がする。
偏ってしまいそうだ。
そして光魔法の呪文も新たに加わっている。
イリュージョンは闘技大会で見た幻影を作る呪文だ。
ライト・エクスプロージョンはコンフューズ・ブラストの全体版である。
全体攻撃呪文も揃ってきている。
益々、混乱してしまいそうだ。
「あ、種族レベルがアップしました」
ラムダくんも急速にレベル上げをしてきているみたいである。
あれだけ魔物を倒しているのだ、当然か。
スノーエイプが仲間を呼ぶのにも慣れてきた。
その傾向も掴めてきている。
数が少なくなってから仲間を呼ぶのか、と思っていたが、どうも違っているようである。
一定の時間を経過すると呼ぶ確率が高いように見える。
そう見えるだけで確定ではないのだが。
さっさと片付ける事を優先すればいいだけだ。
それに今日は昨日ほどに大量の魔物を相手にしなくて済んでいた。
完全に沈静化したとも言い切れないが、普通に戦っていられる。
午後もいい感じで狩りが出来そうだ。
他のプレイヤーも祠からあまり離れないように狩りを進めているようだ。
連戦を避けていけばなんとかなるようだ。
どうにかレベル上げに繋がれば事態は好転する。
あとは他のマップとの行き来ができるようになればいい狩場にだってなるだろう。
一旦、周囲の状況を見回してから祠に戻ることにした。
食事を摂り終え、休憩しながらラムダくんの今日の様子を聞いてみた。
最初は死に戻りもあって、祠にいたプレイヤーも萎縮していたみたいだったが。
ユニオンを組んで一戦してからはそういう事もなくなったようである。
それに複数のパーティが祠の縁で同時に戦闘をしていると、1つのパーティに魔物が集中しなくなったようなのだ。
これが効いたらしい。
祠にいたプレイヤー達が積極的に狩りを始めたようだ。
現在、ここに来ていたパーティは全て昼食を摂るタイミングになって戻ってきている。
ちょっと見回しただけでもパーティの数は10を軽く超えているようだ。
多くなったな、と言うべきか。
総プレイヤーの数に比べて少ないと言うべきか。
あとは今日の予定を確認だ。
今日はエリアポータルに泊まる予定で携帯食も多目に買い込んでいる。
「では午後も午前中の続きですね?」
「そうだな」
昨日は小剣で一通り型はやっているが。
剣はどうしようか?
剣の場合、特に片手剣だとオレの習っている武術とはかなり異なる技術になる筈だ。
小剣ならばどうにか転用はできるだろう。
だがオレが修得したのは飽くまでも刀であって剣ではない。
本来、日本刀は両手を用いて斬る事、突く事を目的とした武器だ。
片手で使えなくもないが、どうしても振り回すだけになりがちになる。
宮本武蔵の如く、片手だけで刀を振って斬るにはかなりの熟練が必要だ。
オレでも無理。
鞭のようにしなやかな手首が絶対に必要。
それでいて打突の瞬間に力を込める必要もある。
この両者を兼ね備えて鍛える所から矛盾が生じるから厄介だ。
握力だけでも、鍛えるほどにしなやかさが失われるのが分かる。
片手のみで斬る技となると、上段から片手で振るように勢いをつける場合がせいぜいなのだ。
日本刀の全てが圧切長谷部のような業物なら振り回すだけでいいのかもしれないが。
これに対して西洋の片手剣は別の理屈で斬る武器になる。
刃の重みで斬る。
いや、潰すとも言い換えていいだろう。
実際、ラムダくんが使っている片手剣も日本刀の刃渡りと比べたら短い。
その代わりに刃の厚みが違う。
同じ技術体系になる筈もない。
果たして参考になるかどうか。
だから見せるだけにした。
木刀を手にしてスノーエイプと戦って見せたのである。
「刀ですか。使ってみたくなりますねえ」
ラムダくんの感想がそれだった。
まあゲームの中のスキルに依存するだけならいいんだが。
プレイヤーズスキル依存となると大変なんてもんじゃない。
つか無茶。
「活かすなら剣のままでいい。片手でも参考に出来ることを身に着けて欲しいから見せた」
「参考、ですか?」
剣を小剣の延長として使うこともできる。
突き技は特にそうだ。
剣を打撃武器として使うことは無論できる。
斬る武器としてはどうだ?
斬り落しはちょっと無謀だ。
だが単純な返し技は覚えておいていいだろう。
理屈は単純。
相手の打ち込みを刀を横にして受けつつ、体全体を左に捌く。
刀をやや下げて打ち込みを受け流していって。
刀を相手に打ち込んでいく。
手首の返しで結構力が要るのだが、ラムダくんであればできるだろう。
今度は木剣に持ち替えて戦って見せた。
さすがにオレの場合は片手では無理なので、両手でやってみせたのだが。
その一撃でサルの頭が割れていた。
「スキルなしでこれですか」
「カウンターで決まったからかな?」
そう答えるが実はそうではない。
返し技なのだ。
薙刀術や杖術にも同様の技がある。
うちの爺様曰く。
鎖骨のあたりに力を込めて逆蜻蛉の構えから撃ち込め。
出来れば重刃とせよ。
返し技らしからぬ教えだが、真面目な話、壊し技のようなものだ。
おっかない。
打つ、ではなく撃つのだ、と何度も聞いている。
オレにしても、半分は出来ていてもう半分は出来ていないといった所だろう。
爺様、不出来な弟子で済まん。
それだけに木刀で見せて本当に良かった。
未熟な所が目立たないからな。
ラムダくんの戦い方が少し変わってきた。
二刀流スタイルを止めたのだ。
片手に剣を持って半身の構えで戦うようにしている。
そして小剣と剣を交互に使って試していた。
いい傾向である。
二刀流とか、プレイヤーズスキル依存でいきなり使いこなされたら逆に怖いよ。
もう幾つ目の群れだっただろうか。
コール・モンスターで呼んではいなかったのだが、ブラックベアの群れに遭遇していた。
無論、倒しはしたが、あまり嬉しくはない。
ラムダくんの裸絞めの相手にならんし。
そう思ってたんですが、ラムダくんはクマ相手にも裸絞めを喰らわせて止めをさしてました。
力技だな。
なんて恐ろしい事をするんだ。
《只今の戦闘勝利で【関節技】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【掴み】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『護鬼』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
護鬼がレベルアップしている。
まあそろそろかな?とは思ってました。
ステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。
もう1点のステータスアップは知力値を指定する。
護鬼 鬼Lv4→Lv5(↑1)
器用値 18
敏捷値 14(↑1)
知力値 11(↑1)
筋力値 18
生命力 18
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
「ギギッ!」
護鬼が一声。
嬉しい声に聞こえないのがなんとも。
だがここで予期せぬ事態が起きた。
ラムダくん、早退です。
いや、この場合は違うのですが。
急用が出来たみたいだ。
「済みません。用事が出来ました」
「用事?」
「PKK職の掲示板情報ですが。ちょっと見過ごせない件が見つかりました」
「ほう」
情報か。
確かに情報は重要だ。
どんなに強くなれたとしても目標を捕捉出来なければ意味がないしな。
情報交換できるPKK職の繋がりも重視すべきだ。
「手伝いも頼まれてます。もしかすると長くここを離れるかも知れません」
「いや。そっちを優先でかまわない」
「ありがとうございます」
仲間との付き合いも大切です。
ぼっちのオレが言うのもアレだけどな。
どうせオレには時間など幾らでもあるのだ。
ラムダくんをリターン・ホームで送ろうか、とも思ったのだが、待ち合わせは夜になるそうである。
今からなら普通に移動して間に合う時間だ。
遠慮しなくていいのに。
まあ強く言うのもオレらしくもないので引いたけどね。
一段落したらメッセージを送るそうなので、そのまま送り出した。
まあ彼ならば魔物の群れに遭遇しても逃げ切る事もできるだろう。
心配あるまい。
時刻は午後4時。
陣容は変えずにコール・モンスターを駆使してスノーエイプを狩っていく。
さすがに周囲にいる魔物は減ってきていた。
どんだけこの周辺の魔物を狩っているのか?
虐殺に等しい。
コール・モンスターで確認できる魔物の群れが目に見えて減っている。
少しだけ祠から離れるように移動して狩りを継続していく。
回復は出来るだけポーションを使ってきているからMPバーも大して減っていない。
大きく貢献しているのはリグの存在だろう。
それにジェリコの硬さにはスノーエイプもブラックベアもなかなか歯が立たないのだ。
壁が2つあるようなものだ。
オレも護鬼も悠々と狩りを続けていた。
《只今の戦闘勝利で【蹴り】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【投げ技】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【時空魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『戦鬼』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
そのまま素手で戦い続けていたらこんな事になってました。
まあ確かに投げてた覚えはあるんだが、関節を極めて折っていた記憶しかないんだが。
それはそれとして。
戦鬼がレベルアップしている。
最近、戦鬼の戦いぶりが気になっていた。
投げを多用していた気がする。
リグと組ませているからダメージがないし、いいんだけどさ。
おっと。
戦鬼のステータスに集中しよう。
ステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。
もう1点のステータスアップは知力値を指定する。
戦鬼 ビーストエイプLv5→Lv6(↑1)
器用値 10
敏捷値 20(↑1)
知力値 6(↑1)
筋力値 25
生命力 25
精神力 5
スキル
打撃 蹴り 投擲 受け 回避 登攀 投げ技
少し早いが祠に戻ってメシにしよう。
本番はこれからだ。
N1W1マップの夜はまだ体験していない。
さて、どうなるのか。
夕食を終えたら昨日のドワーフ戦士が話しかけてきた。
昨日の礼ならもういいんだけど。
「こんばんわ、今日はここに泊まりですかね?」
「ええ。夜の狩りもしてみたいので」
ドワーフ戦士の仲間から『さすがサモナーさんだ』という声が聞こえてくる。
誰がサモナーさんか。
確かにオレはサモナーではあるんだが。
「気を付けた方がいいですよ?やたら足の速いヤギがいますし、正体が分からない奴がいるかもしれない」
「勿論、気を付けますよ」
まあ忠告は有難く受けておこう。
うん。
ブリッツへの対抗策はある。
だが未見の魔物相手となると、陣容は見直した方がいいだろう。
いい機会だ。
召喚モンスターの入れ替えをやっておくか。
リグを帰還させてジーンを召喚する。
ジェリコも帰還させて黒曜を召喚した。
早期警戒と戦闘能力のバランスを考慮しての陣容だ。
さあ、鬼が出るか、蛇が出るか。
こっちにはもう鬼はいるんだけどな!
外はもう暗くなっていた。
西には標高の高い山々が見えている。
日が落ちるのが早いのはそのせいだろう。
急激に寒くも感じる。
なるべく黒曜は上空を飛ぶように指示しておく。
ジーンはやや低空を周回させておいた。
聞いた範囲ではブリッツが出てくるそうだ。
ならば雷撃による攻撃は想定しておくべきだろう。
支援呪文のリストから使いそうな物を幾つかショートカットを作り、視野の端に置く。
レジスト・サンダー、ルート・スネア、ブランチ・バインド、スチーム・ミストだ。
ついでに攻撃魔法のグラビティ・バレット、壁呪文のファイア・ウォールも作っておく。
今まで使わなかったショートカット機能だ。
画面全てを埋める訳にもいかないので、これだけに留めて置く。
使うであろう呪文が分かっているなら手間をかけてみたほうがいいのかもしれない。
まあ使い難いようならやめたらいいだけだ。
さあ来い。
当方の迎撃体制は整った。
祠の縁から離れず、いつでも逃げ込める。
逃げる準備が万端なのかよ!と言うなかれ。
様子見にはこういった手段があってもいい。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv11
職業 サモナー(召喚術師)Lv11
ボーナスポイント残12
セットスキル
杖Lv9 打撃Lv6 蹴りLv7(↑1)関節技Lv6(↑1)投げ技Lv6(↑1)
回避Lv6 受けLv6 召喚魔法Lv11 時空魔法Lv5(↑1)
光魔法Lv6(↑1)風魔法Lv6 土魔法Lv6 水魔法Lv6
火魔法Lv6 闇魔法Lv6 氷魔法Lv4 雷魔法Lv4
木魔法Lv4 塵魔法Lv4 溶魔法Lv4(↑1)灼魔法Lv4(↑1)
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4
連携Lv8 鑑定Lv7 識別Lv8(↑1)看破Lv3 耐寒Lv5(↑1)
掴みLv7(↑1)馬術Lv7 精密操作Lv8 跳躍Lv3
耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv5 解体Lv4
身体強化Lv4(↑1)精神強化Lv4 高速詠唱Lv6
装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2
白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2
野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+
雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を望む者
呪文目録
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv1
残月 ホースLv6
ヘリックス ホークLv6
黒曜 フクロウLv6
ジーン バットLv5
ジェリコ ウッドゴーレムLv5
護鬼 鬼Lv4→Lv5(↑1)
器用値 18
敏捷値 14(↑1)
知力値 11(↑1)
筋力値 18
生命力 18
精神力 11
スキル
弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽
戦鬼 ビーストエイプLv5→Lv6(↑1)
器用値 10
敏捷値 20(↑1)
知力値 6(↑1)
筋力値 25
生命力 25
精神力 5
スキル
打撃 蹴り 投擲 受け 回避 登攀 投げ技
リグ スライムLv4
文楽 ウッドパペットLv3
無明 スケルトンLv2