地球を離れる日。 〜新たな星、碧海へ~
──世界が終わる。
幾筋もの光の軌跡が空を覆い尽くす。
太陽の寿命が約五〇億年だといわれていた。そして、地球の寿命もそれに準ずると。
だがそれは地球に何も起こらなければ、という前提条件のもとに話されていたことを俺は、俺達は失念していた。
「そろそろ行こうか」
『そうですね』
愛機に乗り込みワープゲートに向けて出発した。
□□□
千年前、偶然ワープゲートが発見された。
当時はゲートを通過した先がどうなっているのか全くわからないままに、「先遣隊」という名ばかりの捨て駒達を使ってゲートの先を調べ、何箇所かで行き来できることを発見した。
二百年掛けてワープゲートを装置化したり、ワープした先にある惑星の調査をした。
そして五百年前、地球と似たような環境の星──碧海が見付かると、各国が競うように壮大なる移住計画を立てた。
移住が現実的になると、碧海の土地を巡り数多の争いが起こり始める。
廃れる国、巨大化する国、暴走する国、鎖国体制をとる国など様々な動きを見せた。
日本は島国という利点を活かし鎖国体制をとった。
食料はバイオテクノロジーにより何の問題も無かったのだが、他国の情報が入り辛くなったことにより、様々な技術が独自の進化を遂げた。
鎖国中、日本はAIに人間並みの自律思考を持たせる事に成功し、各種車両、通信端末、視聴端末、小型ロボット、大型ロボット、戦闘機、と様々なものにそのAIを搭載した。
そして、AIは人と共に生きることでさらなる進化を遂げ、現在では一人に一つのAI──バディ制度がとられるようになった。
各国の争いが収束しだした百年前、日本は鎖国を解いた。そこから各国との情報のすり合わせや条約を結んだりと緩やかに緩やかに外に目を向け出した。
そうしてようやく日本も第二の地球、碧海へと移住計画を立て始めた。
国を挙げての移住計画を二十年前から進めていたが、未だに国民は三分の二が地球に残っている状態だ。
そんな中、去年の冬に予想だにしていなかった事が起こった。
火星近くにあったワープゲートに歪みが発生し、ゲートを安定させるための機械を巻き込み、巨大な核爆発を起こした。
それは火星を半分吹き飛ばすほどの威力で、ゲート消失事件と名付けられた。
大量の死者を出したゲート消失事件は、それだけでは終わらなかった。
火星の軌道が変わり、徐々に地球へと近付き始めた。科学者やAIが、半年中に地球に衝突し、地球は消失するだろうと発表したのだ。
□□□
『地球を離れるのは寂しい?』
「どうだろう」
愛機である二十世紀型戦闘機に乗り込み、俺のバディAI──アステラと話す。その間にもゲート消失事件で発生した様々なデブリなどが隕石となって地球に降り注いでいた。
もう数日で急加速している火星がこの星に突っ込む。
『三十年も地球で過ごしていたのにですか?』
「んー、そうだな。アステラがいるから、寂しくないのかもな」
『だから、彼女が出来ないんですよ』
「うるせぇよ!」
ワープゲートを通り、広大なる空の海に身を投げ出す瞬間は、寂寞感などにかられるかと思ったが、アステラのおかげか、せいなのか、ケタケタと笑いながらの通過になった。
『もうすぐ、碧海側のワープゲートに到着します。新しい世界でもよろしくお願いしますね、マスター』
「おぉ。よろしくな、アステラ。お前がいればきっとどんな事があっても、乗り越えられる気がするよ」
『…………だから、彼女が出来ないんですよ』
「うるせぇよ」
―― 終 ――
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