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セヴィオ1

_うう・・なんかすっごいモヤモヤする!あのフォルノスのせいだ!!



与えられた見慣れない部屋に一人、センジュはぽつりと立ち尽くした。


何もすることがない。

いつもの学校もないし、友達にも会えない。

とは言っても友達と呼べるようなクラスメイトは少なかったが。


「みんな学校行ってるんだろうな・・いいな」



センジュ自体は人当たりのいい性格だったが、周りから距離を置かれていた存在だった。

実は不思議な魅力を放っていた事を当の本人は知る由もない。



_もういつもの暮らしが出来ないんだな・・私。



部屋に置かれた大きなクローゼットを開くと、可愛らしいドレスが並んでいた。

きっと魔王の好みそうなものを従者達が用意したのだろう。

カジュアルな服装などひとつも用意されていなかった。



「本当に私・・パパの娘なのかなぁ・・なんだかまた信じられなくなってきた」



優しい笑顔にほだされ一度は信じてみたが、生活に実感が湧くわけもない。

明らかに自分の「普通」ではない状況だ。



「はぁ・・一日目でもう疲れちゃったよ・・」


「よお、お疲れ」



ビクーンッ!!


突然聞こえてきた声にセンジュの体は跳ねあがった。

背後にいつの間にかセヴィオが立っていた。

バルコニーから入ってきた様だ。



「び・・っくり・・した」


「あ、わりわり。ま、ワザとだけど」


「えっと・・セヴィオ・・君?」



ゾゾゾ

とセヴィオの背筋に鳥肌が立った。



「気持ち悪ぃ呼び方はやめろよ。俺もあんたをセンジュって呼ぶから」


「あ・・はい」


「まあ、姫様が良いっていうんなら合わせるけど」


「それはやめて」


「って言うと思った。あ、敬語も無し」



笑いを殺す様にクククと八重歯を見せる。

その態度にセンジュはすぐにしかめっ面になった。

セヴィオの印象は最初から少しも良くない。馬鹿にしに来たのだと思った。



「何しに来たの?」


「はあ?様子見に来てやったんだろ。フォルノスにイジメられた後のあんたを見に」


「べ、別にいじめられてないし・・」



不貞腐れた様子のセンジュにセヴィオは笑いを堪えるのに必死だった。

感情むき出しのセンジュを面白そうに見ている。



「ぶっ・・あの後何もされてない?あいつに」


「え?・・フォルノスに?されてないよ」


「ああ、よく生きてるじゃん。あいつなら本気であんたを殺す可能性あんのに」


「え、やっぱりそうなんだ・・」



センジュの背筋に寒気が走った。



_もう絶対に関わりたくない。怖すぎるし酷すぎる。




セヴィオはそのままベッドに座って話を続けた。


その様子にセンジュは身構える。

人の部屋のベッドになんの断りもなく無断で座るなんて油断大敵だ。



_この人も初対面で酷い事言ってたし。普通の男子と同じに考えちゃ駄目だ。早く帰ってくれないかな。



体を強張らせているセンジュを見つけ、セヴィオは呆れた顔で笑う。

その反応に嫌な予感がしたセンジュはじりじりと後ずさる。

本能が危険を察知している。



「あー、何?警戒態勢ですか?まあ、わからなくもねえけど、な」



セヴィオの腕が伸びたかと思うと、センジュをあっという間に引っ張りベッドへ倒した。



「やっ・・」



恐怖で顔を背けたセンジュを見て、セヴィオの気が高ぶった。



「うーわ。そういう反応、喜ばせるだけってわかんねぇの?あざと。」



その言葉にじんわりと目に涙が浮かんできたセンジュだ。体が小刻みに震えだしたのを感じる。



_なんなのこの人!魔界の人間てホント性格悪すぎる!!人が嫌がってるの楽しんでるなんて!!!




「俺はフォルノスと違って殺そうなんて考えちゃいねえよ」


「手・・離して・・」


「わかったよ」



解放されると思い目を合わせると、セヴィオの鼻がセンジュの鼻とぶつかる距離にあった。



「ちょっ・・んっ・・」


セヴィオの唇がセンジュの唇へと重なった。



「やめっ・・」


「やーだ」



_やだ!!やだやだやだあっ!!私の方が嫌だああ!!



両手はしっかりと頭の上に拘束されびくともしない。

セヴィオのもう片方の手がセンジュの顎を掴んで誘導する。



「んんー!!!」



_やっぱり最低だ!すぐにこういう事するなんて最低だ!!

大っ嫌い!


ぺろり。

とセヴィオは唇を離すと、息をきらしているセンジュの頭を撫でた。



「わりぃわりぃ。度が過ぎた。あんたが子ウサギみたいでつい可愛くて・・うっ」



目を合わせるとぼろぼろと大粒の涙を零すセンジュが見えた。



「き、嫌い・・あなたも・・フォルノスも、あとの二人も・・皆勝手すぎ・・・絶対誰も選ばない・・」



「わりぃって」



セヴィオは頭を掻きながらため息をついた。やりすぎたと反省した。

半分悪ふざけもあったのは認めるが、大粒の涙を見て罪悪感が膨らんだ。

センジュはセヴィオを睨みつける。

一生許さないと言わんばかりの顔だ。



「そんな顔すんなよ。ホントに悪かったって」



セヴィオはセンジュの体を抱きしめた。



「ちょ・・離し・・」



「でも、あんただって」



「私がなに?」



「存在自体がいけねえんだよ」



「な!?」



_何それ!?全然意味わかんないんですけど!?パパの娘だからって事!?



セヴィオは抱きしめたままセンジュの頭をあやすように撫でた。



「割と良い女だってコト」


「はい?」



セヴィオは頬に伝ったセンジュの涙を自分の袖でぬぐった。



「男を喜ばせちまう才能もってんじゃねえ?さっきの色気だってあざとすぎるだろ」



「は、はいい!?」



_色気!?何それ!?皆無なんですけど!!



「あんな風に誘われたら男は喜ぶに決まってる」


「なにそれ!?誘ってないし!!」


「そゆとこな」


「は!?」



初めて言われた言葉にセンジュは戸惑った。理解不能だ。

そもそも学校の男子と話をまともにしたことなどない。

実は男女問わずセンジュは一目おかれた存在だった。

近寄りがたい美しさを秘めているとクラスメイトから崇められていた。

などと、本人は知るわけがない。

故にまともな友達が出来なかった。

自分は遊びにも誘ってもらえない程コミュ障なんだと一歩引いて生きてきたのだ。



「そ、そもそも初対面で私に興味ないって言ってたよね!?」



「ん?・・言ったっけ?そんな事」



セヴィオは無垢な顔で首を傾げている。




_何その顔!とぼけてるの!?本気で忘れてるの!?




「まあ、フォルノスよりは俺の方が良いだろ?殺さねーし」


「だから私は・・」


「四大魔将つっても、力の差ではフォルノスがトップなんだよな。

だからあの人があんたに興味持ったら勝ち目なさそうな気もしたけど」


「はぁ・・」


「マジであんたを殺しかねない目してたし、俺があんたに手を出してもなんの問題はなさそうだしな」




_そういえば私がいると均衡が崩れるって不安になってたな。



センジュの脳裏にフォルノスの顔が浮かんだ瞬間にセヴィオに突かれた。



「あ?今フォルノスに興味持った?」



「え!?持つわけないよ!近づきたくない」



「ふーん。ま、あんたもこれから大変だろうけど。逆に楽しめば?」



「は!?楽しめる訳ないでしょ!」



「あんたがすぐに俺に決めてくれれば、他の2人も諦めがつくし楽できるじゃん」



「ん?」



「はあ?俺の言ってること理解出来ないの?」



「だから何がっ・・ひゃっ」



がぶっ


センジュの頬にセヴィオは噛みついた。

セヴィオの息が耳にかかった。

小さく囁く声がダイレクトに脳に響いた。


「俺、今あんたを口説いてるんだけど?ここまで言わなきゃわかんないわけ?」



「く・・!?」



_口説いてたの!??全然解らなかった・・。



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