さわーっと何かが動いたような気配を感じ、思わず熊の穴に顔を戻した―一瞬、体が硬直し、息が止まった(写真:asante/PIXTA)「赤毛」「銀毛」と呼ばれ恐れられた巨熊、熊撃ち名人と刺し違えて命を奪った手負い熊、アイヌ伝説の老猟師と心通わせた「金毛」、夜な夜な馬の亡き骸を喰いにくる大きな牡熊―――。戦前の日高山脈で実際にあった人間と熊の命がけの闘いを描いた傑作ノンフィクション『羆吼ゆる山』。長きにわたって絶