「年齢なんて気持ち次第」は本当か
「年齢なんて気持ち次第」というのは、聞き飽きた表現かもしれない。
しかし最近の研究結果から、この陳腐な決まり文句が真実であることがわかった。老化に対するわれわれの態度や予想が、体がどれだけ早く老化するかにおいて重要な役割を果たしているというのだ。
つまり、若々しい気持ちを保っている人たちは、自分の老いを強く感じている人たちよりも、強い体と冴えた頭をより長く持っていられるのだ。
言い換えれば、若者のように考えることで、老化の進行を実際に遅らせられるということだ。では、若々しい気持ちとは、どのように保てばよいのだろうか。
若年期の賢さが70代の「若さ」に影響
この問いについては、フランスの研究グループが最近、驚きの答えを見出した。それは「より知的であれ」というものだ。
彼らの新しい研究によると、思春期や若者時代に賢かった人ほど、70代になった時の「主観的年齢」(すなわち、自分がどれだけ若いかと感じるか)が若かったという。知性は老化を遅らせてくれるようだ。
へえ、すごいね。そんな反応が返ってくるかもしれない。若き天才にとっては素晴らしいことだろう。でも、すでに若いとはいえず、そのうえ、平均以上のIQを決して誇ることのできなかった自分たちは、それを聞いていったいどうすればいいのか、と。
科学ジャーナリストのデイヴィッド・ロビンソンが最近、『British Psychological Science』に投稿した興味深い記事では、実はこうした研究結果は、若さを少しでも長く保ち続けるために誰もが試せる方法を示唆していると述べられている。
好奇心が肉体の老化も遅らせる
フランス、モンペリエ大学のヤニック・ステファンが率いるこの研究グループは、「知的な若者」と「老化が遅い老人」という、いくぶん奇妙に思えるこの相関関係を立証した後、その理由を解明しようとした。知的な若者が老化が遅くなる要因は何なのだろうか。
影響を及ぼしていそうな要因はたくさんある。賢い人たちは単に、たとえば健康に関して、より優れた判断をしているのかもしれない。そうなると、因果関係を解きほぐすには、さらなる研究が必要だ。
しかしロビンソンはこう述べる。この研究グループは「どうやら〈経験を積極的に受け入れる姿勢〉が高いことと、より高いIQとの関連が見られ、これが重要なポイントなのではないかという発見もしていた。おそらく、IQが高いと、複雑な情報をより楽に処理できるため、世界に対する好奇心も高まるのではないか。そして、その驚きや興奮といった感覚が、私たちをより若々しい気持ちにしてくれるのだろう」。
少し細かく分析してみよう。
人より賢い人たちは概して、新しい経験もより積極的に受け入れる傾向がある。そして、新しい経験をしたり、世界に対して驚嘆したりすることが、若々しい考え方に結びつく。これはそれほど驚くことでもない。そして、その好奇心と遊び心が、実際に肉体の老化を遅らせているのだろう。
あるいは、はっきり言ってしまえば、子どものように考えることが子どものような気持ちでいる助けとなるということだ。これは「賢い人たちは老化が遅い」という言説に比べれば、そこまで直感に反するものではないし、はるかに有用な説でもある。
新しい経験を積極的に受け入れる姿勢というのは、性格の「主要5特性」のひとつであり、人生を通じて大きく変わることはない。
ただ、性格というのは、実は多くの人が思っているよりも柔軟性のあるものだ。安定や習慣を強く望む人が奔放で無謀な冒険者になることは、おそらくないだろう。
しかし、IQスコアや性格のタイプに関係なく、新しいことをもっと試す姿勢をもったり、新しい考え方に対してオープンであり続けることはできるはずだ。
新しい経験を積極的に受け入れる
今回の研究では、この驚くほどシンプルな干渉が、精神的にだけでなく、肉体的にも若く感じる助けになることが示唆されている。そしてそれは、年を取っても目新しさを求め続けることがもつ、さまざまな恩恵の一部にすぎない。
別の研究では、新しい経験をすればするほど、時がゆっくりと流れるように感じられるということが示されている。つまり、すぐに年月が経ってしまうのが嫌ならば、大事なのは日常から離れ、目新しいものを求めるべしというわけだ。
新しいものに対してオープンであることは、クリエイティブな資質ともっとも密接に関係する性格特性でもある。新しいランチの店を試したり、意外な旅行先を選んだりしても、ピカソになれるわけではない。
しかし、あなたの創造性は高まり、世界を新しい見方で見たり、問題を新しい方法で解決したりするのに役立つはずだ。
では、おさらいしておこう。心を開き、人生に新しい経験をもたらすことを意識的に選択するだけで、老化を遅らせ、時間があっという間に過ぎていくのを防ぎ、創造性を大幅に高めることができる。実に楽しいとまでは言わないが、痛みを伴わない干渉にしては、かなり強力な効果だ。
あなたが、まったく新しい、初めてのものを最後に試したのはいつだろうか。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman/Contributor, Inc.com、翻訳:半井明里/ガリレオ、写真:nuvolanevicata/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.