性能は3倍弱…低温低圧でアンモニア、東京科学大が開発した合成触媒の実力
東京科学大学の服部真史助教と原亨和教授らは、低温低圧で働くアンモニア合成触媒を開発した。性能は工業触媒の3倍弱。アンモニア製造のエネルギー収支は280%以上向上した。最新触媒は1200%以上増幅する見込み。民間に技術移転し、5年内にアンモニア製造を目指す。
鉄にアルミニウム水素化物を担持したヒドリド鉄触媒を開発した。従来研究の希少元素を用いる触媒は重量当たりの性能で工業鉄触媒を上回る値を出してきた。ただ容積当たりの性能では必ずしも勝らない。アンモニア合成プラントでは反応容器の大きさが生産能力を決めるため容積当たりの性能が重要になる。ヒドリド鉄触媒は3倍弱まで向上した。
ヒドリド鉄触媒は赤さびの酸化鉄にアルミニウムを溶かした硝酸水溶液をかけて乾かし、アンモニア合成条件に置くと生成される。一般に水素化物は合成が難しかったが、簡便な方法が確立して実用技術となった。
工業鉄触媒が400度Cで達成する生産量をヒドリド鉄触媒は350度Cで半分の圧力で実現した。高圧を作る電気代を抑えられ、エネルギー収支は280%以上向上する。
すでに民間で量産化研究を進めており、5年内のアンモニア供給を目指す。最新の触媒とプロセス設計などを組み合わせるとエネルギー収支が1200%以上増幅するという。
日刊工業新聞 2025年01月27日