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2輪電池交換、新興国で起業…日系スタートアップが成長モード

2輪電池交換、新興国で起業…日系スタートアップが成長モード

バイクタクシー運転手(マカッサル)

スラバヤ進出、企業の脱炭素需要狙う

インドネシアで電動バイクのバッテリー交換サービス事業を展開するサントモグリーンパワーマネジメント(サントモGPM、山口隼太郎社長)は、6月までに同国第2の都市であるスラバヤに進出する。同国マカッサルに続き、2都市目の営業エリアとなる。統括会社が東邦ガスから資金を調達しており、新興国で起業した日系スタートアップが成長モードに入った。(編集委員・松木喬)

バッテリー交換所。充電が減ると満充電のバッテリーを交換する

バッテリー交換サービスの利用者は、バイクで人を運ぶ「バイクタクシー」の運転手。インドネシアは1億2000万人以上がバイク保有者と言われており、誰でもタクシー営業ができる。しかも、ガソリン車と変わらない価格の電動バイクを現地メーカーが量産している。

サントモGPMは運転手と乗客をマッチングする配車アプリ事業者と組んで事業を展開している。コンビニエンスストアにバッテリー交換所を設置。運転手は充電残量が減るとバイクからバッテリーを抜き、交換所にある充電済みバッテリーと交換してバイクに取り付ける。運転者が支払う使用料はガソリンより安いため、タクシーの収入を増やせる。

山口社長が「意識していなかったユーザーメリット」と驚くのが“時短”だ。同国にはガソリンスタンドが少なく、給油のために1時間も並ぶ。バッテリー交換は数秒で済むため、運転手は営業時間を延ばせるという。

同社が進出を予定するスラバヤでは、企業向けにも挑戦する。照準を定めるのが、事業活動全体の脱炭素化を目指す欧州企業の工場だ。小さな荷物の配送にバイクを使っており、電動化ニーズがあるとみている。

従業員の通勤用バイクもターゲットだ。工場に設置した太陽光パネルの電気で充電すれば、通勤に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を減らせる。スラバヤに多く立地する日系企業の工場も提案先だ。

事業拡大を控え、サントモGPMの統括会社グリーンパワーマネジメント(シンガポール)が第三者割当増資を実施。東邦ガスの出資額は非公表だが、株式を30%保有する第2位の株主となった。

山口社長は「自分たちのビジネスはバッテリーを介したエネルギーの販売。東邦ガスは消費者向けにエネルギーを扱う知見があり、相乗効果を期待できる」とする。ベンチャーキャピタルからの資金調達も選択肢となりそうだが、「社会を変えるビジネスは思い描いた通りに進むとは限らない。長期にわたって連携できる」ことから事業会社からの出資を望んだ。

サントモGPMは豊田通商出身の山口智市氏が設立したサントモ・リソース(東京都千代田区)のグループ企業として、22年11月にジャカルタで創業した。

智市氏と隼太郎氏は同姓だが、親族ではない。隼太郎氏は31歳。日本で就職したが退社し、インドネシアに渡った。世界各地で脱炭素ビジネスが生まれており、日本人も新興国で起業できる。サントモGMPは人材確保が課題となっており、隼太郎氏は「海外で働きたいと思っている日本人に来てほしい」と呼びかける。

日刊工業新聞 2025年02月04日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
東邦ガスからの出資で期待感が分かります。電動バイクや配車アプリといったエコシステムも地元にあり、新興国の脱炭素ビジネスの成長速度を感じました。

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