「今日中に頼むよ」とドサッと資料を置く上司。
えー、いや、抱えている仕事で手が一杯だし、疲れが溜まっているし、今日こそは早く帰ろうと思っていたのに・・・夜食を買いに行くか・・・
あるあるですよねー。で、こんなムチャぶりをされたときに、一番マズイ対応は、「わかりました・・・」という安請け合いからの結果、できないというもの。
例えどんだけ理不尽で急であっても、それが業務であり「引き受けてしまった」のであればそれは遂行しなければいけません。
「ムチャぶりしておいてそんな!?」と腹を立てる人もいるでしょう。
が、上司からすれば『引き受けたんだから他の人に頼むなり自力でなんとかするなりしてやれよ』って話なわけです。
そんなことを言われるなら、もういっそ断ってしまいましょう。できれば、スマートに。
目次
■単純に拒否してしまうのは当然タブー
ただ、「ムリです」と単純に断ってしまうのは当然NG。飲み会のお誘いくらいならハッキリ断るのもありですが、仕事ではオススメできません。最悪、「使えないヤツ認定」されてしまいます。
何も断れない人も問題ですが、義務でも何でも断ってしまう人も、極端で問題でしょう。
では、どうすれば良いのでしょうか。
■評価を落とさず断る原則「断る」+「代替案」
要するに依頼者(上司)の言うままに引き受けられないなら、引き受けられる条件(代替案)を提示すればいいのです。
具体的にはこんな感じ
上司「今日中に頼むよ」
⇒ A「概略だけで良ければできますがどうです?」(条件の引き下げ)
⇒ B「今のこの仕事を後回しで良ければできますが」(代替条件の提示)
⇒ C「○○さんにも手伝ってもらって良ければできそうですが」(代替要因の提示)
「ムリ」と後ろ向きになるのではなく、どれも前向きに、できるための条件を考えていますね。
今の仕事で手一杯なのに、もっと仕事を持ってくるということは、需要と供給のバランスが崩れているのです。
そんなときは、同じように需要が高いのに、なぜかうまく回っているものを見て、真似する方法が有効です。
■ディズニーランドにみる代替案提示の上手な見せ方
多くの方に経験があると思いますが、ディズニーランドは『断りと代替案の提示』をものすごく上手くやっています。
「すぐにアトラクションに乗りたい!」
「今日中に10個のアトラクションに乗ってショーを2つ見たい!」
というゲスト(来訪者)からの需要を断って
「それはできない。2時間並べ」
「4つでガマンしてください」
こんな感じの(見方によってはかなり傲慢な)代替案を出しているのです。
それでも、「○○乗るのに2時間も待ってさー;」と嘆いていた人を何度も来訪させてしまう人気はどう維持されているんでしょう?そこに、ヒントが有るはずです。
■オトナ対処1.達成までの待ち時間を開示する
「今抱えている仕事がこんな感じなので、明日なら。」
待たされるのは苦痛ですが、情報開示があると苦痛が和らぎます。
最初から「3時間待ち」と言われて並ぶ人は、それなりの覚悟ができているでしょう。しかも、途中で「ここから1時間」と残り時間が表示されたなら…どうでしょう?
今がどういう状態で、あとどれくらい待てばいいのか?それが分かることで、断られても納得されやすくなるんです。
仕事で言えば、抱えている仕事の情報を開示して、上司に待ってもらうよう頼んでみる方法ですね。
■オトナ対処2.代替となる選択肢を提示する
「私が思いつく選択肢は○○と○○くらいなのですが、他に解決方法がありますか?」
ディズニーランドは利用者が殺到すると入場制限を行います。アトラクションの行列に並ぶという前に、そもそも園内に入れなくなるわけです。
さて、そんな無慈悲な条件をユーザーにつきつける入場制限の看板にはどのように書かれているんでしょう?
それは・・・ディズニーシーなら入れるよ!近くのイクスピアリで買い物ならできるよ!といった内容。つまり「他の選択肢の提示」なんです。
入場できないものは仕方がない。他の方法は何なのかを示し、未来に目を向けさせるのです。
仕事で言えば、いまの状態で思いつく解決方法を上司に伝えてみる。といったところでしょうか。
優先度を変えれば対応できるのか、期限を延ばせば対応できるのか、応援があれば対応できるのか、そのあたりの解決方法を伝え、未来に目を向けてもらいましょう。
■オトナ対処3.相手の仕事を把握し計画的に動かす
「全体像を確認させてもらえますか?」
ディズニーランドでは行列の待ち時間を減らすために「ファストパス」を用意しています。人気アトラクションではそれこそ開場直後からファストパスが発行され、指定された時間帯に行くことでそれほど待たずに乗れる・・・というものなんですが。
実はこのファストパス、混んでいる日には早い段階でなくなってしまうため、有効に使うためには利用者側が「どこに普通に並び、どこでファストパスを取ってどう動くか?」という計画を立てて動かなければならないんです。
言い方を変えると、「利用者による計画的な動きを促進するためにファストパスがある」とも言えますね。
仕事でも計画は大事。
ムチャぶりをしてくる上司の中には計画性がない人も多く、そんな上司の下で働くと何度も何度もムチャぶりを食らう可能性があります。
これを避けるには、仕事ごとに全体像を確認させてもらい、計画的に仕事を振ってくるような仕組みを作ることが大事。仕事の管理表を作り、秘書のような活動ができれば、ムチャぶりをされることも少なくなるでしょう。
■オトナ対処4.事前にムチャぶりを予測し余裕部分を使う
「そう来ると思っていましたよ」
ディズニーランドの開場時間は日によって8時だったり9時だったりと変わります。混雑が予測される時期は、通常時より早かったり。
少しでも混雑を緩和させるために、いつもは休んでいる時間帯を使うわけです。
上司のムチャぶりの原因が、その性格や仕事のやり方にあるのであれば、今後も同様の事態が続くことが予想されます。
予期せぬムチャぶりに対応できるようにするためには、あらかじめスケジュールに余裕を持たせておき、その部分を使うのが望ましいです。
ムチャぶりが来たら「思ったとおりですよ」「そろそろ来ると思っていましたよ」と余裕を持って対応できたら…いいですね。
■オトナ対処5.見返りを ”それとなく” 要求する
「厳しいですけど・・・今回だけは何とか頑張ります」
ディズニーランドのファストパスは、お金で買えません。
計画して朝早くから動かないともらえません。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、お金で買えるのに、夢の国では、お金で解決することができないのです。
と思いきや、ディズニーランドでも金やコネで解決できることは結構あります。
ディズニーランドでは、そもそも入場するにも大行列です。開場時刻に行っても、すぐに入場はできません。ということは、「開いたらダッシュでファストパスを取って、何時にアトラクションに並んで・・・」という計画が全て水の泡になりかねないわけです。
が、実はディズニーホテルに宿泊した人は、開場の15分前に入場できるたりするんです。お金を払って前泊すれば、良いスタートが切れる。と言い切ってしまっては夢の国に怒られそうですが、事実そうなっているんですよ。
さらに通常2~3時間待たされる「ミッキーの家とミートミッキー」についても、ディズニーアンバサダーホテルに宿泊し朝食を「シェフ・ミッキー」というレストランで取ると、席をミッキーが回ってくれたり・・・。
「あの3時間は何だったんだ」と思わずにはいられません。写真も撮れるし、サインをもらえることもあるようです。
そして、一般には知られていませんが実はもっと思いっきりふりきったプランも実は存在しています。『スポンサーラウンジ』です。
カンタンな話、各アトラクションのスポンサー企業から招待を受ければ、専用のラウンジでゆったり飲みものを飲みながらファストパスの列よりも優先して、全く待たずに乗ることができたり、ショーをいい場所で見ることができたり・・・といった具合です。
夢の国と言えども、金やコネの見返りがあると、優先度が上がるのです。
でも・・・そんなこと『一切感じさせない』ですよね?
この「それとなく要求される見返り」がポイント。
仕事で上司のムチャぶりを受け、どうしてもムリして対応しなければならないときは、せっかくですから、恩を着せましょう。
「厳しいですけど・・・今回 ”だけ” は何とか頑張ります」
忘れた頃に見返りがある ”かも” しれません。
■まとめ
ムチャぶりに苦しんだら、ディズニーランドを思い出して楽しい気持ちになろう。みんなディズニーモードで楽しそうに仕事してたら、職場も楽しくなるよ、きっと。
P.S.
断る際に代替案を出す方法は、書籍『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』でも取り上げています。ぜひチェックしてみてくださいね。
著者:石井琢磨
『めんどうな人をサラリとかわしテキトーにつき合う55の方法』著者。弁護士。幼少時から家族が次々と壺を買わされるという、ダマされ環境で育つ。偏差値35から中央大学法学部に合格。在学中に司法試験一発合格、消費者事件を中心に活動中。
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