ついに「香川県民お断り」のサービスが現れ「こうするしかない」「差別を助長するのでは」と賛否 運営者に意図を聞いた

4月1日から施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例」への対策として。

» 2020年04月02日 20時45分 公開
[池谷勇人ねとらぼ]

 テーブルトークRPG(TRPG)を離れた人と遊べるサービスどどんとふの公式サーバが、4月1日から香川県民の利用を原則「お断り」する方針を打ち出しました。現状ではトップページにアクセスすると香川県民かどうかの質問が表示され、香川県民はアクセスできないようになっています。


どどんとふ 香川県民お断り サイトにアクセスすると表示されるトップページ

 言うまでもなく、4月1日から施行された、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」(関連記事)への対策として実装されたもの。ネット上では「素晴らしいリスクマネジメント」「実際こうするしかない」といった声もあがる一方で、「香川県民への差別を助長するのではないか」と懸念する声もみられます。

 なぜこのような対応に至ったのか、サーバ運営者に話を聞きました。



この条例を「事業者は守りようがない」

 「どどんとふ」は“たいたい竹流”@torgtaitai)さんが開発した、TRPGをオンラインで遊ぶための補助ツール。離れた相手とTRPGをプレイするためのさまざまな機能が網羅されており、TRPGユーザーの間ではよく知られたツールでした。今回「香川県民お断り」の方針を打ち出した「どどんとふ公式鯖」は、たいたい竹流さん公認のもと、「どどんとふ」を誰でも手軽に利用できるよう有志が運営・公開しているサイトの一つです(ツール作者と公式サーバ運営者は別人なので注意)。


―― なぜこのような対応に?

サーバ運営者:条例そのものの問題やそれが可決されるまでのプロセスに大きな問題があると感じ、この条例の異常さを広く知ってもらうための問題提起としてこのような対応をいたしました。ただ、実際には香川県の方も「知ったこっちゃない」を選択すれば今までと何も変わらず利用できますので、排斥するような意図はありません。

 もう一つの理由は、条例を根拠にした訴訟やクレームに対して「うちは『遵守できないしするつもりもない』って書いてあるのに使っておいて何を言ってるんだ」と返すための予防線を張ることです。意味があるかどうかは分かりませんが、コインハイブの摘発事例のように、利用者の同意を事前に取ったかどうかを争点にされないようにするためです。


どどんとふ 香川県民お断り 知ったこっちゃないを選べば普通にサイトにアクセスできる

―― 「香川県民お断り」以外の選択肢はなかったのでしょうか。

サーバ運営者:他に検討した選択肢は「他のほとんどのゲーム提供サービスと同様に、無視して今まで通り何もしない」だけです。

 「位置情報やIPアドレスなどから、香川県からの接続かどうかを確認してプレイ時間の制限などを実施する」という対応については、(どどんとふ公式鯖では)位置情報も接続元IPアドレスも取得していませんし、誤判定や不具合が発生する可能性もあります。どどんとふ以外にも複数のTRPGを楽しむためのツールを提供していますので、それら全てを問題の条例に対応するには、開発・維持のためのスキルや時間的・金銭的リソースもないため現実的には不可能です。

―― 実装後はどんな反応がありましたか。

サーバ運営者:条例を問題だと感じている方からは、この対応は致し方ないという肯定的なコメントをいただいています。一方では、香川県民への差別行為やヘイトだとか、やりすぎではないかというコメントもTwitterなどでは見かけました。

 リリース当初は香川県民を選択すると「丸亀製麺」さんのサイトに飛ばすという皮肉(※)をしていましたが、実際に抗議活動をしている香川県民の方からの指摘や、丸亀製麺さんに迷惑を掛けてしまうのは本意ではないので、単純に戻るだけにすぐ変更いたしました。これはちょっと悪ふざけがすぎたと思っています。

※編注:実は丸亀製麺は香川県や丸亀市とは関係のない会社で、ネット上では香川県への“やゆ”として名前が使われることがある

―― 今回の条例についてどう思いますか。

サーバ運営者:既に反対意見をコメントされている多くの方とほぼ同意見ですが、付け加えるとしたら「具体的な対応方法の提示がない」という点で、この条例を「事業者は守りようがない」というということです。

 パブコメで抗議すべきという声もありましたが、募集しているという情報を入手した時点で既に締め切りまで1日を切っていたことや、香川県民でもなく事業者でもないと思い、送ることはしませんでした。個人の運営者でも送れるという情報を前もって知っていて、かつ締め切りまで十分な時間があれば送っていたと思います。


ツール作者も取り組みには賛同

 また、ツール製作者である“たいたい竹流”さんにも、今回の公式サーバの取り組みについて聞いてみました。なお、公式サーバ運営者とたいたい竹流さんは大学からの友人とのこと。


―― 今回の公式サーバの取り組みについて、たいたい竹流さんはご存じでしたか。

たいたい竹流:冗談混じりに(運営者と)話してはいましたが、実施するかどうかまでは知りませんでした。

―― 実際に行われたのを見てどう感じましたか?

たいたい竹流:自由で良いと思いました。全ての活動は自由であるべきというのが私の持論ですので。またこの件については批判もあるようですが、それらは香川県議会にこそ向けられるべきものだとも思っています。

―― 今回の条例についてどう思いますか。

たいたい竹流:自分たちが不慣れで縁遠い物を忌避するのは自由ですが、それを子どもたちに押し付けるのはあまりにも抑圧が過ぎると考えています。真に子どものことを思うのであれば、個々人の自由を尊重すべきではないでしょうか。


「恣意的な運用」を避けるにはこれしかない?

 今回「お断り」の根拠とされているのは、条例の第7条および第11条。いずれも関連する“事業者”の責務を定めたもので、第7条では「県や市町が実施するネット・ゲーム依存症対策に協力する」こと、第11条では「県民がネット・ゲーム依存症に陥らないよう、自主規制など必要な対策を実施する」ことをそれぞれ定めています。


どどんとふ 香川県民お断り 今回の根拠とされている条例第7条

どどんとふ 香川県民お断り 同じく第11条

 しかし、事業者が具体的にとるべき“対策”の内容が条文では示されておらず、また対象が県外の事業者(ゲーム会社だけでなく、インターネットを通じて情報を提供する事業者全般も含まれる)にも及ぶことから、「恣意的な運用をされる恐れがある」「厳密に守ろうとするなら香川県民の利用を全てシャットアウトするしかない」など、素案の段階から今回のような対応を予想する声が多くあがっていました。


※4月3日0時55分追記:当初「コインハイブによる不正アクセス禁止法による摘発事例」と書いていましたが、同案件は「不正指令電磁的記録に関する罪(通称ウイルス罪)」による摘発でした。お詫びして訂正します




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」