ドミノ・ピザ、大量の唐辛子ピザ配達騒動 キャンペーン多発による疲弊が背景か 店員「サービス残業頻発。現場は反対やイラつきの声」(1/4 ページ)

注文者と現役クルーに取材しました。

» 2022年10月25日 10時00分 公開
[上代瑠偉ねとらぼ]

 大量の激辛ハラピニオ(緑色の唐辛子)をのせたピザを配達したとして、物議を醸したドミノ・ピザ(関連記事)。このような騒動が起きた背景には、人手不足やキャンペーンの多発による現場の疲弊があるとみられることが、ねとらぼ編集部の取材で明らかになってきました。

 今回の騒動が注目されたのは、10月2日にSNS上に投稿された、全体に激辛ハラピニオがちりばめられたピザの写真がきっかけでした。投稿者が「ドミノピザ注文したらサイズ間違えてたから電話したら作り直しますって言われて配達されたのがこれ、嫌がらせ?」という言葉とともに写真を投稿したところ、投稿は瞬く間に拡散されました。

 ねとらぼ編集部では、投稿者および、運営元のドミノ・ピザ双方に取材し、翌日の10月3日に騒動についての記事を掲載しています。記事内では、投稿者が店舗の担当者から謝罪と返金を受け、ドミノ・ピザに対してこれ以上の社会的措置は不要と考えていることなどから、現在両者は和解にいたったと報じました。

 一方で、今回の騒動が和解にいたったことは認めつつも、学生時代にドミノ・ピザ店舗でアルバイトを経験したことがある注文者(投稿者の友人)は、「このような問題が発生し得る店舗の労働環境を問題視してほしい」と訴えています。労働環境の問題とはどのようなものなのか。

 注文者がドミノ・ピザに勤めていたのは約10年前であり、その主張の真意を確かめる必要があると考え、ねとらぼ編集部では注文者に加え、現役クルーにも取材しました(※)。

※現役クルーは本人が匿名を希望していること、また今後の店舗での継続的な労働に影響が生じる可能性を鑑み、記事内ではAさんと記載しています

ドミノ・ピザの元クルーである注文者の主張

 注文者の主な主張は、今回の騒動が起きた背景には(1)店舗の人手不足と、(2)度重なるキャンペーンによる店舗への大きな負担があったのではあったのではないか、というものです。

(1)店舗の人手不足「社員の“サービス残業”をよく見かけた」

 注文者はその時間帯の最高責任者かつ、ピザを作った社員(※)を非難するつもりはないことを強調。その後の返品・謝罪のやり取りをするなかで、担当者が経験不足であると感じられたこと、「実は僕が辛いのが好きなので、お待たせしちゃったので入れ過ぎちゃいました」と話していたことなどから、担当者には悪意がないことがあらゆる面で感じ取れたとしています。

※ドミノ・ピザでは営業時間中は必ず、マネージャー、社員、AMIT(アルバイトの責任者)の誰かが勤務する決まりです

 一方で注文者が問題視しているのは、深夜帯とはいえ、人手不足の影響で店舗の運営体制が不十分だったと考えられることです。店舗ではその時間帯の最高責任者と、カットのトレーニングを受けたクルーが基準に基づき、出来あがったピザを採点する決まりです(※)。しかし、経験不足の社員がその時間帯の最高責任者を務めざるを得なかったため、そのようなストッパーが十分に機能していなかったのではないかと、注文者は指摘しています。

※ドミノ・ピザでは、調理担当者はメイクラインモニターに表示されたオーダーを確認し、メイク台に材料をセットして、注文商品、トッピングの有無などを確認しつつピザを作ります。オーブンに入れる際にはメイクラインモニターを参照しながら、「何を何分で作った」と声に出して読み上げて確認する、というルールもあります

 注文者が勤めていた約10年前から、すでに人手不足はあったようで、「私が働いていたころは『人件費が上がる』と本部からお叱りを受けるため、社員がタイムカードを切ってから働く様子をよく見かけました」と、当時は“サービス残業”が横行していたことも明かしました。

(2)度重なるキャンペーン「士気が下がるのは容易に想像がつく」

 注文者は度重なるキャンペーンについて、「当時(約10年前)から『持ち帰りで1枚買うと、もう1枚無料になる』といったキャンペーンを実施していたと記憶しています。最近、同じような『1枚買うと2枚無料』キャンペーンを実施して、(1度目は)ピザの生地とピザボックスを切らして一部の店舗でオーダーストップという事態が起きていましたよね」と言及。

 実際、同キャンペーンでは、6月末から7月初までに実施した1度目の際、「Lサイズのプレーンピザを頼めば2000円でピザ3枚が手に入る」という裏技がSNS上で拡散し、注文が殺到。ピザの生地とピザボックスの供給が追いつかない状況になり、一部店舗で注文を受け付け停止する事態となりました。当時、「週刊文春」は現場が疲弊しており、従業員用SNSには「ドミノそろそろ誰か死んじゃいそう」という言葉も書き込まれたと報じています。

 7月末に実施した2度目のキャンペーンでは、全店舗でのクルー増員、スポーツドリンクと塩あめを配給するなど十分な体制を整えるとしていたものの、「コロナ第7波の急拡大の影響で、急なクルーの欠員が出てしまう店舗もあり、人員体制がより厳しい状況」になったとして、ドミノ・ピザはキャンペーン終了後に反省の意を示しました。

 注文者はこのような流れを踏まえ、「(2度目は)1番ユーザーに評価された店舗には1日の特別有給休暇(法定外有給休暇)がありましたが、それ以外の店舗は本部のせいで忙しくなっても特に見返りはなく、アルバイトも社員も士気が下がるのは容易に想像がつきます」と、今回ピザを作った社員を含む現役クルーたちに同情の声を漏らしています。

 最後に注文者にドミノ・ピザへの思いを聞いたところ、「宅配ピザはここ10年ほぼドミノ・ピザしか頼んでおらず、企業としては好きです。すでに(店舗やドミノ・ピザから)謝罪・返金は受けているので、店舗名や担当者名を“晒す”気もなければ、本部から店員を叱ってほしいわけでもありません。ただ、店舗の労働環境を改善してあげてほしいです」と訴えました。

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