マウスポインタ操作にも焦点をあてた for me なキーボード "kokken72" の話
こんにちは。
こちらはキーボード #2 Advent Calendar 2024の4日目の記事です。
kokken72
夏ごろから制作をつづけていたキーボードが、この11月末に(ちょうど)完成しました。
こちらがそのキーボード、"kokken72"です。
トラックボールと妙な親指クラスタ、なんかめっちゃ多い通信線がぱっと目に入るかと思います。
自分の希望に合ったキーボードを、自分で作りたい……! という経緯で、習作を経てやっと完成したのがこちらのkokken72です。
私のこだわりが詰まったキーボードとなっていますので、今回はそのこだわりの部分について書こうかと思います。
こだわり
基本要素
完全に私の好みになってしまいますが、「カラムスタッガード(縦ズレのキー配置)であること」「矢印キーを置けること」「左右分割型であること」。
基本的な部分は、これを以て設計されています。
立体親指クラスタ
親指キーを左右4キーずつ用意し、箱を展開したような形に配置しています。
これにより親指キーを増やすことに加え、親指キーの「同時押し」も容易になっています。
片手の親指一本でLower・Upper・Adjustみたいなこともできます。
モデリング・イラストソフト・ゲームなどで片手用デバイスとして使うことが多い私にとっては、Shift・Ctrlやレイヤキーを増やせる上に「片手で遷移できるレイヤが多い」こともメリットです。
さらに親指クラスタは、横方向に20mmほどの範囲で位置調整ができるようにしています。
また、手のひら側の親指キーの角度は120°にしていますが、90°に変更することもできます。
アシンメトリーな物理配列
モデリング・ゲームなどの用途で使うとき、数字行があると便利なことが多々あります。(Blenderの点辺面の切り替えなど……)
ただ、なるべく小さくはしたい…… そんなわけで、よく使うのは1~5くらい、と割り切って左手側にのみ数字行をつけています。
Tomisuke配列を使える
また、Tomisuke配列を使えるというのも重視していたところです。
(実際はこれをカスタマイズした配列を使っているのですが)こちらの配列、右手に6列必要な配列となっております。
5列だとやはりタイプが難しくなってしまう…… それにTabやAltをレイヤに押し込むのも不便…… ということで、本作では補助キーの列も加えて、左右7列としています。
レイヤ移動無しでマウス操作が可能
これがやりたくて作り始めたといっても過言ではありません。
以前より「キーボードから手を放さずにマウス操作もしたい」「トラックボールは親指で操作したい」という希望がありつつ、
「レイヤ移動無しで、かつホームポジションから手を動かさずにマウス操作をしたい!」とも考えていました。
いろいろ考えた結果思いついたのが、このマウスボタンの実装です。
キーとキーの間の隙間にマイクロスイッチ(マウスの中に入ってるやつ)を配置し、3Dプリントなどでつくったボタンでそれらを押せるようにしています。
「Topプレート-Bottomプレート間距離は10mmまでに抑える」という制約の中でのマイクロスイッチの配置には苦労しましたが、
これによってレイヤ移動なしに、ホームポジションのままに左右クリック・ホイール押し込み・進む/戻るボタンの操作ができるようになっています。
また、マウスホイールも実装しています。ホイール操作もホームポジションから手をほとんど動かさずに行えます。主に薬指で回します。
トラックボールを使いながらスクロールする、といった操作も可能です。
ちなみにこちらのホイールには、はやしたろうさんの"THQWGD001"を使用しています。
トラックボール基板やケースも設計しました。
こちらのトラックボールも、横方向に10mmほどの範囲で位置調整ができるようにしています。
マイコンボード1枚のまま左右を分割する / RGB_matrixでLEDを光らせる
本作ではマイコンボードを1枚のみ用い、左右接続には10ピンのPHコネクタ・ケーブルを使っています。
よく見る左右分割キーボードはマイコンボード2枚を用いたものがほとんどだと思いますが、
こうしなかった理由にはRGB matrixのアニメーションが関係しています。
私はLEDのアニメーションの中でも、Reactive系・Splash系などの「キー入力に反応するアニメーション」が好みなのですが、
QMKではマイコンボードを隔てたmaster→slave間で、Reactive、Splash系などのRGBアニメーションが伝播しない……という問題がありました。
(※当時の私の知識です。slave→masterだったかも? いまは改善されているのかも……?)
ファームウェアを工夫することでこの問題を解決している(らしい)もの(例:Helix)もあるようですが、私はハード側で対処することとしました。
▲RGB matrixのエフェクト / Reactive系・Splash系アニメーション。
理想のライティングのため、LEDのアニメーションも作りました。
キーを入力すると、そこを起点に波のように色が変わります。
自作キーボードを始めてからずっとやりたかったことなので、今作で実装できて嬉しいかぎりです。
さいごに
構想から完成まで数か月かかってしまいましたが、形にすることができてよかったです。
3Dプリントやトラックボールまわり、ファームウェアなどつまずいたところも多かったのですが、先駆者の方々にたくさんご助言をいただきました。ありがとうございます。
kokken72もかなり実用に足るものにできたと思っていますが、これから改良を重ねて、より満足できるようなキーボードを作れたらなと思います。
今作の制作過程で、キーマトリクス、マウスボタン、RGB matrixのCustom Effectなど…………設計にあたりいろいろと苦労したところが多いので、
誰かの一助になれば、ということでこちらについてもいつか記事に起こすかもしれません。
この記事はkokken72で書きました。
追記:
キーボード #2 Advent Calendar 2024、
昨日はマナブさんの「さァ行こう! 最高なキーマッピングの再考」でした。
明日はTakeshi Nishioさんの記事の予定です。
その他のこだわり