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PC用ゲームを深く考えずにスマホ移植して気づいたこと

2024年10月にDungeon AntiquaというゲームをPC向けにリリースしました。
ありがたいことに、紹介ポストなどを見て「気になるけどPC持ってないからプレイできない、Switchかスマホでも出して欲しい」と言ってくださる方がちらほらいまして「Switchは現時点で難しそうだけどスマホなら以前にもリリース経験あるし行けるなぁ」と思い12月末にスマホ版を出しました。

Dungeon Antiquaスマホ版のコンセプト

当初、PCならキーボードやゲームパッドでスイスイと十字キーで移動したりコマンド選択したりできるけどスマホ版だとちょっと操作がしづらいかな?くらいは思ったものの、RPGでスピーディな操作を要求されたりはしないので普通にバーチャルパッドで大丈夫だろうと判断し、スマホ版はPC版と同じ内容を環境調整だけ行ってリリースしています。

バーチャルパッドを表示して操作を受け付ける機能は、Dungeon Antiquaで利用しているゲームエンジン「Pyxel」にもともと備わっているので、少しボタンの見た目や入力判定処理を個別最適化して実装しました。

縦画面


横画面

とはいえやはりPC版に比べてUXは劣るなとか、特にAndroid版だと画面がガビガビになったりサウンドにノイズが混じったりする問題があったので(サウンドのほうは一応の対策済み)、PC版800円のところスマホ版300円という低価格設定にしました。

ダウンロード数

これは本題とは関係ないのですが、同じく個人・インディゲーム制作している方とかだと気になるかもしれないのでご参考に。

PC版は他のスタッフさんに作っていただいた素敵なドット絵やPVが効を奏して、発売後10日で10,000本と自分としては望外の大成果を得られたのですが、スマホ版のほうはリリース後1か月半でiOS/Android含めて4,000ダウンロードです。
スマホ版の場合ダウンロードは無料で体験版としてプレイ開始、序盤をクリアすると製品版購入に進めるという作りなのですが、上記は製品版購入に至っていないユーザーも含めた数なので、実際にちゃんとプレイいただけた数としてはより少ないです。

これ自体は特に想定外でもないというか、「スマホ版はあくまで環境面でPC版をプレイできない or PC版をすでに知っているけど外出先などで気軽に遊びたい人向け」という考えだったので、まあそんなものかな?というくらいの受け取り方でいます。

スマホRPGはオート操作できて当たり前?!

ゲームをリリースした後で個人制作者にとって最も大事なこと、それはレビューやSNSでのフィードバックを見ること。
そんなある日、いただいたとあるレビューが自分としては新鮮だったのでXにポストしました。

いろんな方からリプをいただいて教えてもらったのですが、主要なやりとりを要約するとこんな感じ。

  • 最近のスマホ向けダンジョンRPGだと自動探索やオートバトルは当たり前。なんならパーティ編成やスキル習得もオススメが上がっていてほぼオート化できる。もはやプレイ動画視聴に近い体験とも言えるが、重要なところだけマニュアルプレイしたり、ガチャでレアアイテムを引いたりするのを楽しみにするくらいで十分

  • デイリークエストや同じステージの巡回用にオート機能が備わっているのがもはや常識となっている

  • 「スマホゲームは片手間で、家庭用ゲーム機/PCゲームはしっかりプレイ」という感覚。なので同じゲームでも家庭用ゲーム機だと「操作させろ」、スマホゲームだと「わざわざ操作させるな」となる

僕なんかいまだにFC版のドラクエ4とかWizシリーズを遊んでいる化石のような人間ですので(新作も遊んでるぜ?ドラクエ3リメイクとWiz1リメイクとかな!)これはこれはと恥いるばかり、穴があったら入りたかったのですが自宅に適当な穴がなかったためひとまずこたつに入りました。

あなた、気が短すぎませんか?と思ったが…

そう思ってレビューを見直すと、たとえばこんなレビューたち。どちらも星1つ。

・装備が高すぎて何も買えない
・面白いけど体験版です

スマホゲーってこういう ”クソみたいなレビュー” が多くなるという先入観を自分は持っていまして、案の定一定数出るなぁ、と当初思っていました。

1つ目の「装備が高すぎて何も買えない」は自分としては解読不能でした。初期所持金で最低限の装備は買えるし、そこそこお金がたまりやすいバランス設計だし。
そこで自分よりゲームに詳しい他のスタッフさんに聞いてみたら「たぶんチュートリアルで初期装備の自動購入をした人でそこは買い物の意識がなく、次のランクの1000Gの武器を買いたかったが数回バトルしても貯まらなかったのでこう書いたのでは?」とのこと。なーるほどねぇ。

2つ目「面白いけど体験版です」は、前述の通りDungeon Antiquaダウンロード時点では体験版で、ある程度進めないと製品版が買えない仕様になっているのですが、おそらくこの方はそこまで進まずに飽きて(なので「面白いけど」は優しさ)、「体験版をストアにリリースすんなやクソ作者が」と思ってこのレビューを書かれたものと拙者、愚考する次第でございます。

ただ実際、インディーや個人制作でも10万オーバーのダウンロード数、平均評価4.5以上などのスマホゲーはいくらでもあるわけで(それでもクソレビューは0ではないとは思うけど)、前節に挙げたような「スマホゲーに求められる性質」を考えると、上記のような低評価レビューはむしろスマホ最適化できていないゲームに対する妥当な評価なのだなと。

今からオート化を進めればいいんじゃね?

※オート化が全てではないとわかっていますが、ここでは話をオート化に絞ります。

フットワーク軽く動けるのが個人制作・インディーゲーム制作の強みです。
んじゃー今からでもスマホ版向けにオート操作を補強するかい?せめてダンジョン探索とバトルだけでも。
と少し考えたのですが明らかにダメです。

以下、Dungeon Antiquaをやった人以外にはやや伝わりづらいのですが一応わかるように記します。

まず自動探索機能、これはやるなら「マップデータから未探索ゾーンを割り出してそこに自動で移動する」といった仕掛けになりそうです。
ただDungeon Antiquaの場合、マップ全体を見ること自体に呪文かアイテムが必要な仕様なので、これが無条件でできてしまうこと自体がアンフェアというか、既存の呪文やアイテムの価値を破壊してしまいます。

まあでも、これはそういうものと割り切ってもいいかもしれません。
もう1点のオートバトル、こっちのほうが深刻でした。

といってもDungeon Antiquaにもオートバトルはすでにあるのですが、現状は「武器攻撃または無限使用できるアイテムだけを利用して戦う」という機能になっています。
これに「状況を判断していい感じに呪文を使わせる機能」を追加することはそこまで難しくありません。

ただ、このゲームでは呪文システムが「呪文レベル1~6に分かれ、レベルごとに最大9回の使用回数が設定されている」というものになっています。

そのため、たとえばレベル1なら敵を眠らせる呪文「スリープ(Wizでいうカティノ、FFだと実感しづらいけど全体がけスリプル)」が強力なのですが、レベル1呪文の回数が尽きると回復呪文のヒーリング1(ディオス、ケアル)が使えなくなっていまいます。

「回復や蘇生だけ優先する」という考え方もあるでしょう。
しかし、たとえばレベル3だと回復呪文ヒーリング2(ディアル、ケアルラ)と解毒呪文デトックス(ラツモフィス、ポイゾナ)が競合しているため、プレイヤーには「レベル3MP残しておかないと毒喰らったときヤバいな、レベル1呪文で代替するか」とか「毒喰らうとレベル3のMP尽きるけど毒消し持ってるからいいや」とか「もう1人レベル3呪文使える子いるし問題ナシ」といった判断が要求されます。
というより、この駆け引きこそが醍醐味、呪文のレベル制にこだわった理由だったりします。

一方MP制だとこれが「現在のMPと消費MPを比較して評価する」程度で済むので無難な判断がしやすいわけですね。
なので本作のこだわり:呪文のレベル制と戦闘のフルオート化は特に相性が悪いです。言い換えると、(スマホ向けオート化のことだけを言えば)ゲームデザインの時点ですでに失敗しています。

余談ですがドラクエ3のHD-2D版はルーラ・リレミトが消費MP0になっていて物議を醸していましたが、MPをいくら消費しても脱出・帰還だけは必ずできる(最低限MP16は確保するためにオート解除したりしなくていい)ようになっているので、オートバトル時代としてはうまい措置だなぁと感じたりしています。

まとめ

無駄に長文になりましたが、要するに何かというと、
スマホプレイの満足度を上げたいなら、単にUI・操作性だけ考慮すればよいわけではなく、ゲームデザインの時点でスマホ最適化する必要がある
と実感した、という話でした。

直近の制作予定はすでに決めているので当分手は出せませんが、いつかスマホ最適化したゲームをリリースしてリベンジを図りたいですね!

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