ずーみーのパーフェクト立ち方教室
こんにちは、ずーみーです。今回は「姿勢」についてのお話をさせて頂きます。
私自身は早稲田大学スポーツ科学部スポーツ科学科の学生で、ボディビルをやっています。2017年全日本学生ボディビル優勝・2018年JOCジュニアオリンピック日本ジュニアボディビル選手権優勝などの成績があります。
「ちょっと姿勢について話したいな」と思って書き始めましたが32,000字程度の超大作になってしまいました。
現在1章1節まで無料公開しています。
「姿勢」はとても重要なトピックですので、強くなりたい人・デカくなりたい人は絶対に押さえておきたいです。腰痛や肩こりに悩まされている人にも役立つかもしれません。
トレーニングをしている方の中には「筋トレをすると姿勢が良くなるよ」と聞いてトレーニングを始めたという方もいるのではないでしょうか。
猫背を治すために筋トレをはじめて、だんだんとハマっていった...という人が筆者の周りにも数人います。
しかし、それにもかかわらず彼らの姿勢は良くなっていないようです。
とくに現代において「座りすぎ」や「スマホのやりすぎ」によって運動習慣があるのに姿勢が悪いなんてことはよくあります。
たとえジムで運動をしていてもそれ以外の時間を乱れた姿勢で過ごしてしまっていては姿勢が良くなることはありません。また、近年の研究から座りすぎのライフスタイルがもたらす健康への悪影響はジムで運動することによって打ち消せるものではないと考えられています。運動の健康効果と座りすぎの悪影響はそれぞれが独立しているのです。
本稿では多くの人の姿勢の問題の原因として存在している「座りすぎ」を問題の始まりとして考えます。この問題に警鐘を鳴らし、人間はそもそも二本足で立つ動物であるという前提から「正しく立つ」方法を探っていきます。
乱れた姿勢(=不良姿勢)はすべての身体の動きに影響します。運動をするときだけ一時的に姿勢を直せたとしても、「意識的に姿勢を直している」時点で最大のパフォーマンスは発揮できません。最終的には「無意識に正しく立つ」を目指します。
本稿では基本的に脊柱のアライメント、特に前後方向での彎曲を取り扱っていきます。正しい姿勢を取れるようになったとき貴方は最大のパフォーマンスを手に入れられるはずです。
まずは現在の状況がマズいということを知る。そして基本の立位姿勢について学び、次に適切な座位姿勢について学んでいきます。最後に姿勢改善を助けるための筋肉・筋膜(fascia)・神経ケアなどをご紹介していきます。
「姿勢なんてただ背筋を伸ばしてればいいんでしょ」という方は一生良い姿勢を手に入れることはできません。じつはそんなに簡単な話ではないのです。良い姿勢を手に入れるためには適切な理解と対策の持続的な実施が必要です。
歯列矯正と同じようなもので姿勢矯正のためには時間が必要です。
筋膜システムが新しい環境に適応するためには6か月から2年が必要と言われています。
バキッとやって姿勢矯正!のような魔法はこの世にありません。身体を変化させるのはゆっくりとしたプロセスです。魔法を期待する人は一生騙され続けます。嘘は言いません。ここで紹介するのは地道でゆっくりとした時間のかかるものです。
しかし、その取り組みの先にあるのはより身体ケアに時間を掛けなくて済む、予防的かつ本質的な解決です。
以上をご了承いただいたうえ、購入していただけるとうれしいです。
―姿勢とは―
本稿において良い姿勢とは脊柱の整ったアライメント(適切な彎曲)を基本とした全身の静的姿勢および動的姿勢のことを言います。この良い姿勢においては骨は適切に配列し、筋肉に過緊張や抑制がなく、最大効率での物理的動作とモーターコントロール(運動制御)を助けてくれるでしょう。
それでは始めていきましょう。
【第1章】現代人を取り巻く姿勢の問題
本章では現代人を取り巻く姿勢の問題について知って頂きます。座りすぎのライフスタイルがどれほど健康を害しているのかについて理解を深めていただきたいとおもいます。
1.「座りすぎ」で死ぬ?
「座りすぎ」は身体不活動の指標として利用されます。
座りすぎで死ぬ。こんなことがありえるのでしょうか。答えはYESです。
従来より、座りすぎによって心血管疾患リスクにかかわるバイオマーカーが上昇することが知られていました。2010年以降、実際の死亡率に関わる研究が増えその危険性が再認識されたことで「座りすぎ」に警鐘を鳴らす専門家が増えています。
長く座ったままだと、体の中で一番大きな筋肉の太ももや、血液を心臓に戻す重要な役割を担うふくらはぎをほとんど動かすことがありません。具体的なリスクとしては肥満や糖尿病、高血圧、ある種のがん、死亡のリスクが高まるといわれているほか、メンタルヘルスや認知機能の低下も指摘されています。—――引用元:「座り過ぎ」日本人、20年後はどうなる? 健康スポーツ科学拠点で進む大規模健康調査 – 早稲田ウィークリー
以下に座りすぎの恐ろしさを示すような実際の死亡率を調査したデータを並べます。「言いすぎじゃないの?」と思ってしまうほどの座りすぎの害が明らかになります。
まず初めに、座りすぎの指標としてテレビの視聴時間を用いた2010年の疫学調査を紹介しましょう。オーストラリアで25歳以上の8800人を対象に、テレビ視聴時間と死亡率を調査した研究があります。この研究によると、テレビの視聴時間が1時間伸びるごとに研究期間内の死亡率が11%も高まりました(心臓血管疾患での死亡率は14%増、がんでの死亡率は9%増)。
同研究ではテレビ視聴時間が2時間の人を基準とした場合、1日2~4時間テレビを見る人は死亡率が13%増、4時間以上見る人では死亡率が46%高まりました。(Dunstan et al. 2010)
しかも、この研究においてはWHOの定める運動基準を満たしていた人も関係なく座りすぎによって死亡率が高くなっています。
1日のうちの短い時間だけ強度の高い運動をしていても、1日の長い時間を身体不活動が占めていては運動による健康効果は打ち消される可能性があります。
身体不活動、と言うのはほとんど運動をしていない状態のことです。座位はこれに該当しますが立位はこれに該当しません。1日の長い時間を
このように1日の短い時間だけ高い強度の運動をし、他の時間は不活動な人を「アクティブ・カウチポテト」と呼んでいます。トレーニーの方には多いのではないでしょうか。
カウチポテト族(カウチポテトぞく)は、ソファー(カウチ)に座り込んだ(寝そべった)まま動かず、主にテレビを見てだらだらと長時間を過ごす人を、「ソファーの上に転がっているジャガイモ」にたとえて揶揄または自嘲した、アメリカの俗語的表現である―――引用元:カウチポテト族 - Wikipedia
次も、オーストラリアで行われたテレビ視聴時間と寿命の長さについての2012年の調査を見てみましょう。この調査では1日1時間テレビを見る時間が伸びるごとに平均で余命が21.8分縮まると言う結果が導かれました。全くテレビを見ない人に比べて、1日6時間テレビを見ている人は全くテレビを見ない人と比較して4.8年(95% UI:11日~10.4年)寿命が短くなると予想されています。(Veerman et al. 2012)
ちなみに、アメリカ人の週平均テレビ視聴時間は35.5時間だそうです。1日当たり5時間を超えていますね。今日アメリカ人は1日の13時間を座って過ごしていると言われています。
これはテレビを見るなと言っているわけではありません。テレビを見ることではなく、テレビを見るときの姿勢・身体不活動が良くないのです。
私はテレビを見る際も可能であれば立位を推奨し、それが不可能であるなら3章で紹介する正しい座位で見ること、20~30分ごとに1回立ち上がって足踏みやカーフレイズなどの軽い運動を行うことを推奨します。
次は座りすぎの指標として車の運転時間も利用したものを紹介しましょう。21年間の追跡調査によると、車に乗っている時間が10時間/週を超える男性は4時間/週未満の男性と比較して、また23時間/週を超える運転時間+テレビ視聴時間を報告した男性は11時間/週未満と報告した男性に比べて、心臓血管疾患による調査期間中の死亡率がそれぞれ82%、64%高かったという結果になりました。(Warren et al. 2010)
この研究の結果だけから完全な結論を出すことはできませんが、この結果を過激にとらえるとあなたが今の座りっぱなしの生活を続けるならば今から21年後、心血管疾患で死んでいる確率は1.6~1.8倍となります。
さて、ここまでオーストラリアでの研究が多かったですね。日本人の座位時間の実情はどうなっているのでしょうか。
日本人は世界的に見て座っている時間が長いと思いますか?それとも短いと思いますか?
全20か国、49,493人を対象に座って過ごしている時間を調査したものがあります。(Bauman et al. 2011)。この調査での全体の中央値は300分/日でした。
座位時間が最も短かった国はポルトガル・ブラジア・コロンビアで中央値は180分/日でした。座位時間が最も長かった国は台湾・ノルウェー・香港・サウジアラビア・日本で360分/日でした。
残念ながら日本は立っている時間の短い国ではなかったようです。しかも、日本は20か国の中で座っている時間が一番長い国のようです。
ここで厚生労働省が扱う日本国内の生活習慣病のデータを参照してみましょう。
疾病と食事、地域の関係をみる [PDF:2723KB] - 厚生労働省
私の故郷である徳島県は糖尿病有病率でとても有名な県です。1993年から2004年まで12年連続で糖尿病死亡率が全国でナンバー1でした。ちなみに2位にはお隣の香川県がつけていたりします。
これらのデータから読み取れる傾向として地方のほうが生活習慣病有病率が高く、都心のほうが生活習慣病有病率が低いことが読み取れます。
リンク先の厚生労働省データによると2009年の糖尿病罹患率の上位5県は
1位 島根県
2位 青森県
3位 徳島県
4位 香川県
5位 秋田県
です。
反対に糖尿病罹患率下位5県は
43位奈良県
44位大阪府
45位埼玉県
46位沖縄県
47位東京都
でした。
なぜでしょうか?私はここにも座りすぎなどの生活様式が関係しているのではないかと考えています。
地方の人のほうが動いてそう、と思われがちですがそうでもありません。徳島で生まれ育った経験から言うと、地方の人ほど歩くなどの低強度の日常運動をしていないものです。
なぜなら公共交通機関が発達していないため、移動手段を各家庭の車に頼っているからです。
びっくりするほど歩きません。家から家の車庫までしか歩きません。
いっぽうで都心に住んでいる人は公共交通機関を利用する際に歩いていたり、立っていたりする時間が多いです。埼玉県や奈良県の有病率が低いのは東京や大阪へ通勤する都合上立って活動している時間が長いという要因もあるのではないでしょうか。
以上のデータから日本は世界で一番長い時間座っている国ですが、その中でも格差があると言えそうです。地方の人は特に気を引き締めてください。都心に住んでいる人も全く油断できません。
最後に皆さんにとってもなじみ深いWHO(World Health Organization)の発表を参照します。→
"Approximately 3.2 million deaths each year are attributable to insufficient physical activity.(毎年約320万人が身体不活動のために死んでいる)"———引用元:WHO | Physical Inactivity: A Global Public Health Problem
ちなみにWHOによると毎年喫煙が根本的な原因となって死ぬ人は約800万、飲酒では約300万人、HIVでは約100万人です。以上のことから「座りすぎは新しい喫煙だ」とその危険性が非難されています。
座りすぎはタバコや飲酒に匹敵する不健康な習慣の一つだということを認識していただければ幸いです。
〇座りすぎの生活を抜け出すにあたって
今すぐに座りすぎの生活をやめろ、と言いたいところですが実際のところ現代の生活様式は座ることとは切り離せないものになっています。
さらに、今の状態から急に立ち上がるだけでは姿勢の問題が発生します。椅子に飼いならされた現代人にとって正しく立つことには適切な訓練が必要なのです。
2章ではその問題を解決するため、正しく立つための訓練法をご紹介します。
出来れば(立つ状況に自分を追い込むために)スタンディングデスクを購入することを推奨しますが、はじめは机の上に置いた段ボールの上にPCモニタを置くなどでもよいでしょう。
追記:スタンディングデスクでPC作業をするときには腕を降ろし、肘を90度に曲げた位置に天板(またはキーボード)が来るくらいが理想です。低すぎると背中が丸まってしまいますし、高すぎても肩が竦み上がった状態になってしまいます。天板がこの高さなら上腕を垂直に降ろしたまま作業することができます。前腕はまっすぐ平行に前に出しなるべく手首は真っ直ぐに保てるとさらに良いでしょう。しかし、ここでノートパソコンを使用している人には問題が生じます。ノートパソコンには手を置く位置とモニタの位置が近すぎるという問題があるのです!家でノートパソコンを使う場合は外付けキーボードか拡張モニタを使うとGOODです。モニターの上端が目線の高さに来るように箱などを使って調節し、手元は先述の高さにあるのが最高のポジションです。ペンを使った書き作業などをする場合にはもう少し天板を高くします。傾斜がついていると尚良いでしょう。
腰痛予防のために数万円、数十万円する人間工学に基づいた(?)椅子を買うよりも正しく立つことを習得したほうが費用対効果は明らかに大きいです。
いくら人間工学的に優れた(?)椅子であっても、座るという行為そのものが害になのですから椅子に数十万円もかけるのは正直、バカげたことだと思います。腰痛は座っていることによって生じている(適切な座位でも椎間板にかかる圧力は立位の1.4倍になる)のだから、座るのをやめてしまったほうが手っ取り早く根本的な解決になります。
その分のお金は寝具に掛けたほうがよいでしょう。私は西川寝具様の「Air SIマットレスハードタイプ」を愛用しています。実はサポートを頂く前からこのマットレスを愛用しています。サポートを頂いているから宣伝しているのではなく、本当に良いものだから心底惚れ込み、アスリートサポートプログラムに応募しました。
ハードタイプではトレーニーなど筋肉量が多い人の身体もしっかりと支えてくれるので寝ているときの腰のポジションが適切になり、寝ているときの腰痛がなくなりました。
睡眠時の体幹をサポートする特殊立体クロススリット構造。[エアーSI]マットレス|マットレスは西川の[エアー]|AiR®
いきなり1日中立っていろとは言いません。
まずは20-30分に1回立って軽い足踏みやカカト上げ運動を行うというところから。ゆっくりと立つライフスタイルをはじめていきましょう。
2.「座りすぎ」が姿勢に及ぼす影響
前節で座りすぎによる全般的な健康への危険性がわかって頂けたと思います。
それではお待ちかね、座りすぎと姿勢(バイオメカニクス)との関係についてお話をさせて頂きます。
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