六本木ヒルズの藁焼き京懐石 : よし澤

初夏のスペシャリテは、やはりサワラの藁焼き。まるで刺身のような柔らかさの身と、仄かな香りが漂う皮目の火入が文句なし。山葵と大蒜も初夏らしい爽やかさ。野菜用のポン酢が別添えなのも良い。旨味をたっぷり蓄えたサワラの味わいと、藁の香りに初夏を満喫できる。

コースの始まりは、大将からの贈り物。今回は梅酒。初夏の爽やかさのスタート。先付は水無月豆腐。三角形なのは、1年の半分が過ぎたことを示しているとのこと。だから水無月豆腐。椀物は梅雨ハモ素麺。この時期のハモの脂の乗りが、精を付けるには1番。奈良の手延べ素麺、利尻昆布、本枯節、マグロ節との相性も完璧。

藁焼きに続く八寸は、いつもながら豪華な組合せ。屋根を掛けた梅雨穴子の天麩羅は山椒醤油で。アスパラ、どんこ椎茸も美味しい。フルーツトマトや赤イカのジュレが夏の味わい。甘さや酸味を自由自在に操っている。桜海老と小松菜の煮浸しもあっさりと効いた出汁が良い。

琵琶湖の稚鮎もスペシャリテ。この時期、旬と言えばこれ以上ない。軽い苦味が爽快でもある。山形牛サーロインと真蓮根、木耳の飛竜頭の美味しさも格別。サーロインの旨味と出汁のバランスを、木耳が支えている。

食事はいつもの土鍋ご飯の4段活用。初めは白飯のアルデンテ。続いて香の物と炊き立てご飯。そして味噌椀と蒸らしご飯。〆は大将のドヤ顔とともにお焦げご飯。お米を知り尽くす大将の、客を思う演出が楽しい。お抹茶の水団子まで、飽きることがない。

乾杯は大将からの梅酒。続いて醸し人九平次のHuman。純米大吟醸らしい爽やかな口当たりが良い。今回の日本酒は、磯自慢、新政No.6の2021醸造年。全国の有名銘酒の中でも、特に美味しい限定酒が勢揃いしていて嬉しい限り。

都心の大規模商業施設にあって、銀座の懐石割烹以上の雰囲気を味わえ、居心地の良さに大満足できる貴重な店。旬の食材を、旬の盛りにこだわって楽しめる。今流行りの走りに偏らず、京料理の王道を守りながら、藁焼きなどオリジナリティの豊かさが素晴らしい。これからも東京の京料理を代表する店として、人気を続けると思われる。

今回の藁焼きはこの店のスペシャリテとなるサワラ。山形県産のサワラは旨みをたっぷりと蓄えたこの時期の味わい。藁焼きの香りも素晴らしい。ニンニクと山葵の組合せもサワラとの相性が一番。皮目の火入れ具合と中の柔らかさのバランスが、藁の燃える熱で炙られてベストとなっている。

会席のスタートは大将からの盃から始まる。先付は栗の出汁。塩と牛乳という驚くようなコンビネーションが、意外と日本的で美味しい。真鱈の白子には春菊の餡が掛かっている。濃厚な白子にあっさりした春菊の餡が絡み合う。椀物はグジ。胡麻豆腐の揚げ出し豆腐とグジが、利尻昆布と鮪節の絶妙な塩梅の出汁に浮かぶ贅沢なお椀。

藁焼きと並ぶもう一つのスペシャリテがボリウム満点の八寸。冬を迎えたぷっくりとした牡蠣。ムカゴには落花生のオオマサリを合わせる。鯛と昆布も鉄板の組み合わせ。ドンコ椎茸とカマスもシンプルに美味しい。サワラに続いては大間のヒラメ。ヒラメはやはり海峡ものが1番。アン肝味噌に負けない旨みが凄い。

今回の葛素麺には7種類のキノコが乗っている。色々な味わいの茸が楽しい。伊勢海老のビスクは石焼き鍋を使っている。ぷりぷりの伊勢海老と海老芋に上からビスクをジュっと掛けると、目の前でグツグツと煮立つ香りが良い。今年最後の落ち鮎はカダイフ巻きにされ、まるでフレンチのよう。〆の土鍋炊込みご飯もスペシャリテ。今回はたっぷりの原木椎茸。

乾杯のシャンパーニュはベルナールブレモンがこの店のハウスシャンパーニュ。あたかもブランドノワールのような上品なフルーティさが出汁の料理のとも。日本酒は大将お勧めの季節の限定酒が楽しみ。今回はみむろ杉と楯野川。楯野川の源流ひやおろしが珍しい。純米大吟醸らしい日本酒らしさがしっかりと感じられる。

六本木の巨大商業施設にあって、銀座の雰囲気を味わえる貴重な懐石割烹。銀座の店ではミシュランの星を取り続けた大将と女将が六本木に出した3店舗目は、今までの店の集大成のような料理の数々が嬉しい。丁寧な出汁と厳選された食材を、大将自ら捌く思い入れがこの店の最大の素晴らしさ。キビキビした若いスタッフの対応も文句がなく、これほど居心地の良い懐石割烹は、他には無いのではないかと思えてならない。

夜会席　16800円
食前酒　大将からの盃
先付　栗の出汁
　出汁と塩　牛乳
前菜　真鱈の白子
　春菊の餡かけ
椀物　甘鯛　銀杏餅
　胡麻豆腐の揚げ出し
　利尻昆布と鮪節の出汁
八寸　牡蠣　ムカゴと落花生
　鯛の昆布巻き
　ドンコ椎茸とカマス
鉢肴　山形県産サワラの藁焼き
　ニンニク　山葵　ポン酢
向付　大間のヒラメ
　アン肝味噌
凌ぎ　7種の茸の葛素麺
強肴　伊勢海老と海老芋
　伊勢海老のビスク
　野菜と白ワイン味噌
油物　子持ち落ち鮎
　カダイフ巻き　山椒
食事　原木椎茸の土鍋炊込みご飯
　イクラ　香の物
留椀　アサリの味噌椀
水菓子　茨城県飯沼の栗
　ラム漬け渋皮煮
水菓子　ほうじ茶のワラビ餅
　ほうじ茶のジュレ
　ほうじ茶のパウダー
煎茶　抹茶

NM CHAMPAGNE BRUT
　GRAND CRU AMBONNAY
　BERNARD BREMONT
　1600円/120mlグラス

みむろ杉　純米吟醸　雄町
　今西酒造　奈良県
　1000円/1合徳利
楯野川　純米大吟醸　源流
　ひやおろし　限定品
　楯野川酒造　山形県
　1000円/1合徳利

別途消費税・サービス料10％

やはりこの店の藁焼きはサワラが素晴らしい。藁に燻された香ばしさとサワラの柔らかな食感、透き通るような旨みが見事としか言いようがない。山葵と大蒜もサワラの味わいを引き立てている。真夏にはカツオだった日もあるこの店の藁焼きも、秋になると小振りなサワラ、サゴシが戻ってくるとスタッフの笑顔も気持が良い。ピュアな白身の軽快な味わいが、この時期のサワラの藁焼きの美味しさでもある。

会席コースは大将からの乾杯酒から始まる。秋は菊の花びらを浮かべた菊酒。先付は炭火で炙る秋サバ。まさに秋の香りが仄かに漂う。椀物は松茸とハモの土瓶蒸し。松茸の香りとハモの旨みが鶏出汁に引き立てられ、松茸シーズンのスタートをしみじみと味わうことができる。八寸の1つ1つが会席コースの1皿のように凝っているのもこの店のスペシャリテ。サワラの藁焼きの前に、この八寸だけでも満足してしまう。

八寸はまずはすっぽんの茶碗蒸しから。ウニは秋茄子と組合せている。うなぎのルイベがあっさりした美味しさ。うずらの温泉卵というのも珍しい。新イクラや色々なキノコの組合せも旬を感じるが、この時期ならやはりノドグロが美味しい。ノドグロは幽庵焼きにして銀杏を添えている。旬の走り、盛り、名残りを満遍なく揃えた八寸の素晴らしさに、日本酒が止まらなくなる。

5日間熟成させたヒラマサは白身の王様らしい旨みをうちに蓄えた火入れが、九条葱と良く合っている。かなり大きく育って来た琵琶湖の鮎は、薄ごろもに包まれて頭や尻尾まで全て食べることができる。野菜のソースはソースだけでも日本酒が飲めてしまう優れもの。食事の前には米沢牛。大根おろしが脂分の全てを吸い取り、肉には旨みだけが残されている。大根や煮汁は脂分による甘さが乗せられ、上品な出汁に複雑さが加わって素晴らしく美味しい。

食事もスペシャリテの土鍋炊込みご飯。大将自らデザインした火入れを最高とする土鍋。松茸にハモを合わせ、秋の走りと夏の名残りの嬉しい競演。松茸の香り、ハモの食感と旨み、出汁の奥深い味わいの炊込みご飯は、何杯でも食べられる文句なしの美味しさ。秋の到来を実感できる。この店の〆と言えばシジミの味噌椀。炊込みご飯の出汁との相性が抜群。水菓子は秋の葡萄尽くし。シャインマスカットに巨峰、包み込むのは白ワインのジュレ。添えらえているのも巨峰のアイスクリーム。

乾杯の泡はハウスシャンパーニュ、ベルナールベルモンの特級村。大将にお任せの日本酒は、秋サバに合わせるひやおろしからスタートする。鳳凰美田がわずかな量だけ造る限定ひやおろしが秋の訪れとマリアージュ。松茸には十四代の希少種、龍の落とし子。どれも美味しい十四代の中でも、龍の落とし子はかなり珍しい。美山錦を高木酒造が20年かけて改良したという十四代オリジナル酒米、龍の落とし子。フルーティーでありながら日本酒らしさがあり、口当たりのすっきり感も凄い。

季節のうつろいを大切にし、旬の走り、盛り、名残りにこだわる食材のセレクトが素晴らしい京懐石の店。藁焼きや炭火焼きの香りと上品な出汁に心をくすぐられる料理の数々。白木の1枚板カウンターや季節ごとの小物、生花などのインテリアも文句なし。大将、女将だけではなくスタッフ全員の人当りが良く、居心地の良さは満点。銀座でミシュランの星を取って10年となる大将が、銀座の雰囲気を六本木の大型商業施設内で実現する、奇跡の店と言っても過言ではない名店ではないだろうか。

夜会席　16800円
食前酒　菊酒
先付　秋サバの炙り
　どんこ椎茸　長芋　京都産水菜
　ミズ　菊のジュレ
椀物　松茸とハモの土瓶蒸し
　鶏肉　粟麩　三つ葉　酢橘
八寸　すっぽんの茶碗蒸し
　ウニと秋茄子の水晶寄せ
　鰻味噌漬けのルイベ
　イブリガッコと柿白和え
　ウズラの温泉卵と岩モズク
　新イクラ
　茸と大根おろし
　ノドグロ幽庵焼きと銀杏
向付　サワラの藁焼き
　山葵　大蒜
鉢肴　ヒラマサ
　5日間熟成させた漬け　九条葱
強肴　鮎のフライ
　野菜のソース
肉料理　米沢牛の煮おろし
　京都産賀茂茄子
食事　松茸とハモの土鍋炊込みご飯
止椀　シジミの味噌汁
香の物　茄子　人参　胡瓜　大根
水菓子　シャインマスカット
　巨峰　巨峰のアイスクリーム
　白ワインのジュレ　葡萄の葉
抹茶　黒糖の葛餅

NM CHAMPAGNE BRUT
　Grand Cru
　Bernard Bremont
　1600円/120mlグラス

鳳凰美田　純米吟醸
　ひやおろし　限定酒
　小林酒造　栃木県
　900円/1合片口
十四代　龍の落とし子
　純米吟醸　生詰め
　高木酒造　山形県
　4400円/1合片口
出雲富士　特別純米
　富士酒造　島根県
　900円/1合片口

別途消費税・サービス料10％

真夏の藁焼きはスペシャリテのサワラ。藁の仄かな香りが、夏には程よい爽やかさを感じさせる。皮目と皮の直ぐ下の身だけに火が入り、サワラの旨みが凝縮した内側はほとんど生の刺身となっていて美味しい。添えられた大蒜、山葵、芽葱を使わなくても十分だが、一口ごとに変化を楽しむことも出来る。野菜にはポン酢が付いている。口替りにあっさりしたポン酢味が丁度良い。季節ごとに旬を感じられる藁焼きは、やはりこの店最大の特徴と言える。

お任せコースは大将からの贈り物、乾杯酒から始まる。新生姜の酒を入れるのは金のチロリ。漆塗りの盃の底には花火の絵柄が真夏らしい。新生姜の味わいが夏の疲れた胃を優しく包み込む。先付は葛素麺。半透明に近い葛の素麺はやや硬め。夏野菜とその出汁のジュレとのコンビネーションが真夏の旬の象徴のよう。椀物はクエ。クエの旨みが元気のもと。本枯れ節と鮪節の出汁が、これぞ京料理という上品さ。

向付はサワラの藁焼きに続いてアジの刺身。冥加とアジの組合せが旬を感じる。鉢肴はスズキ。幽庵焼きと蓼の組み合わせが軽快な味わい。強肴は鮎。頭と尾、腸、骨から取った出汁に、軽く炙った鮎の身が赤茄子、茶豆とともに浮かんでいる。柔らかな鮎と赤茄子、茶豆の組合せが素晴らしく美味しい。アルデンテ、炊き立て、蒸らし立て、お焦げの4種類の土鍋ご飯と香の物、雑魚山椒、アサリの味噌椀、季節のアイスもスペシャリテ。オーソドックスで軽い構成も京料理らしさ。

大将からの乾杯酒に続いてはシャンパーニュ。ハウスシャンパーニュはグランクリュ村のベルアールベルモン。夏の葛素麺にぴったりの繊細な泡が嬉しい。クエには高知の美丈夫、純米吟醸。あっさりとした口当たりが素晴らしく美味しい出汁とマリアージュ。サワラやアジには新潟の八海山純米吟醸。スズキ、鮎には磯自慢を合わせる。磯自慢は東条秋津西戸の純米大吟醸、限定品のブルーボトル。希少な日本酒のコストパフォーマンスが良い。

六本木の再開発ビル、大規模商業施設内にあっては珍しい本格的な京料理の割烹。白木のインテリアも今流行の雰囲気を醸し出している。大将や女将、スタッフの人当たりが良く居心地満点。何より出汁に凝った料理の数々が日本酒に合って美味しい。スペシャリテの藁焼きを初めとした、全国の旬の食材をコースの初めから最後まで楽しむことができる文句なしの京料理店。銀座の店に続いて、この店がミシュランの星を取るのも時間の問題と思われる。

お任せコース　6000円
乾杯酒　新生姜の日本酒
　金のチロリと花火の盃
先付　葛素麺　夏野菜
　フルーツトマト　胡瓜
　水茄子　オクラ　辛味カイワレ
　夏野菜のジュレ掛け
椀物　クエのお椀
　長茄子　冬瓜
　本枯れ節と鮪節の出汁
藁焼き　サワラの藁焼き
　大蒜　山葵　芽葱
向付　軽く熟成させたアジ
　茗荷乗せ
鉢肴　スズキの幽庵焼き
　蓼酢
強肴　鮎　茶豆
　熊本産赤茄子
　鮎の頭尾と腸の出汁
食事　4種類の土鍋ご飯
　アルデンテ　炊き立て
　蒸らし立て　お焦げ
香の物　雑魚山椒
留椀　浅利の味噌椀
水菓子　桃のアイスクリーム
煎茶

NM CHAMPAGNE BRUT
　Grand Cru Bernard Bremont
　1600円/120mlグラス

美丈夫　純米吟醸
　純麗たまラベル
　濱川商店　高知県
　900円/1合片口
八海山　純米吟醸
　精米歩合50％
　八海醸造　新潟県
　900円/1合片口
磯自慢　純米大吟醸40
　東条　秋津　西戸AAA
　磯自慢酒造　静岡県
　2800円/1合片口

別途消費税・サービス料10％

銀座でミシュランの星を取り続けた大将と女将が、3店舗目として六本木ヒルズに進出して間もなく2年となる。旬の魚の藁焼きがスペシャリテ。銀座では鰹の藁焼きが有名だが、この店では鰆の藁焼きが一押し。藁に燻されたような香りが仄かに漂う向付は、暫く来ないと頭に浮かぶ止められない美味しさ。大規模再開発ビルにある銀座的な本格割烹という新しいジャンルに挑戦し、プライベート利用から接待まで幅広い人気が定着している。

今回の藁焼きはいつもの鰆ではなく、銀座同様の鰹。やや遅ればせの初鰹。しかし初鰹も早過ぎるよりも、このくらいの脂の乗りの方が美味しいように感じる。旬の走りにこだわるよりも、本当に美味しい時期と産地にこだわっているところが流石。添えられた大蒜が臭みがなくて驚く。塩は天然の岩塩。生姜ではなく山葵を合わせる。どちらかと言えば豪快な漁師料理を、エレガントな京風料理に変身させていて素晴らしく美味しい。

ランチのお任せコースも大将からの季節の食前酒から始まる。今回は旬の梅を使った梅酒。先付は蓮の葉を蓋代わりにした太刀魚。蓮の葉に乗った水滴が6月らしい。太刀魚に合わせる水茄子、京水菜、新生姜の組合せもすっきりと涼しげな味わい。椀物は旬の走り、初夏のハモ。出汁に鮪節を使い、あっさりとしたハモや玉子豆腐を引き立てている。

藁焼きに続いて鮎。琵琶湖からの鮎は、稚鮎から少し大きくなった一番美味しそうな小振りさ。あまりの活きの良さに、桶から飛び出してカウンターの上のお膳の上まで飛んで来て笑いを呼んだのも愛嬌。炊き合わせはグジ。合わせるのは賀茂茄子、万願寺唐辛子、海老芋。まさに京料理の真髄。軽快な出汁も京料理らしさ。上品な美味しさが素晴らしい。アルデンテからおこげまでの土鍋炊きご飯の4変化も楽しい。雑魚山椒や最後の水無月まで京風を満喫できる。

乾杯の泡はシャンパーニュがグラスで用意されていて嬉しい。ベルナールベルモンはシャルドネとピノノワールの組合せで、軽い酸味が初夏らしい爽やかさ。太刀魚との相性抜群。日本酒は全国の銘酒が1通り揃っている。初鰹の藁焼きには宮城の伯楽星。特別純米の口当たりの軽さが藁焼きとマリアージュ。グジにはうすにごりの生酒。石川の手取川がこの春限定で醸した純米酒。微発泡が京料理のとも。

六本木ヒルズという大規模再開発ビル内にあって、銀座にあるような本格的な京風の割烹料理店。旬の走り、盛り、名残りを意識した構成や、こだわりの食材が文句なし。藁焼きのような漁師料理をエレガントな京料理に仕上げる大将のオリジナリティは、新しい日本料理の旗手とも言える。白木のインテリアも料理同様、本格割烹の雰囲気に溢れ、カウンターでの大将との会話も居心地満点。今後ますます予約も取り難くなっていくものと思われる。

お任せコース　6000円
食前酒　梅酒
先付　千葉県竹岡産太刀魚
　水茄子　京水菜　茗荷　新生姜
　蓮の葉
椀物　ハモ　玉子豆腐
　鮪節
向付　初鰹の藁焼き
　大蒜　天然岩塩　ポン酢　山葵
鉢肴　琵琶湖産鮎の炭火焼き
　蓼酢
強肴　グジの炊合せ
　賀茂茄子　万願寺唐辛子
　石川県産海老芋
食事　土鍋炊きご飯　4種
　アルデンテ　炊き立て
　蒸した白飯　おこげ
香の物　雑魚山椒
留椀　アサリの味噌汁
水菓子　桜のアイスクリーム
　最中の皮
和菓子　水無月
煎茶

NM CHAMPAGNE BRUT
　Grand Cru Bernard Bremont
　1600円/120mlグラス

伯楽星　特別純米
　新澤醸造店　宮城県
　900円/1合片口
手取川　春純米　うすにごり生
　吉田酒造　石川県
　900円/1合片口

別途消費税・サービス料10％

六本木ヒルズにある本物の日本料理店。銀座でミシュランの星を取り続ける大将と女将が、銀座の2店舗目に続いて六本木に進出。京料理の流れを汲む会席コースを、抜群のコストパフォーマンスで堪能することができる。銀座の2店舗同様、このお店でも藁焼きがスペシャリテ。カウンターの奥の厨房に見える藁焼きの炎を、あたかもインテリアの一部のように楽しめる。

今回もスペシャリテはサワラの藁焼き。ふわふわで造りのような食感と藁で燻された香りが素晴らしい。藁の煙の中で、サワラの旨味が凝縮されていて、藁焼きの独特の香りと共に造りとは一味違う世界を味わうことが出来る。ニンニクと山葵の組み合わせも、ある意味ワイルドな藁焼きとの相性が良い。

コースは菊の花弁が浮く乾杯酒から始まる。先付は葛素麺。7種類の茸が秋の香り。椀物は松茸とハモの土瓶蒸し。この時期は話題のブータン松茸。国産の香りと味わいに限りなく近い。名残のハモと合わせた出汁は、夏と秋の最高のコンビネーション。藁焼きに続く八寸が豪華絢爛。海鼠腸と胡桃豆腐だけでも日本酒が進むが、カマス、グジ、秋刀魚と素晴らしい海の幸尽くし。

油物は若鮎のフリット。雄にもかかわらず丸々と太っていて脂が乗っている。揚げる前に低温で2時間火入れし、頭から尾までふわふわ。おろしソースがオリジナルで鮎に合う。賀茂茄子を巻いた山形黒毛和牛のサーロインも舌の上で蕩ける美味しさ。食事は4種類の土鍋炊き込みご飯。アルデンテ、炊き立て、蒸し立て、お焦げを、雑魚山椒などのお供と堪能できる。

乾杯の盃に続くのは、純米大吟醸生酛造り、山城屋の超辛口。十四代の中取り純米吟醸は超希少な播州山田錦。豪華な八寸に超希少な日本酒を合わせる。嬉し過ぎるペアリング。そしておろしソースのぷりぷり若鮎には、湧水仕込の純米辛口、宝劔。メニューにも全国からの銘醸がバランス良くオンリストされているが、料理に合わせた大将の裏日本酒ペアリングが素晴らしいセレクション。

鰆の藁焼きをスペシャリテとする、本格京料理を彷彿とさせるバリエーションの数々。旬の走り、盛り、名残りを忠実に並べる、安心感さえ漂う食材の選択。そして何より、和洋の良い所を常に取り入れながら新しさを追求し、自らのスペシャリテに昇華させていく先進性。銀座で2店舗、六本木に3店舗目を出し、なおかつ銀座でミシュランの星を維持し続けるのも、当然の結果ではないだろうか。

土日祝限定ディナーコース
　9000円
先付　葛素麺
　7種類の茸　柚子
椀物　松茸とハモの土瓶蒸し
向付　サワラの藁焼き
八寸　海鼠腸　胡桃豆腐
　グジ松毬焼き
　カマス　秋刀魚
油物　若鮎のフリット
　おろしソース
強肴　京都産賀茂茄子
　山形黒毛和牛サーロイン
　葱　出汁餡
食事　新潟産新之助
　アルデンテ　炊き立て
　蒸し立て　お焦げ
香物　雑魚山椒
留椀　ハマグリの味噌椀
水菓子 桃のかき氷
和菓子 水羊羹
抹茶

NM CHAMPAGNE BRUT Grand Cru
　Bernard Bremont
　1600円/120mlグラス

山城屋　純米大吟醸　生酛造り
　越銘醸　新潟県　1400円/1合片口
十四代　中取り純米吟醸　播州山田錦
　髙木酒造　山形県　6000円/1合片口
宝劔　純米辛口　湧水仕込
　宝劔酒造　広島県　1400円/1合片口

別途消費税

ミシュランの星を銀座で獲り続ける大将が、六本木に3店舗目を出店。銀座に2店目を出した時と同じように、大将、女将が揃って新店舗に移って来ている。スペシャリテの藁焼きは、この店でも健在。カウンターの奥に見える厨房で上がる勢いの良い火に、ファイヤーという声が聞こえてきそうな気がする。

今回の藁焼きはサワラ。三重県鳥羽産のサワラは、まだ可愛らしいサゴシの大きさ。小型にもかかわらず脂の乗りが旬の盛りを思わせる。何と言っても、藁焼きとサワラは香りの良さが抜群の組み合わせ。ワサビとニンニクとのコンビネーションも文句なしに美味しい。やはり藁焼きは魚そのものの脂の乗りが命と言える。

コースは大将自らシェイカーを振る桃のカクテルから始まる。先付は蓮の葉と花びらに蓋をされている。蓮の葉の上には水滴。初夏の装い。渡蟹と甘エビが更に美味しくなる。タチウオと翡翠茄子の椀物は極上の出汁の味わい。藁焼きに続いて、グジは松毬焼きにされている。鬼おろしとスダチがぴったり。花ズッキーニに詰められたハモしんじょも素晴らしく美味しい。締めの土鍋ご飯も、銀座と同じく4種類の仕上がりが楽しめる。

乾杯の泡はベルナールブレモンのグランクリュ。古木から取るピノノワールは最高クラスと言われるレコルタンマニピュラン。日本酒は通でも満足する素晴らしい品揃え。食材や調理に合わせて飲めるように、磯自慢や鳳凰美田、伯楽星などを常時ラインナップ。さらにその日その日で、大将お勧めの裏メニューも楽しみとなっている。

銀座の2店舗を弟子や兄弟弟子に任せ、女将とともに新店舗に賭ける大将の意気込みは熱いものがある。六本木にはかつて無かった京料理の本格割烹を、銀座流のインテリアやサービスを持ち込んで勝負する大将の店。大型商業施設の中での一つの成功例として、かなりの人気が出るのは間違いないものと思われる。

お任せコース　6000円
食前酒　桃と日本酒のカクテル
先付　渡蟹　甘エビ
　錦糸ウリ　内子
　酢と出汁のジュレ　青ズイキ
　ハスの葉と花びら
椀物　房州竹岡産タチウオ
　福岡県博多産翡翠茄子　白髪葱
　利尻昆布と鮪出汁　柚子の香り
向付　サワラの藁焼き
　三重県鳥羽産のサゴシ
　ワサビとニンニク
鉢肴　グジの松毬焼き
　山口県萩産甘鯛
　鬼おろし　スダチ
強肴　花ズッキーニ
　ハモしんじょ詰め
食事　4つのご飯　新潟県産新之助
　アルデンテ　炊き立て
　蒸してから　お焦げ
香の物　留椀
水菓子　わらび餅
煎茶

NM CHAMPAGNE BRUT Graod Cru
　Bernard Bremont　1600円/120mlグラス

磯自慢　純米吟醸　55　山田錦　磯自慢酒造
　静岡県 1800円/1合徳利
鳳凰美田　劔　辛口純米瓶燗火入れ　小林酒造
　栃木県　1400円/1合徳利
伯楽星　新酒　特別純米　新澤醸造店
　宮城県 1400円/1合徳利

別途消費税・サービス料10％