Creality社の2024年モデル「Ender-3 V3 Plus」は、高性能かつ大型化された一般消費者向け3Dプリンターです。Ender-3シリーズの安価さを保ちつつ、印刷サイズを拡大しながら、高速印刷と高品質を両立させています。
3Dプリンタ大好き いつもの匠 です。
いまやCreality信者となってしまった匠ですが、大型出力にはまだ手を出せていませんでした…
本記事では、筆者が既に保有している Ender-3 V3 SEと比較して、Ender-3 V3 Plusの実力をレビューします。この記事を読めば、Ender-3 V3 Plusが期待通りの3Dプリンタかを把握して、購入検討ができます。
Ender-3 V3 Plus単独のレビュー結果を知りたいのであれば、以下の記事を参考にしてください。
Ender-3 V3 Plus 比較1.スペック/基本構成
Ender-3シリーズは、Creality社の人気3Dプリンタです。その中でも、2023年に発売されたEnder-3 V3 SEはエントリークラス、2024年発売のEnder-3 V3はミドルクラスの3Dプリンタです。
Creality製品のうち、PlusやMaxがつくモデルは大型出力ができるラインだよ
Ender-3 V3 PlusとEnder-3 V3 SEについて、詳細なカタログスペックを比較した表が以下です。
仕様 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
造形サイズ | 300 x 300 x 330 mm | 220 x 220 x 250 mm |
本体サイズ | 410 x 445 x 577 mm | 420 x 366 x 490 mm |
本体重量 | 11.5 kg | 7.34 kg |
最大造形速度 | 600 mm/s | 250 mm/s |
最大加速度 | 20000 mm/s² | 2500 mm/s² |
層の高さ | 0.1-0.35 mm | |
最大ノズル温度 | 300°C | 260°C |
最大ベッド温度 | 100°C | |
ディスプレイ | 4.3インチHDカラータッチスクリーン | 3.2インチカラーノブ式スクリーン |
プリントヘッド | CoreXZ方式 | スプライトダイレクトエクストルーダー |
自動レベリング | 搭載 | |
Z軸構造 | CoreXZ構造 | デュアルZ軸 |
Y軸構造 | デュアルモーター駆動 | 8mmリニアシャフト |
2ノズル径 | 0.4 mm | |
2フィラメント径 | 1.75 mm | |
ベッド | フレキシブルテクスチャープレート | PCスプリングスチールプレート |
フィラメントセンサー | 搭載 | なし |
停電復帰機能 | 搭載 | |
サポート素材 | PLA, TPU(95A), PETG ABS, PLA-CF, PETG-CF CR-carbon | PLA, PETG, TPU(95A) |
表示言語 | 英語/日本語ほか全11言語対応 | 英語/日本語ほか全10言語対応 |
定格電圧 | 100-120V~, 200-240V~, 50/60Hz | |
定格電力 | 350W | |
WiFi接続 | 標準搭載 | なし |
スマホアプリ対応 | Creality Cloud 対応 | 非対応 |
※赤字は優位点 |
カタログスペック上、サイズや速度、精度、操作性、ネットワーク機能など、あらゆる面でEnder-3 V3 Plusが優れている結果となっています。
Ender-3 V3 Plusは、Ender-3 V3 SEより劣るスペックはないよ
以降の比較では、これら差分がある機能について、どれくらい差があるかを具体的に紹介します。
Ender-3 V3 Plus 比較2.サイズ
3Dプリンタのサイズは、重要な選択ポイントです。なぜなら、確保すべき設置場所を考慮すると、本体サイズが重要です。また、出力可能サイズによって、制作できる成果物が異なるからです。
狭いマンションの我が家では、3Dプリンタの大きさは大事な検討ポイントなんだよね…
サイズ比較A:本体サイズ
本体サイズを単純比較した写真は以下です。
同じ3Dプリンタでありながら、通常サイズと大型サイズの違いがある二機種です。
パッと見で明らかに分かるくらい、大きさが違うよね
項目 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
本体サイズ | 349 x 364 x 490 mm | 349 x 364 x 490 mm |
実際の購入にあたっては、これらのサイズをよく考慮して購入した方が良いでしょう。
可動範囲を考慮して、周囲に20cmは余分にあった方がいいよ
サイズ比較B:最大プリントサイズ
Ender-3 V3 PlusとV3 SEでは、最大プリントサイズも大きく異なります。カタログスペックでは分かりにくいですが、ベッドプレートのサイズは大違いです。
項目 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
出力可能サイズ | 300 x 300 x 330 mm | 220 x 220 x 250 mm |
ベッドプレートを重ねると、さらにその違いがくっきり分かります。
実際にEnder-3 V3 SE と Ender-3 V3 Plusで、最大サイズで出力した板を比較した結果がこちらです。
もっと具体的に最大出力した立方体で体積を比較した結果、こんな感じでした。
大きければ大きいほど選択肢が広がるよね。
率直に最大プリントサイズは大きい方が良いです。Ender-3 V3 Plusであれば、1足分のシューズの出力もできてしまいます。
Ender-3 V3 Plusでシューズ(クロックス 26.5cm)を、実際に出力した結果が以下です。
大きいは正義だね!
Ender-3 V3 Plusサイズだからこそ、出力できる成果物が多数ある点は考慮ポイントになります。
Ender-3 V3 Plus 比較3.出力速度と精度
3Dプリンタの高速化は、2023年以降の大きなトレンドです。一方で、出力が高速化しても出力精度が悪ければ、結局は速度を落としてチューニングを強いられます。つまり、高いレベルで出力速度と出力精度のバランスが良い3Dプリンタか、それも3Dプリンタ選びの重要ポイントになっています。
カタログスペックで出力速度はともかく、出力精度は分からないからね…
本記事では、出力速度に加え、出力精度について検証しました。
前提.出力精度を高めるフレーム
Ender-3 V3 PlusとEnder-3 V3 SEの間には、出力を支えるフレーム機構に大きな差があります。
まずY軸(縦軸)の安定性です。従来通り、Y軸フレームが1本のEnder-3 V3 SEは前後の揺れに弱い機構になっています。一方、Y軸フレームを支えるサポートが追加され、Ender-3 V3 Plusは前後の揺れに強い機構になっています。
さらにY軸の上角を確認すると、安定性を高める機構が分かります。Ender-3 V3 SEの縦横のフレームを組み合わせる機構である一方、Ender-3 V3 Plusは継ぎ目のない一体型フレームです。
ネジの緩みによる揺れや壊れなどがなく、Y軸を覆う一体型フレームで出力を安定させる機構になっています。
組み立てやすくなるメリットもあって、一体型フレームは便利だよ
このように出力を支えるEnder-3 V3 Plusのフレームは、従来型のEnder-3 V3 SEより安定する機構となっています。
出力速度
Ender-3 V3 Plusの最高出力速度は 600 mm/s です。一方、Ender-3 V3 SEの最高出力速度は 250 mm/s です。最大加速でも大きな差があります。
仕様 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
最大造形速度 | 600 mm/s | 250 mm/s |
最大加速度 | 20000 mm/s² | 2500 mm/s² |
2モデルの出力を、実際に比較した動画は以下です。
実際のEnder-3 V3 Plusは平均300mm/sくらいの速度らしいけど、一見して分かるくらいに Ender-3 V3 SE よりも明らかに早いよね
ちなみに、上手くチューニングすれば Ender-3 V3 Plusは以下の動画くらいの速度(約600mm/s)で出力する能力を有しています。
この速度の違いが、大きな所要時間の違いを生みます。例えば、3DBenchyを最高出力速度、最高加速度で出力すると以下です。
対象 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
3DBenchy | 26分20秒 | 46分50秒 (約1.8倍) |
3DBenchyの場合
3DBenchyでさえ、2倍近い出力時間の差があります。これが大物の出力になるほど、所要時間はより大きな差になります。例えば、以下はサンダルの出力時間の比較結果です。
対象 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
3DBenchy | 7時間1分14秒 | 18時間34分52秒 (約2.6倍) |
あるサンダルの場合
このようにEnder-3 V3 PlusとEnder-3 V3 SEの間には、出力時間に大きな差があります。これが作業効率に大きな影響を与えます。
そりゃ速ければ速いほど、絶対に便利だよね!
ただし、速ければ良いわけではなく、速くてキレイに出力できる必要があります。
出力精度
高速さが魅力のEnder-3 V3 Plusですが、高精度の出力もポイントです。これはEnder-3 V3 SEの出力結果と比べれば明らかです。
(色違いの同じフィラメントで出力した結果)
(色違いの同じフィラメントで出力した結果)
3DBenchyという定番のテストデータを出力してみると、その違いは明らかです。Ender-3 V3 Plusはキレイな表面で出力できた一方、Ender-3 V3 SEは表面が荒れたり、歪みが出たりしています。
もちろん、スライサーでチューニングすれば、同じ品質で出力できるかもしれません。しかし、Ender-3 V3 Plusのようなチューニング無しでキレイに出力できる精度の高さは、重要な判断材料になります。
チューニングしなくても高品質に出力できて欲しいよね
分かりやすく3DBenchyで比較しましたが、他の成果物でも同じように出力品質に差が出やすい結果でした。つまり、Ender-3 V3 Plusの方が高速かつ高精度に出力できる、3Dプリンタだと裏付けられました。
Ender-3 V3 Plus 比較4.操作性の良さ
Ender-3 V3 PlusとV3 SEは、3Dプリンタの操作や管理のしやすさには大きな差があります。以下は関連するカタログスペックです。
仕様 | Ender-3 V3 Plus | Ender-3 V3 SE |
---|---|---|
ディスプレイ | 4.3インチHDカラータッチスクリーン | 3.2インチカラーノブ式スクリーン |
フィラメントセンサー | 搭載 | なし |
停電復帰機能 | 搭載 | |
表示言語 | 英語/日本語ほか全11言語対応 | 英語/日本語ほか全10言語対応 |
WiFi接続 | 標準搭載 | なし |
スマホアプリ対応 | Creality Cloud 対応 | 非対応 |
※赤字は優位点 |
操作パネル
Ender-3 V3 Plusは液晶タッチパネルを搭載しているため、その操作のしやすさは明白です。
3Dデータ選びでフリック操作が効かない点を除けば、総じて使いやすい液晶タッチパネルになっています。
一方、Ender-3 V3 SEはタッチ操作非対応、ノブ操作型の液晶パネルです。
反応は良いですが、メニューの作りの分かりづらさや、操作性の煩わしさを感じるのは致し方ありません。
どちらも日本語対応はしてるけど、アップデートなど欲しい機能を搭載しているEnder-3 V3 Plusの良さが際立つよ!
なお、Ender-3 V3 SEをタッチパネル対応させるには、以下のオプションパーツの購入が必要になります。
これは余談になりますが、タイムラプス撮影 および リモート監視をするWebカメラは、いずれも同社の「Nebula カメラ」のみ対応しています。(V3 SEはOctoPrintを活用するケースを除く)
Nebulaカメラは便利だけど、白黒でしか撮影できないのは唯一の難点…
アプリ&PC連携
Ender-3 V3 PlusはWi-Fiを標準装備しており、「Creality Print」から直接出力できます。
スマートフォンアプリ「Creality Cloud」で直接操作できます。
ネットワーク機能を搭載していないため、Ender-3 V3 SEはCreality Cloud アプリ非対応です。もしEnder-3 V3 SEをCreality Cloudアプリに対応させたい場合には、別途追加パーツを購入する必要があります。
自宅外からでもスマホで出力停止できたりして、リモート操作できる利点は大きいよ!
このように操作パネルやスマホ対応を見ても、Ender-3 V3 Plus は扱い3Dプリンタになっています。
Ender-3 V3 Plus 比較5.価格
Ender-3 V3 PlusとV3 SEについて、最後の比較は価格です。
製品名 | 標準価格 | 実売価格※ |
---|---|---|
Ender-3 V3 Plus | 72,709円 | 61,800円 |
Ender-3 V3 SE | 30,222円 | 25,999円 |
※執筆時点のCreality Store価格 |
実売価格でEnder-3 V3 PlusはV3 SEの約2.5倍近い価格になっています。大きな性能差がある部分、価格も高額になるのは仕方ないところではあります。
性能を取るか、安さを取るか、それが問題だ…
「安物買いの銭失い」という ことわざ もあるし…
Ender-3 V3 Plusを検討する場合、速度や精度、操作性はもちろん重要です。しかし、V3 SEではどうしても実現できない大型サイズ出力の可否が判断の分かれ目になります。また、速度や精度、操作性は、すべて3Dプリントにかかる作業時間に直結します。もしそれらの作業時間を短縮して、少しでも時短をしたいならEnder-3 V3 Plusを選ぶべきでしょう。
Ender-3 V3 Plusは完全な上位互換モデルだった
本記事では、Ender-3 V3 SEと比較したてEnder-3 V3 Plusのレビュー結果を紹介しました。詳細まで比較した結果は以下でした。
Ender-3 V3/V3 Plus は、Ender-3 V3 SEの上位モデルの位置づけです。そのため、性能面でEnder-3 V3 Plusが圧倒するのは当たり前の結果と言えます。
Ender-3 V3/V3 Plusを選んだ方が、3Dプリンタ初心者は挫折しにくいと感じたよ
また、Ender-3 V3 Plusを選ぶ最大のメリットは出力サイズの大きい点です。シューズやカゴ、家具などを作りたい野であれば、Ender-3 V3 Plusを選んで損はないでしょう。
この結果を踏まえ、Ender-3 V3 Plusを購入すると良い人は、以下に該当する人です。
- 安価な大型サイズ出力の3Dプリンタを使いたい人
- シューズを試作・制作したい人
- タブレットグッズを製作したい人
- 少し大きな実用品(引き出しなど)をDIYしたい人
- 大型の人形を制作したい人
これらの条件に該当する人であれば、以下からEnder-3 V3 Plusの購入を検討すべきです。
普通サイズで出力したいのであれば、Ender-3 V3 が良いよね。
配置場所が狭い場合などは、以下からEnder-3 V3の購入を検討すると良いでしょう。
Ender-3 V3 Plus単独のレビュー記事もありますので、併せてチェックしてくださいね。