セグメントを複数フィルタで正確に使いこなすためのコツとは?(第87回)
Googleアナリティクスのセグメント活用法を解説するこのコーナーだが、前回と前々回は「1つのフィルタ」で、
- 複数条件を満たす場合の設定(AND)
- どれか1つでも条件満たす場合の設定(OR)
- 除外条件の各種設定
の使いこなしについて解説した。今回は、「複数のフィルタ」を利用した場合について解説する。
まず「複数のフィルタ」とは、大きく次の2つであると考えていただきたい。
- 「条件」や「シーケンス」分類以外の画面で、複数の項目で条件指定した場合
- 「条件」や「シーケンス」分類の画面で、複数のフィルタを利用して条件指定した場合
複数のフィルタで、AND、OR、除外を使うと、一度で細かくセグメントした条件で分析ができる一方、正しい理解がないと間違った分析をしてしまうことが多い。しっかり理解しておこう。
パターン①で複数条件を指定した場合はAND条件になる
図1がパターン①の例だ。
セグメント新規作成画面の「ユーザー属性」分類が選択されている(図1赤枠部分)状態で、
- 性別(図1青枠部分)
- 言語(図1緑枠部分)
の2つのディメンションによる条件指定がされている。このように2つ以上の項目での条件指定がある場合が、複数フィルタを利用した設定の1つ目のパターンだ。
図1のように性別と言語による2つの条件指定がされているセグメントは、AND条件(条件の掛け合わせ)になるのだろうか、それともOR条件(条件のどちらか一方を満たせばよい)になるのだろうか。
答えはAND条件だ。検証方法は、汎用的に条件を指定できる「条件」分類の画面で同様の設定をして比較してみればよい。
まず図1の設定画面で「性別」が「男性(male)」、「言語」が「ja(日本語)」と指定した(図2赤枠部分)セグメント条件に合致したユーザー数とセッション数はそれぞれ、1,170と1,982であることが右側に表示される概要で確認できる(図2青枠部分)。
比較のために、「条件」分類の画面で同様の設定をしてみよう。1つのフィルタ内でAND条件の指定(図3 赤枠部分)をしたのが図3だ。
図2のユーザー数・セッション数(図2青枠部分)と合致している。複数の条件指定がされているセグメントは、AND条件(条件の掛け合わせ)になるのがわかる。
念のため、OR条件を指定(図4赤枠部分)したのが図4だ。図2のユーザー数・セッション数(図2青枠部分)と合致していないことを確認しよう。
ちなみに「ユーザー属性」分類の「性別」(図1青枠部分)と「言語」(図1緑枠部分)の条件指定はどちらもセッションベースなので(第83回の記事を参照)、ここではどちらも「フィルタ」「セッション」「含める」というセッションベースのフィルタを指定している(図3緑枠部分、図4緑枠部分)。
パターン②で複数条件した場合もAND条件
図5は、パターン②「条件」や「シーケンス」分類の画面で、複数のフィルタを利用して条件指定した場合の例だ。
セグメント新規作成画面の「条件」分類が選択されている(図5赤枠部分)状態で、
- トップページを閲覧したセッションのフィルタ(図5青枠部分)
- 別のページを閲覧したセッションのフィルタ(図5緑枠部分)
の2つの条件指定がされている。このように「条件」あるいは「シーケンス」分類の設定画面で2つ以上のフィルタでの条件指定がある場合が、複数フィルタを利用した設定のもう1つのパターンだ。この場合は「+フィルタを追加」ボタン(図5黒枠部分)で条件を重ねていくことになる。
パターン②の例として、先ほどと同じく「『性別』が『男性』」のセッションというフィルタと「『言語』が『日本語』」のセッションという2つのフィルタを掛けたセグメントを指定してみたのが図6だ。
1つ目のフィルタはまずセッションベースなので、「セッション」「含める」を選択(図6赤枠部分)。その下は「性別」「完全一致」「male」と指定(図6青枠部分)して、まず「『性別』が『男性』」のセッション条件を作成する。
続いて「+フィルタを追加」(図6緑枠部分)をクリック。2つ目のフィルタは「セッション」「含める」を選択し、その下は「言語」「完全一致」「ja」と指定(図6黄枠部分)すればよい。
該当のセグメント条件に合致したユーザー数とセッション数はそれぞれ、1,170と1,982(図6黒枠部分)だが、これは図3の「『性別』が『男性』」かつ「『言語』が『日本語』」のセッションのセグメントの数値と合致している(図3青枠部分)。
すなわち複数のフィルタの併記は、条件を掛け合わせる「AND」条件であることがわかる。
逆に言えば、「OR」条件を指定したいなら、図4のような1つのフィルタ内で「OR」条件を使う方法しかないとも言える。
複数フィルタで除外を指定するには?
以上が複数フィルタを利用する場合の基本になるが、あとは「除外する」の利用やユーザーベースとセッションベースの組み合わせ利用、といったあたりで難易度が上がる。まず「除外する」を試してみよう。
先ほども説明したように、2つのフィルタの併記は「AND」条件になるので、図7は「『ブラウザがInternet Explorer以外』かつ『オペレーティング システムがWindows以外』のセッション」のセグメント設定なのはわかるだろう。
これはつまり、「『除外する』かつ『除外する』」の指定パターンになるわけだが、この設定の意味を正確に頭の中に思い描くことができるだろうか? じつは私でも少々心もとないので、こういう場合は誰でもわかるような視覚化をしよう。
「除外」AND「除外」を視覚化するには?
まず1つ目の条件「ブラウザがInternet Explorer以外」は「ブラウザ」×「オペレーティング システム」のマトリックスで図示すると、図8一番上の表の黄色部分になるのはご理解いただけるだろう。
次に2つ目の条件「オペレーティング システムがWindows以外」は、図8真ん中の表の黄色部分になる。
そしてこの2つの条件がどちらにも合致する部分、つまりどちらも黄色の部分はどこかといえば、図8一番下の表の黄色部分になる。
これがこのセグメント条件で抽出できるセッション条件だ。頭の中にイメージしていたとおりだっただろうか?
「除外」AND「含む」を視覚化するには?
今度は除外フィルタと含むフィルタの混在の例だ。図9は「『ブラウザがInternet Explorer以外』かつ『オペレーティング システムがWindows』のセッション」のセグメント設定だ。
で、図8と同様に該当する部分を表にしていくと、最終的には図10一番下の表の黄色部分が、このセグメントで抽出できるセッション条件になることがわかるだろう。
「ユーザーベース」と「セッションベース」、「含む」と「除外」が混在している場合
最後はユーザーベースの例を取り上げる。「eコマースサイトでカート投入することのなかったユーザー」の中で「特集ページを見たセッション」を抽出するセグメント例が図11だ。
1つ目のフィルタが「カート投入することのなかったユーザー」を指定する部分(図11赤枠部分)で、2つ目のフィルタが「特集ページを見たセッション」を指定する部分(図11青枠部分)になる。
このセグメント例は、ユーザーベースとセッションベース、含むと除外が混在しているが、まだわかりやすい方ではないだろうか。
次の2つ目の例は、eコマースサイトで「集計対象期間内に一度でも1回の購入で5万円以上買ってくれたユーザーのすべての訪問」から、「ディスプレイ広告や検索連動型広告やメルマガからの訪問を除いたセッション」の利用行動に絞り込んだセグメントの例だ。
1つ目のフィルタが「1回の購入で5万円以上買ってくれたユーザー」を指定する部分(図12赤枠部分)で、2つ目のフィルタが「ディスプレイ広告や検索連動型広告やメルマガからの訪問を除いたセッション」を指定する部分(図12青枠部分)になる。
このケースは、一度に多額の購入をしてくれたユーザーのうち自主的な手段で訪れたセッションは、いったい何がきっかけで来てくれて、どんな行動をしているのだろうという問題意識を持っていて、それを探るためのセグメントだ。
複数のフィルタで、AND、OR、除外を使いこなせれば、かなり複雑に絞り込んだ条件でセグメント化し、一発で深い分析することができるようになる。ぜひ臆せずに挑戦してみていただきたい。
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