メタがポリシー変更、同性愛者とトランスジェンダーへの「精神疾患」発言を許容へ

Instagram、Threads、Facebookを擁するメタ・プラットフォームズは1月7日、コンテンツモデレーション・ポリシーに複数の変更を加えた。なかでも、移民とジェンダーに関する議論をカバーする「ヘイト行為」ポリシーへの変更は衝撃的だ。
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Photograph: David Zalubowski

メタは1月7日(米国時間)、ファクトチェックパートナーシップの終了や、同社が「政治的な議論やディベートの頻出トピック」と位置づける「移民、ジェンダーアイデンティティ、ジェンダー」に関する発言制限の「撤廃」を含むコンテンツモデレーション・ポリシーの大幅なアップデートを発表した

「テレビや議会で発言できることが、わたしたちのプラットフォームでは発言できないというのは適切ではない」。メタのグローバル渉外部門の最高責任者に新たに就任したジョエル・カプランは、変更内容について説明するブログ投稿にこう記した。

このブログの動画のなかで最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグは、これらの分野におけるメタの現行ルールを「主流の言説から乖離している」と表現した。

発言制限の緩和

この発表に合わせて、同社はInstagramThreadsFacebookを含むメタのプラットフォーム上で禁止されるコンテンツの種類を定める包括的な規則である「コミュニティ規定」全体に多くの更新を加えた。最も衝撃的なのは、移民とジェンダーに関する議論をカバーする「ヘイト行為」ポリシーへの変更だ。

顕著な方針転換として、同社のポリシーは「トランスジェンダリズムと同性愛にまつわる政治的・宗教的議論が存在し、また『変わっている』のような言葉が一般的に深刻な意味を持たずに使用されている状況を考慮し、ジェンダーや性的指向に基づく精神疾患や異常性の主張を許可する」としている。

つまり、メタはいま、ユーザーがトランスジェンダーや同性愛者に対して、その性表現や性的指向を理由に、精神疾患があると非難することを許可するようになったとみられる。同社は、このポリシーの明確化を求める要請に対して、回答をしなかった。

メタの広報担当者であるコーリー・シャンブリスは『WIRED』に対し、これらの制限は世界的に緩和されると説明した。ヘイトスピーチに関する厳格な規制を持つ国々で異なるポリシーを採用するのかと尋ねると、シャンブリスは、メタの現行の現地法対応ガイドラインを参照してほしいと言った。

そのほかの変更点

1月7日、メタのヘイト行為ポリシーに加えられたほかの重要な変更点は以下の通りだ。

  • 人種、民族、ジェンダーアイデンティティなどの保護特性(protected characteristics)に基づいて人々を標的にし、「コロナウイルスの保有や拡散」を主張するコンテンツを禁止する文言が削除された。この変更により、例えば中国人にコロナウイルスパンデミックの責任があると非難する投稿が可能になる可能性がある。
  • 新たな追加項目では、例えば女性は軍隊で働くべきでない、あるいは男性は数学を教えるべきでないといったような、ジェンダーに基づく主張をするための余地が設けられた。新しいメタのポリシーは、「軍事、法執行機関、教職に関して、ジェンダーに基づく制限について議論することを許可する。また、宗教的信念に基づく場合、性的指向についても同様のコンテンツを許可する」としている。
  • 社会的排除(social exclusion)に関し、メタが許可する内容について詳述されている。「トイレ、特定の学校、特定の軍事・法執行機関・教職の役割、健康やサポートグループなど、性別やジェンダーによる制限が一般的な空間へのアクセスを議論する際、人々は性別やジェンダーに基づく排他的な表現を使用することがある」としている。これまでこの例外は、健康やサポートグループを特定のジェンダーに限定する議論にのみ適用されていた。
  • メタの以前のヘイト行為ポリシーは、ヘイトスピーチが「オフラインでの暴力を助長する可能性がある」という文章で始まっていた。2019年以来ポリシーに存在していたこの文言は、7日にリリースされた更新版からは削除された(18年、人権団体からの報告を受けて、メタはそのプラットフォームがミャンマーの宗教的マイノリティに対する暴力を扇動するために使用されたことを認めている)。最新のアップデートでは、「差し迫った暴力や脅迫を扇動する可能性のある」コンテンツを禁止する文言は、ポリシーの末尾に維持されている。

同時に、今回のアップデートでは、メタが長年にわたって設けてきた制限事項の多くが保持されている。ホロコースト否定、ブラックフェイス、ユダヤ人がメディアを支配していると示唆する表現の禁止は、現行版のポリシーで維持されている。また、黒人を「農機具」に例える特定の禁止事項も追加している。

メタはまた、人種、民族性、出身国、障害、宗教的所属、カースト、性的指向、性別、ジェンダーアイデンティティ、重病を含む保護特性のリストも維持した。さらに、移民、入国者、亡命希望者を「Tier 1」に分類される「最も深刻な」攻撃から保護するポリシーも継続している。これには保護特性や移民としての地位に基づいて、人々やグループを標的にするコンテンツが含まれる。

以前のポリシー同様、メタは移民および保護特性グループに属する人々を昆虫、動物、病原体、その他の「非人間的生命体」と呼ぶことや、彼らが犯罪者または不道徳であると主張することを引き続き禁止している。トランプ次期大統領が2023年に発した「不法移民が我が国の血を毒している」といった著名人による極端な排外主義的発言がメタのプラットフォームに投稿された場合は、依然としてポリシー違反となる可能性がある。この特定の発言が許可されるかについて『WIRED』はメタに尋ねたが、回答はなかった。

(Originally published on wired.com, translated by Mamiko Nakano)

※『WIRED』によるメタ・プラットフォームズの関連記事はこちら


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