[論説]度重なる自然災害 農業守る万全な対策を
「経験したことがない災害」。地震や豪雨などに見舞われた地域で、こうした言葉がよく聞かれるようになった。石川県能登地方では元日の地震に続き、9月の豪雨で約950ヘクタールもの農地が冠水、うち100ヘクタールは原形をとどめていない。高齢化が進む中山間地域だけに、農業復旧までの道のりは険しい。
宮崎県も同様だ。8月8日には日向灘でマグニチュード7・1の地震が発生、政府は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。8月下旬には台風10号の通過に伴う、竜巻と見られる突風が相次いで発生。国富町と宮崎市、門川町、都農町、新富町、西都市を襲った。10月にも宮崎市で突風が吹き、キュウリなどのハウスが倒壊。同下旬には異例ともいえる線状降水帯ができ、日南市でスイートピー、ピーマンなどのハウスが浸水する被害が出た。
地震に加えて竜巻、豪雨などの災害が重なれば家屋や施設はさらに傷み、被害は深刻化する。被災した農家からは「このままでは農業を続けられず、安心して暮らせない」といった声も上がる。
自然を相手にする農業は温暖化の影響をまともに受ける。災害のたびに離農が増えれば、石破政権が力を入れる地方創生はできず、食料安全保障も確保できない。浸水した農機の修理や購入なども含め、被災農家の負担を極力減らし、農業を早期に再開できる万全な支援が求められる。
豪雨時の水路や農地の見回りも厳禁だ。能登豪雨の際も、田んぼの見回りに行った農家が命を落とした。
2日正午までの24時間降水量は九州、山口県で最も多いところで200ミリ。福岡管区気象台は、土砂災害や低地での浸水、河川の増水や氾濫に警戒を呼びかける。自治体やJAなどでも、農地や水路の見回り厳禁を発信しよう。
気象庁が発表する線状降水帯発生の予報的中率は、今年は10%にとどまり、的中率の向上も求められる。
集落ごとに防災計画を立てて災害時の対応を明文化し、スムーズな避難につなげた例もあるが、ここまで災害が頻発すれば集落だけで対応するのは難しい。衆院選で自民党などは防災と減災、国土強靱化、防災庁の設置などを公約に掲げた。災害はいつでも起こり得る。命と暮らし、農業・農村を守るために、公約実行へただちに着手すべきだ。