[論説]カット野菜の安値縛り 機動的な交渉の機会を
カット野菜で代表的な千切りキャベツは店頭で1袋100円前後と、値頃さと価格の安定感でニーズをつかんできた。カット業者は原料野菜の産地と年間契約し価格や取引量を設定。不作で市場価格が高騰する局面があっても、年間でならせば契約する生産者・カット業者双方で利益が出るというモデルだった。
ところが今年は、例年なら青果相場が落ち着く11月から全面的に急騰。カット野菜の主原料であるキャベツの卸価格は11月以降、平年比2、3倍の水準が1カ月以上続く。一方、各地区大手7卸の取引量は、高温の影響で平年比2、3割の減。量の減少以上に卸価格の上昇が大きいのは、カット野菜を巡る構造の“いびつさ”が背景にある。
カット野菜は、小売りで青果が値上がりする一方で、価格は変わらず、割安感を出して売れる。このため、契約産地からの仕入れでは量が足りず、業者は採算を度外視して市場から買い付け、相場はつり上がる――。こうした悪循環から抜け出せずにいる。
カット業者と農水省が定期的に開いてきた意見交換会では「調達費の上昇で赤字が出ている」とカット業者が窮状を訴えた。相場と連動してカット野菜の価格も変動できるよう「小売りに改善を求めたい」と、同省に後押しとなる指針の策定を求めた。
同省は、生産コストを反映した野菜の価格形成の仕組みづくりへ検討を進めるが、コスト上昇に見合った価格設定だけではなく、異常高温や災害など回避できない場合に応じた柔軟な価格交渉や変更、タイミングも重要となる。
カット野菜大手のサラダクラブの金子俊浩社長は「(容量や価格を)柔軟に変えていかないと、われわれも生産者も共倒れになってしまう」と千切りキャベツの1袋100円からの脱却を掲げる。
産地は前倒しで収穫を進めており、面積当たりの収量が減り年間収入が落ち込む恐れもある。カット野菜関係者は産地も工場も大規模化し、撤退した場合の影響は大きい。
2018年2月にも同様の構図でキャベツ価格が高騰し、カット業者が苦境に立たされた。こうした事態が繰り返されるのは柔軟な価格交渉の機会を設ける商習慣が根付いていないからだ。“物価の優等生”とされるカット野菜の実態を伝え、消費者の理解を醸成する必要がある。