芸名”愛内里菜”の無期限使用禁止は「公序良俗違反」 事務所が敗訴

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 歌手の愛内里菜さんと専属契約を結んでいた芸能事務所が、「芸名を承諾なしに使ってはいけない」との契約条項を根拠に「愛内里菜」の芸名を使わないよう愛内さんに求めた訴訟の判決が8日、東京地裁(飛沢知行裁判長)であった。判決は、契約条項は「公序良俗に反し、無効だ」と述べ、事務所の請求を退けた。

 訴状などによると、愛内さんと事務所は1999年5月に専属契約を締結。「契約期間中はもとより契約終了後も、芸名を事務所の承諾なしに使ってはいけない」との条項があった。

 民法は「公序良俗に反する法律行為は無効」と定めており、訴訟では主にこの条項が無効かどうかが争われた。こうした条項の有効性に関する判決は初めてとみられる。

 判決はまず、名前などが客を引きつける力を持つ著名人らが、その価値を商業的に独占利用できる「パブリシティー権」について検討した。

 契約の別条項は、パブリシティー権は「何らの制限なく原始的に事務所に帰属する」としていたが、判決は「合理的な範囲を超えて愛内さんの利益を制約し、公序良俗に反する」として「無効」と判断。パブリシティー権は愛内さんに帰属するとした。

 そのうえで、芸名の無承諾使用を禁じた条項についても「事務所が育成のために投じた資本を回収するなどの狙いがあったとしても、何の代償措置もないまま、無期限に芸名使用を認めるかの権限を(事務所に)持たせることまでを正当化するものにはならない」と指摘。「社会的相当性を欠く」として、この条項も無効だと判断した。

 訴訟では、愛内さんと事務所の契約が現在も続いていると言えるかも争われたが、判決は、マネジメント業務の有無などを踏まえて、「終了したと認められる」とした。

 愛内さんは判決を受け、「胸を張って、愛内里菜として堂々と活動できることを大変うれしく思います」などとするコメントを出した。

 判決や愛内さんのウェブサイトによると、愛内さんは本名とは異なる「愛内里菜」名義で2000年にデビューし、アニメ「名探偵コナン」のテーマ曲などで知られる。

 10年に一度引退し、15年ごろから活動を再開したが、別の名義で活動していた。21年3月からは再び「愛内里菜」名義で活動を始め、事務所側が同年5月に提訴した。

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