第14回小泉悠が重ねるウクライナと漫画ナウシカ 「戦争かっこいい」の先に
ロシアのウクライナ侵攻について的確で深みのある分析を発信する小泉悠さんは「『風の谷のナウシカ』と『新世紀エヴァンゲリオン』に人生をぐちゃぐちゃにされた」と話します。両作品に共通する「破滅後の世界」のリアリティー、『ナウシカ』が描ききった戦争の本性、そして、実際の戦争でも私たちが抱いてしまう「かっこいいなあ」という思いの先にあるものとは――。現実と虚構が交錯する生々しい論考です!
――小泉さんは2018年の論文で、漫画『風の谷のナウシカ』の巨神兵を引用しつつ、ロシアの中東外交を論じていますね。作中の巨神兵はかつて、巨大な破壊力によって大国間の戦争を抑止する「調停者」の役割を果たしていたが、ロシアにはイランとイスラエルの対立を調停するだけの力量はない、と。
『ナウシカ』は僕の中で大きな比重を占めている作品です。映画版を初めて見たのは小学1年生の時。文明が滅びた後の世界を描く「ポストアポカリプス」ジャンルの作品に触れた最初の作品でした。僕の両親は反核運動を熱心にやっていた。両親から聞いていた「核戦争による世界の破滅」と、「その後の世界はこうなる」というナウシカの物語がビビッドに結びついたのです。10代の終わりに漫画版を初めて読んだ時には、「映画版は序の口だったのか!」と改めて衝撃を受けました。
リンクする「ナウシカ」と「エヴァ」
破滅後の世界であることや「自分の運命と世界の命運が直接結びついている」という感覚は、当時はまっていた「新世紀エヴァンゲリオン」をほうふつとさせた。「エヴァ」がテレビで初放映されたのは、僕が主人公たちの年齢と同じ14歳の時でしたが、あれは異常な体験でした。クラスメートたちもみな、「エヴァ」にやられていた。僕の中で『ナウシカ』と「エヴァ」はつながっている。「エヴァ」を創造した庵野秀明監督も漫画版『ナウシカ』から強い影響を受けたと聞いています。ところで太田さん(聞き手の記者)にとって、そういう「原体験」となるような作品はありますか?
――小3の時に読んだ永井豪さんの漫画『デビルマン』ですね。「人間は一皮むけば獣(けもの)になってしまう」ということを幼心にたたき込まれました。すごく怖かったけれど「とても大事なことが描いてある」と直観しました。
記事の後半では漫画『ナウシカ』の戦闘描写とウクライナの戦場を比較することで見えてくる「戦争のネイチャー(本性)」、そして宮崎監督が描く戦闘場面の「かっこよさ」の背後にある、戦争の本質への鋭い洞察へと迫っていきます。
やはりそうですか。僕の世代…
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