医師が救命士への医療行為指示を拒否、パワハラも 県立病院長が謝罪

大久保直樹
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 鳥取県立中央病院(鳥取市)は12日、救命救急センターが、患者を搬送中の救急救命士からの医療行為への指示要請を拒んだり、センターの医師が救急隊員にパワーハラスメントを行ったりする不適切な事案があったと発表した。

 救急救命士は救急搬送中、医師に指示を要請し、気管に管を入れて気道を確保するなどの特定の医療行為を行うことができる。

 病院によると、昨年12月5日、救命救急センター長の医師が、鳥取県東部消防局に対し、「指示要請は応諾しかねる」と対応を拒否する方針をメールで連絡。同14日までの10日間、消防局からの指示要請を拒否したという。この間、実際に搬送時に救急救命士がセンターに指示要請を断られ、ほかの病院の医師の指示を受けながら医療行為を行ったケースもあったという。

 病院は15日から指示要請への対応を再開し、広岡保明院長が病院ホームページに謝罪文を掲載。センター長の医師は、病院幹部の許可を得ずにメールを送信していた。センター長は指示要請を拒んだ理由について病院の聞き取りに対し、救急搬送時の処置手順を定めた「県プロトコル」には不十分な部分があり、医学的観点から医師の責任問題が生じると考えたとの説明をしたという。

 またこの間、センターの医師から救急隊員への高圧的な態度や言動、電話を途中で切るなどの対応があり、パワハラに該当するとして、消防局は病院に調査を要請。病院は調査の結果、1人の医師が救急隊員に対し、「まだベッド移乗もできないの? 質の問題だね」などとパワハラに該当する言動を行っていたと判断した。

 消防局からは約2年前からパワハラ行為があったとの指摘があり、病院は今後、さかのぼって調査する。広岡院長は12日に鳥取県庁で会見を開き、「院内のガバナンスができていなかった。県民のみなさんのみならず、消防職員のみなさんに心配や不安を与えてしまったことを深くおわびしたい」と陳謝した。

 病院から調査結果の報告を受けた東部消防局はコメントを発表し、「県立中央病院の今後の対応にも注視しつつ、当局救急隊員の士気を保ちながら、地域住民のみなさまへの救急サービスが低下することのないよう、日々の業務に努めてまいりたい」などとした。

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この記事を書いた人
大久保直樹
神戸総局|東播地区担当
専門・関心分野
地方自治・過疎問題・原発・史跡などの文化財