おかえり、宮沢賢治のバイオリン 岩手から愛知へ100年ぶり里帰り

臼井昭仁
【動画】宮沢賢治が約100年前に買ったバイオリンとビオラが修理を受けている
[PR]

 童話作家の宮沢賢治が約100年前に購入したバイオリン1台とビオラ2台が、製造された愛知に「里帰り」し、修理を受けている。賢治はクラシック音楽好きで知られ、「セロ弾きのゴーシュ」を晩年に書き残した。3台は、来年1月から愛知県大府市の施設でお披露目される。

 修理に当たっているのは、鈴木バイオリン製造(大府市)。市歴史民俗資料館が企画展「宮沢賢治と音楽」を開催しようと、岩手県花巻市に住む賢治の実弟の孫、宮沢和樹氏から借り受けた。品番などから、同社が1907(明治40)年から33年の間に作ったものだという。

 賢治自身はチェロを愛用していたが、弦楽四重奏による演奏を好み、購入したバイオリンやビオラを学校の教え子らに貸し与えていた。賢治の死後、実弟の清六がそれらを引き取ったといい、今回修理しているのはその一部だ。

 実際に賢治が愛用したチェロは、岩手にある宮沢賢治記念館で保存されており、同社は40年ほど前にその修理を手がけた縁もある。

 現在修理中の3台は、ニスのはがれやネックの反りなどが見られるものの、状態は比較的良いという。同社の小野田祐真(ゆうま)社長は「100年前の楽器だが、音色は温かくて深い。作品に楽器をよく登場させていた賢治が買った楽器として、その歴史的価値を(企画展で)伝えたい」と話す。

 企画展は来年1月25日~5月18日。この3台のほか、賢治直筆の書簡や高畑勲監督のアニメ映画「セロ弾きのゴーシュ」の原画などを展示する。

     ◇

 <鈴木バイオリン製造>  後に「日本のバイオリン王」と呼ばれる鈴木政吉が1887(明治20)年に創業。名古屋市に生産拠点があり、愛知県大府市にも一時、分工場を設けた。2021年、大府市へ本社を移転。市は小学生の授業に使うなど「バイオリンを活用したまちづくり」を進めている。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
臼井昭仁
半田支局長
専門・関心分野
農林水産業、運輸、過疎問題