人身売買の「世界的ネットワーク」の一員か エセックス事件の運転手が出廷
イギリス東部エセックス州でトラックの冷凍用貨物コンテナの中から不法移民とみられる39人の遺体が見つかった事件で、トラックを運転していたモーリス・ロビンソン被告(25)が28日、法廷に出廷した。検察は、ロビンソン被告が人身売買の「世界的ネットワーク」の一員だったとみている。
ロビンソン被告は、チェルムズフォードの治安判事裁判所にビデオリンクで出廷。39件の過失致死のほか、人身売買の共謀、不法入国ほう助の共謀、資金洗浄の罪で起訴された。
オゲネルオナ・イグヨヴウェ検察官は、このうち共謀罪について、「大勢をイギリスに不法入国」させようとする「世界的ネットワーク」に関係するものだと説明した。
この日は罪状認否は行われず、ロビンソン被告は11月25日にロンドンの中央刑事裁判所に出廷する予定。
この事件では当初、犠牲者は中国人だとの見方が広がっていたが、少なくとも6人がヴェトナム人の可能性が出ている。ヴェトナムの警察は行方不明者の家族からDNAのサンプルを採取し、犠牲者の身元特定に協力している。
また、この事件に絡んで逮捕されていた別の3人は、保釈保証金を支払って釈放された。
一方、このコンテナが英仏海峡を渡る前にベルギー・ゼーブルージュ港まで運んだトラックを運転していたとみられる運転手は26日、別の事件についてダブリンで逮捕された。
エセックス警察に協力しているアイルランド警察は、39人死亡事件の関連でダブリン港で押収した青いトラックを、ダブリンで逮捕した男が運転していたとみている。
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被害者の特定進む
エセックス警察は、一度に経験したことのない大勢の犠牲者の身元特定に追われている。
警察は当初、男性31人と女性8人の犠牲者は中国人だとみていたが、ヴェトナムから次々と、家族の安否を心配する声があがっている。
一部の被害者は、イギリスで働きヴェトナムの家族に仕送りすることを目的に、安全に密入国しようと斡旋(あっせん)業者に数千ポンドを支払っていたとされる。
ロイター通信によると、イギリス政府は39人の犠牲者のうち4人について、身元特定のための資料をヴェトナム当局に送付した。
トラックに乗っていたとみられているファン・ティ・トラ・ミさん(26)は22日、家族に「外国への旅は失敗した」とメッセージを送っていた。
またグエン・ディン・ギアさんは、息子のグエン・ディン・ルオンさん(20)について、パリからイギリスへ向かうグループに入ろうとしていると聞かされて以来、連絡が取れなくなったと話している。
エセックス警察は、今回遺体が見つかったトラックが、約100人を運んでいたトラック3台の1台だったという情報についても捜査を進めている。
ジョンソン英首相が追悼
イギリスのボリス・ジョンソン首相は28日、プリティ・パテル内相と共にエセックス州サロックの役所を訪れ、弔問者芳名録に記帳し、市庁舎の外庭に花輪を手向けた。
ジョンソン首相は、「イギリス全土、そして世界中がこの悲劇にショックを受けている。この国でより良い生活を求めた無実の人たちが、このような残酷な運命に襲われ、ショックを受けている」と語った。
「我々はこの事件の責任者の無情を非難し、イギリス政府として加害者に裁きを下すべく、全力を尽くす」
またパテル内相は下院で、コンテナが到着したテムズ川沿いのパーフリート港で国境警備員を「増員」すると説明。ベルギー当局とも、ゼーブルージュ港に応援の入関職員を追加派遣することで合意したと明らかにした。