米富裕層、かつてないほど豊かに-コロナ禍で貧富の差さらに広がる
Davide Scigliuzzo-
ゼロ金利政策など米金融政策で高所得層は手元資金が豊富に
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クレジットや金融市場を利用できない人々の苦境は見えにくく
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新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、米国民は指標によってはかつてないほど豊かになった。
景気が落ち込み、失業者やホームレス、食に困る人が急増する中でそうした状況は理解し難いが、少なくとも上位2割程度の高所得層はこのような問題とほぼ無縁だ。
高所得層はホワイトカラーの職種ゆえに比較的容易に在宅勤務が可能であるだけではない。ゼロ金利政策など米金融当局の前例のない緊急措置で手元資金も豊富になった。記録的な低金利で住宅ローンを借り換え、都市部から脱出するため別荘を購入し、投資口座にある株式・債券の価値急増を目の当たりにした。
こうした膨大な富の蓄積によって、クレジットや金融市場を同じように利用できない人々の苦境が見えにくくなっている。家計の純資産が過去最高を更新する一方、多くの企業が恒久的な営業停止を余儀なくされ、1000万人余りが失業状態にとどまり、その3倍近い人々が日々の食事に困る状況にある。
民主党の次期政権は大規模な追加経済対策を計画しているが、エコノミストらは急激な貧富の格差拡大が社会・政治に与える深刻な影響を警告している。既に所得格差が少なくとも半世紀ぶりの水準近辺にある中で、コロナ禍に伴う家計悪化に対応するための政府措置が誰の支援を意図したのか、誰が取り残されたかという疑問を提起している。
経済の二極化を表現する「K字型」回復の考え方を広めたウィリアム・アンド・メアリー大学のピーター・アトウォーター非常勤講師は「米国の富裕層にとって現在ほど順調な時はこれまでなかっただろう」とした上で、「政策当局者が打ち出した多くの措置は富裕層がパンデミックの影響から最も速やかに回復することを可能にした」と指摘した。
原題:
The Rich Are Minting Money in the Pandemic Like Never Before(抜粋)