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「最終処分どうするの?」すでに2万6000本分ある“核のゴミ”という現実に、日本はどう向き合うべきか

三ツ村 崇志[編集部]

三ツ村 崇志[編集部]

Apr 15, 2023, 6:30 AM

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使用済み核燃料用銅カプセル
フィンランドの最終処分場で試験中の使用済み核燃料用銅カプセル。
Lehtikuva/Emmi Korhonen/via REUTERS/File Photo

嫌なことはついつい先延ばしにしてしまいたくなるものです。ただ、そうはいっても先延ばしできることには限りがあります。

実は日本にも、そろそろ直視しなければならない課題があります。

原子力発電所を稼働させる際に生じる「高レベル放射性廃棄物」、いわゆる「核のゴミ」の処分問題です。

日本で初めて原子力発電による電気が生み出されたのは1963年10月。その後、1966年から本格的に商業利用が始まりました。東日本大震災後には日本にある全ての原子力発電所が停止した時期もありましたが、約60年もの間、私たちは原子力発電所の電力を利用し続けてきました。

当然私たちの手元にはその間に消費した燃料の分だけ高レベル放射性廃棄物が残されています。その数は、最終処分する際の「ガラス固化体」(後述)に換算して、既に約2万6000本にも及びます。

ただ、今のところ、日本ではその最終的な処分場所は決まっていません。

そこで今回の「サイエンス思考」では、原子力政策を考える上で欠かせない、高レベル放射性廃棄物の処分方法や処分場所の選定プロセスについて、さまざまなステークホルダーへの取材をもとに前・後編に分けて解説します。

世界で進む最終処分の議論。一方日本は…?

最終処分場の検討状況。
世界の最終処分場の検討状況。
画像:NUMO

放射性廃棄物をどこに処分するのか。最終処分場の立地は、原子力発電を利用する世界中の国々が共通して抱えている課題です。

この議論が最も進んでいるのは、北欧のフィンランドでしょう。

フィンランドでは、首都のヘルシンキから北西約200キロメートルに位置するオルキルオト島で、2016年から最終処分場の建設が進んでいます。また、同じく北欧のスウェーデンでも、2022年1月に、南部にあるフォルスマルクに最終処分場を建設することが決定。現在は安全審査が進んでいる状況です。

フィンランド最終処分場のトンネル
フィンランドの最終処分場の坑道内部。2022年1月、フィンランドで使用済み核燃料の最終処分事業を担うPosivaは、最初の5つの坑道の採掘を完了したと発表した。
出典:Posiva

原子力国家として知られているフランスでも、北東部に位置するビュール村に最終処分場を建設するための計画が進んでいます。現地住民からの反対の声を受けながらも、議論は大詰めを迎えているといいます

日本でも、2020年11月から北海道西部に位置する寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村という2つの自治体で、最終処分場の候補地選定の最初のプロセスである「文献調査」が始まりました。現在は一通りの調査が完了した段階で、評価する際の考え方などを経産省のワーキンググループと調整しているところだといいます。

ただ、文献調査は最終処分場としての適性を判断する長いプロセスの入口に過ぎません。この2つの自治体のどちらかに最終処分場を建設することが決まったわけではありません。

結局、日本の最終処分場の立地はまだ白紙のままの状況です。

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