「#政党のアレコレ比べてみました」の年金政策一覧。
出典:「#政党のアレコレ比べてみました」
参議院選挙に向けて、各政党の政策を図解した「#政党のアレコレ比べてみました 」がSNSで話題になっている。大阪に住む20〜30代の3人が仕事終わりにマクドナルドに集まり、「自分に優しいこと」を基準に制作した7枚の表が、なぜいま共感を集めているのか。
消費税から原発まで7つのテーマ
花岡さんが政治に関心をもつきっかけになった住民税の通知書。生活に余裕はないという。
提供:花岡凛さん
「#政党のアレコレ比べてみました 」は、参院選の各政党の政策を「消費税」「学費」「年金」「憲法」「保育士不足」「同性婚」「原発」の7つのポイントに絞り、図解したもの。
公示日の7月5日、Twitterに掲載すると「分かりやすい」と多くの人が拡散した。
発案したのは大阪府に住む花岡凜さん(26)。友人2人に声をかけると、「やろう!」と即決。6月半ば頃から準備してきた。デザインも知人が手伝ってくれたそうだ。花岡さんが政治に興味を持ったのはつい最近のことだそう。きっかけは、今年の6月上旬に送られてきた住民税の通知だ。
「この収入からこんなに取るか? と。『ギリギリ生かしはするけど、何にも楽しんだらアカン』と言われているようで、腹が立つし悲しくなりました」(花岡さん)
政治家だけが夢叶える世界で良いの?
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花岡さんは現在は派遣社員として事務職で働いているが、昨年は仕事をしていない期間が長く、所得は100万円弱。住民税の約8万円は、とても大きな金額だ。
国民健康保険と年金の納付、月々の奨学金の返済で生活に余裕はない。花岡さんは生まれも育ちも大阪だが、「今の大阪の雰囲気が嫌い」だといい、地方への移住を計画している。そのために節約しながら少しずつ貯蓄してきたが、税金の納付書を見て「また夢が遠のいた」と感じたそうだ。
「その後、大阪府や市のホームページを見て、税金の使い道を調べたんです。私は自然や緑が大好きなんですが、大阪城公園が民営化され、たくさんの木が切り倒されてたと知ったときはショックでした。一方で、大阪都構想をめぐる首長W選挙にどれだけの税金が使われていたか。
それで思ったんです、知ることって本当に大事だなって。次の選挙に向けて、これは動かないとアカンなと」(花岡さん)
単語一つ一つ調べながら
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政党のマニフェストを分かりやすく比較するものを作りたい。構想はパッと思いついたそうだが、完成までは苦労の連続だったという。
花岡さんたちは通勤時間やランチタイムも使って、報道や政党のホームページに掲載された政策や参院選のマニフェストを読み込んだが、どれも同じようなことを言っているように感じたのだ。
「政策を理解するのも難しいし、そもそも使われている言葉も知らないものばかりで……。単語1つ1つを調べながらのスタートでした。
つくる過程では『見やすさ』と『正確さ』を両立させるのはすごく苦労しました。政治に全く興味のない人や、選挙には行こうと思っているけど何から始めたらいいか分からない、そんな人たちにターゲットをしぼり、選挙の『入り口』『きっかけ』になるものを目指しました。
『自分に優しい』がテーマです」(花岡さん)
私たちは自己責任が染み付いている
参院選の投開票は21日。NPO団体の街頭アンケートでは、若者の8割近くが「投票日を知らない」と回答している(7月9日TBC東北放送より)。
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忙しい毎日の中でもパッと見て理解できる分かりやすい言葉。「年金」「消費税」など選んだ7つのテーマは、報道などで話題になっていることはもちろん、彼女たち自身が興味のあることだという。
例えば、これを見て「高等教育無償化」に興味を持って調べれば、その対象が限定的であることや、すでに減免を受けている学生が制度の対象外になる可能性があることなど、課題点にも辿りつくだろう。
選挙が行われる参議院議員の任期は、衆議院より長い6年間だ。
「私たち世代は『他人に迷惑をかけない』のは当たり前で、自己責任という言葉が染み付いています。だから自分の生活でいっぱいいっぱいで、他人にも政治にも興味を持つ心の余裕がない。この6年間の“慣れ”で生きていける、経済が良くなればもっと良い生活ができると思っている人もいるけど、本当にそうなる?って。それに経済の他にも譲れないものあるんじゃない?って。次の6年に向けて考えてほしいんです」(花岡さん)
(文・竹下郁子)