サラエボ近郊、トレベビチ山にある、荒れ果てたボブスレートラック。
Ioanna Sakellaraki / Barcroft Im / Barcroft Media via Getty Images
- 2020年夏季五輪が東京で開催されている。
- これまでの開催都市のなかには、カナダのモントリオールのように、五輪のために建設した施設の一部の再利用に成功した事例もある。
- だが、巨額投資によって生まれた施設が、解体されたり、放置されて廃墟と化したりするケースも多い。この記事ではそうした実例を写真とともに紹介する。
1:1936年のベルリン五輪のために作られた建物は、90年近くを経た今も残っている
1936年のベルリン五輪の選手村には、かつて水泳プールだった建物が残されている。写真はそのホールに置かれた五輪マーク。2021年5月17日、エルシュタルで撮影。
Maja Hitij/Getty Images
ここは選手村内の水泳プールがあった建物だ。
2:ベルリン五輪の選手村は、ほぼ手つかずの姿で現存している
1936年ベルリン五輪選手村の跡地には、当時選手のために建てられた建物が今も誰も住むことなく残されている。それぞれの住居には、ドイツの都市名がつけられている。
Maja Hitij/Getty Images
ゲッティ・イメージズによるこの写真の説明には、こう書かれている。
「ドイツの不動産デベロッパー、テラプラン(Terraplan)が、この五輪選手村跡地の大部分について、建物の建設や改築を行っている。地元当局は、これがこの地所の再開発に向けた、投資家による取り組みの端緒となることを期待している」
3:1984年の冬季五輪はユーゴスラビアのサラエボで開催された。この五輪からわずか10年足らずで、ボスニア紛争が勃発した
スキージャンプ会場に残された表彰台。
Ioanna Sakellaraki / Barcroft Im / Barcroft Media via Getty Images
当時のユーゴスラビアは、今ではボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、スロベニアに分裂した。
4:ボスニア紛争によってサラエボの街は包囲された。紛争終結後の年月で、街はおおむね復興を遂げたが、このジャンプ台のように、五輪の施設には風雨にさらされ放置されているものも多い
荒れ果てたジャンプ台。
Dado Ruvic/Reuters
サラエボの街自体は現在、ボスニア・ヘルツェゴビナの領土内にある。
5:開会式が行われたコシェボ・スタジアム(現在のアシム・フェルハトヴィッチ・ハセ競技場)は、今では犬のすみかとなっている
ご覧の通り、犬がうろついている。
Dado Ruvic/Reuters
2021年4月の時点では、このスタジアムは正式には地元のサッカークラブ「FKサラエボ」のものとなっている。
6:トレベビチ山のボブスレーコースは、生い茂った木々に囲まれ、至るところに落書きが描かれている
荒れ果てたトレベビチ山のボブスレートラック。
Ioanna Sakellaraki / Barcroft Im / Barcroft Media via Getty Images
だがその後、市当局は市内と山を結ぶロープウェーを再建し、トレベビチ山は再び観光客が訪れる場所となった。
7:時折、恐れ知らずのBMXレーサーが、ボブスレーコースを走行することもある
コースを走るBMXレーサー。
Dado Ruvic/Reuters
確かに勇敢なレーサーたちだ。
8:1996年の夏季五輪は、アメリカのアトランタで開催された。野球競技などに使われた「アトランタ・フルトン・カウンティ・スタジアム」は、大会終了後に解体された
爆破解体されるアトランタ・フルトン・カウンティ・スタジアム。
Reuters
1966年からこのスタジアムを本拠地としていたMLBの「アトランタ・ブレーブス」は、五輪のメイン会場だった新築の「センテニアル・オリンピック・スタジアム」に移転した。同スタジアムは、野球用に改築された後はターナー・フィールドと呼ばれていたが、その後2016年に閉場。現在はアメリカンフットボール専用スタジアムとなり、「センターパーク・スタジアム」に改名された。
9:センテニアル・オリンピック・パークは現役だ。ここでは五輪期間中に、大会に暗い影を落とした爆破事件が起きた
ジョージア州アトランタにある、センテニアル・オリンピック・パークの名が刻まれた場所。2019年7月28日撮影。
Raymond Boyd/Getty Images
この爆破事件の余波は、映画『リチャード・ジュエル(Richard Jewell)』で描かれている。
10:五輪マークをかたどった「ファウンテン・オブ・リングズ」は、涼を求めて水遊びをする市民に人気が高い
ファウンテン・オブ・リングズで写真を撮る家族連れ。
Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images
写真の通り、今も人気のスポットだ。
11:2004年の夏季五輪で開催都市アテネは当初予算を16億ドル(現在のレートで約1760億円)に設定していたが、実際はこれを150億ドル(同1兆6490億円)近く超過したと言われている
ボート競技施設は、今でも多少は使われているが、掲示板は故障したままだ。
Yorgos Karahalis/Reuters
ギリシャ政府はすべての費用の支払いを余儀なくされたが、残念ながら、大会後は大半の建物やスタジアム、コースはまったく使われていない。
12:水泳競技が行われたプールでは、溜まった水が悪臭を放ち、施設も壊れかけている
水泳競技用のプール。
Yorgos Karahalis/Reuters
プールは崩壊しかけている。
13:巨額の資金を投じながら使われなくなった施設の数々は、ギリシャの財政危機を踏まえるとより悲痛に映る
空っぽのプール。
Yorgos Karahalis/Reuters
アクアティック・センターにある練習用プールは、水が抜かれた状態だ。
14:当然ながら、使う人もいない建物の改装にお金が使われることはなかった
五輪の第2会場だったエリニコ・オリンピック・コンプレックスの荒れ果てた建物内の様子。ギリシャのアテネにて、2014年7月31日撮影。
Milos Bicanski/Getty Images
「Welcome home(おかえりなさい)」の文字が虚しい。
15:アテネでは、誰も野球やソフトボールをプレーしていない
ソフトボールの競技場。
Reuters/Yorgos Karahalis
ロンドン・イブニング・スタンダード紙が2012年に掲載した記事は、この施設を管理する職員の話を伝えている。競技場は正式に廃止されたわけではなく、ここでソフトボールをプレーする者が誰もいないだけだという。
16:ビーチバレーの会場は、雑草がはびこっている
ビーチバレーの会場は、砂を突き抜けて雑草が生い茂っている。
Reuters/Yorgos Karahalis
悲しい光景だ。
17:2008年夏季五輪の会場として建設された北京国家体育場は、8万人という収容人数を満たすようなイベントが見つからずに苦戦している
北京国家体育場。
REUTERS/David Gray
だが、2022年の冬季五輪では、再び会場として使用される予定だ。
18:カヌーのカヤック種目が行われた施設は、あまり使われていない
カヌーの競技施設。
REUTERS/David Gray
フェンスに取り付けられたサインには錆が目立つ。
19:ボート競技の会場には、ほぼ人の気配がない
ボートの競技会場。
REUTERS/David Gray
うち捨てられた状態だ。
20:写真のビーチバレー会場をはじめ、多くの施設は一般人の立ち入りを禁じている
一般人は立ち入りできない。
Reuters/David Gray
場内は立ち入り禁止とされている。
21:北京国家水泳センターの一部は、その後ウォーターパークに改装された
五輪が開催されたプール。
REUTERS/David Gray
ウォーターパークは2010年にオープンした。
22:北京で開催される2022年の冬季五輪では、北京国家体育場が再び会場として利用される予定だ
北京国家体育場。
REUTERS/David Gray
北京国家体育場は、夏冬両方のオリンピック・パラリンピックの開会式が開催される、最初のスタジアムになる。
23:2012年、ロンドンは再び夏季五輪を開催した
五輪マークのモニュメント。
Reuters/Neil Hall
クイーン・エリザベス・オリンピック・パークは大会後にさまざまな改装を経て、2014年に一般に公開された。写真の五輪モニュメントは、目で見てわかる形でこのパークの由来を訪問者に伝えるもののひとつだ。
24:このパークと周辺の建物は、ロンドン・イーストエンド地区の活性化に貢献している
上空から見たオリンピック・パーク。
Reuters/Neil Hall
パークの近隣には、インターナショナル・クオーター・ロンドンと呼ばれる再開発地区が作られた。
25:アスリートが滞在した五輪選手村は、住宅に改装された
「メダルズ・ウェイ」と名付けられた道。
Getty Images/Dan Kitwood
改装後のこの地区は「イースト・ビレッジ」と呼ばれている。
26:オリンピック・スタジアムは改修され、2016年からサッカークラブ「ウェストハム・ユナイテッドFC」の新たな本拠地となっている
改修後のオリンピック・スタジアム。
Warren Little/Getty Images
MLBのニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスの公式戦が開催されたこともある。
27:2014年の冬季五輪は、ロシア最大のリゾート都市、ソチで開催された
ソチ五輪の巨大な聖火台。
Maxim Shemetov/Reuters
ソチ五輪は、最も多くの費用がかかった大会で、ロシア政府が拠出した金額は500億ドル(約5兆5000億円)に達した。
28:フィシュト・スタジアムは当初、ドーム式の施設として建設されたが、2018年のFIFAワールドカップに合わせてピッチ部分の屋根が取り除かれ、屋外型スタジアムとなった
改修後のフィシュト・スタジアム。
Artur Lebedev/AP Images
2018年のFIFAワールドカップでは、ソチは試合が開催される11都市のひとつに選ばれた。
29:だが、このエストサドク村にあるジャンプ台をはじめ、残りの施設はほとんど使用されていない
ソチで開催された2014年冬季五輪の会場だったジャンプ台の様子。2018年1月31日撮影。
Friedemann Kohler/picture alliance via Getty Images
人っ子一人いない。
30:前回の夏季五輪は、ブラジルのリオデジャネイロで2016年に開催された。それから5年経った今、写真のアクアティクス・センターをはじめとする会場は、ゴーストタウンと化している
リオのアクアティクス・センター。
Buda Mendes/Getty Images
東京五輪の関連施設は、このような状況に陥らないことを願うばかりだ。
31:マラカナン・スタジアムは五輪に合わせて改修されたが、大会以降はほぼ放置されていた
マラカナン・スタジアム。
Mario Lobao/AP
2021年の南米サッカー選手権「コパ・アメリカ」決勝はここで開催された。
32:構内に押し入った者によって、座席やテレビが盗まれたこともある
スタジアム内部の状況。
AP/Mario Lobao
その後、被害を受けた構内は修繕された。
33:リオ・メディアセンターなど、五輪関連施設の一部は取り壊されたが、跡地は人の健康に害を及ぼすほどの状態に陥っていた
リオ・メディアセンターの跡地。
Mario Tama/Getty Images
これは2016年11月の状況だ。
34:メディアセンターの跡地は、何カ月にもわたって放置されてきた。閉会式から6カ月を経ても、大会当時のゴミがまだ残っていたことがわかる
放置されたゴミ。
Mario Tama/Getty Images
こちらも2016年11月に撮影された写真だ。
[原文:35 eerie pictures that show what happens to Olympic venues after the games end]
(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)