LINEヤフーの存在を9月27日に「LINE」の公式アカウントから配信されたメッセージで知った人も多いのでは。
撮影:小林優多郎
10月1日、LINEヤフー株式会社が発足した。
LINEヤフーはその名の通り、LINEとヤフー、そしてその2社の持ち株会社であったZホールディングス(以下、ZHD)、ZHDグループ会社のZ Entertainment、Zデータを統合した会社になる。
その統合の背景や統合に伴い終了するサービスについては既報の記事にまとめた。
狙いとしては、どちらも国内最大級のサービスであるLINEとヤフー、そしてZHD傘下での決済サービスの「PayPay」の3つのサービスを軸としたシナジーを強固にするためだ。
本稿では、LINEヤフーが発足することで変わる今後の具体的な変化について解説する。
運営母体は変わるも「サービス単体の変化」は少ない
LINEヤフーのコーポレートサイト。
出典:LINEヤフー
とはいえ、ユーザー目線でものすごく変化があるかと言われれば、そうではない。
今後もメッセージアプリやその付随サービスにLINEの名は残るし、ポータルサイトやECのヤフーもそのままだ。
よくある疑問としては、「重複するサービスの扱いが今後どうなるか」というものがある。10月2日時点ではすでに統廃合の実施が決定・実施済みのものが多く、今あるサービスは基本的に存続もしくは今後決定されるという流れだろう。
組織再編が進み、金融事業などは整理された(LINE証券については今後野村證券へ移管)。
出典:LINEヤフー
特に決済サービスである「LINE Pay」と「PayPay」、ニュース配信の「Yahoo!ニュース」と「LINE NEWS」などはそれぞれ一定のユーザー数を持ち、関係する会社も異なっていることから、当面は看板はそのまま、内部的にはリソースをうまく整理していく方針だと考えられる。
なお、LINEとヤフーは両社のプライバシーポリシーについて事業統合前の9月1日に発表済み。新しいプライバシーポリシーへの同意については10月4日から順次LINE、Yahoo! JAPAN上で表示される予定だ。
ID連携は必須ではないが、特典享受のためには必要
3つのサービスの連携が今後実施される。
出典:LINEヤフー
直近でユーザーがしなければならないことは、新しいプライバシーポリシーへの同意ぐらいだろうか。一方、今後最大の注目ポイントとなるのは「ID連携」だ。
現在、LINEは「LINE ID」、ヤフーは「Yahoo! JAPAN ID」、PayPayは「PayPay ID」と、3つのIDがそれぞれ独立して存在している。これらは今後連携させていく方針をLINEヤフーは打ち出している。
詳細な連携方法はいまだに不明ながら、LINE IDとYahoo! JAPAN IDは10月内、PayPayとのID連携は2024年度中を予定している。
ID連携をしなくても、既存のサービスが使えなくなることはないが、今後展開される特典や新機能のいくつかはこのID連携が前提のものとなってくると考えるのが自然だ。
11月29日から開始予定の「LYPプレミアム」。
出典:LINEヤフー
その最たる例が「LYPプレミアム」だ。LYPプレミアムは、「Yahoo!プレミアム」(月額508円)と、「LINEスタンプ プレミアム ベーシックコース」(月額240円)がセットになったもの。
Yahoo!プレミアムの特典であった「ヤフオク!」の落札システム利用料の優遇や「Yahoo!ショッピング」のポイント増、会員限定のPayPayクーポンの付与に、1200万種類のスタンプ使い放題、LINEのアルバムに保存できる写真や動画の画質向上などといったLINEに関連する特典が強化された内容になっている。
このLYPプレミアムの全特典を有効化するには、前述のLINE IDとYahoo! JAPAN IDの連携をする必要がある、というわけだ。
「LYPプレミアム」で提供され特典と今後提供を予定されている機能。
出典:LINEヤフー
なお、LYPプレミアム自体の料金はまだ明らかになっていないが、Yahoo!プレミアム会員は自動移行になり料金はそのままだ。
ソフトバンク・ワイモバイルの各携帯料金プランや「PayPayカード ゴールド」を契約しているユーザーは、Yahoo!プレミアムが現在も追加料金なしで利用できているが、LYPプレミアム移行後もそのままの追加料金なしの方向性が示されている。
とはいえ、既存のYahoo!プレミアム会員もID連携をしない限り、LINEに関する特典は享受できないので注意したい。
PayPayポイント統一化はLINE Payに何をもたらすか
一方通行だが、すでにLINEポイントはPayPayポイントに等価で交換できる。
撮影:小林優多郎
なお、今後もう1つ注目しておきたいのは「ポイントの統合」だ。
LINEは「LINEポイント」、ヤフーとPayPayは原則として「PayPayポイント」を付与する形をとっている。LINEヤフーは今後、こうしたポイントをPayPayポイントに統合する方針を発表している。
すでにLINEポイントからPayPayポイントへの等価でのポイント移行は可能になっており、「LINE GIFT」や「LINE BITMAX」などいくつかのLINEサービスでのPayPay決済も可能になっている。
「ポイント移行」ではなく「付与するポイントをそもそもPayPayポイントにする」のが「統合」の狙いになるが、これもまたID連携が前提になる。
ポイントは3つのサービスをつなぐ重要な要素になる。
出典:LINEヤフー
ただ、LINEポイントは前述のLINE Payとも密接につながったサービスで、スマホ決済やクレジットカードの利用によってポイントを貯めたり・使うことができる。
ポイントの統合によって「LINE PayでもPayPayポイントが貯まる、使える」ような形に落ち着くのか、それともLINE Pay自体の機能や立ち位置をポイント同時に整理するのか。発足したLINEヤフーからの発表を待つ必要がある。